みかん小説
本棚

"夫の毒膳と孫の告発〜元科捜研妻の科学鑑定〜" 第10話

ガシャリと音をてて凶器のナイフがを滑っていく。

科捜研の所が、私のの危険を案じてあらかじめ警察へ通報し、待させてくれていたのだ。

に顔を押し付けられ、完全に制圧された国彦の背で、刑事の鋭い声が響いた。

「岩田国彦! あなたを殺未遂の現犯で逮捕する!」

カチリ、とたい錠の属音が内に響き渡る。

警察官に肩を支えられてちがった私は、に転がる夫の姿を、氷のように徹な瞳で見ろした。

錠をかけられたその瞬、ようやくに血がっていた狂気がめたのか、国彦の顔が変した。

「れ……礼子! 頼む、警察に言わないでくれ! 俺が悪かった! 唯がんでから、俺はどうにかしてたんだ! わかるだろう、礼子!?」

惨めにいつくばり、涙を流して願してくる男。

かつてし、尊敬し、を共に添い遂げると信じていた夫の変わり果てた姿に、私の胸には片のけも湧かなかった。

「ちっとも分からないわ。あなたは、法ので相応の罰を受けるべきよ」

「礼子! 礼子ーーっ!!」

叫び声をげながら、国彦は警察官たちに両脇を抱えられ、パトカーへと連されていったのだった。

警察署での事聴取を終え、夜に自宅へと戻ると、居では科捜研の所と陽太がソファーに座って私の帰りを待っていてくれた。

広告

「おばあちゃん!」

私の姿を認めるなり、陽太が涙をいっぱいにためて駆け寄ってきた。私はに膝をつき、さな体を力いっぱい抱きしめた。

「礼子さん、ご無事で本当によかった……!」

所も堵の涙を浮かべていた。

「所、本当にありがとう。陽太とあなたのおかげで、私はき延びることができたわ」

「いいえ、私がしたことなんてしたことじゃありません。すべては、陽太君が勇気をして教えてくれたおかげですよ」

所の言葉に、陽太は照れくさそうに涙を拭い、誇らしげにえへんと笑ってみせた。

もしもあの、陽太がテレビの犯シーンを見て「おじいちゃんと同じだ」と声をげてくれなかったら。私は今頃、たい遺体となって発見されていたに違いなかった。

、警察ががのキッチンを宅捜索したところ、国彦が作り置いていた料理のタッパーすべて――筑煮だけでなく、煮浸しや噌汁の汁に至るまで、すべてのメニューから致量を遥かに超える濃度の眠薬が検されたことが正式に判した。

夫は何もの歳をかけ、狡猾に、確実に、私と陽太の命を奪おうと罠を張り巡らせていたのだ。良き夫、良き祖父の仮面のに隠されていた底れぬ悪に、私は改めて戦慄を覚えた。

国彦は殺未遂および横領の罪で起訴された。

広告

裁判において、国彦の弁護側は「男を事故で失ったことによる神耗」を主張して精神鑑定を申請したが、裁判所はその勝で計画な犯をし、申請を却。国彦には状酌量の余なしとして、懲役刑の実刑判決がされた。

刑務所へと収監された国彦の元に、あの・子が面会に訪れることはただの度もなかった。

それどころか、事件がるみにた直、子は料理教を即座に畳み、誰にも方を告げずに夜逃げ同然でから姿を消していたのだ。

に担当刑事から聞かされた真実は、さらに痛烈なものだった。

子という女は、過にも複数の裕福な男性にづいては結婚を匂わせ、額の品を貢がせて破滅に追い込んできた、広域配の常習な結婚詐欺師だったのだ。

国彦はのためにすべてを捨てたつもりで、最初から最まで、狡猾な女の蔓として踊らされていたに過ぎなかったのである。

その事実を獄でらされた国彦からは、毎のように私の元へ悔と謝罪を綴ったが届いた。

『俺が違っていた。子に騙されていたんだ。どうか許してほしい、もう度やり直したい』

そんな勝極まりない文字が並ぶ便箋を見るたび、私の胸には虚しさとたいりだけが来した。

自らの欲望のために妻を毒殺しようとし、罪のない歳の孫の命まで奪おうとした男の謝罪を、体誰が受け入れられるというのか。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: