みかん小説
本棚

"母の還暦祝いで家を奪おうとした夫" 第6話

彼は振り返って、私に言った。

「座って休んでて。俺が洗うから」

音が響いた。

私はリビングにち、彼の広い背を見つめた。

結婚して目の頃、私が度のをしたも、彼はこうして鍋を洗ってくれた。

お粥を作り、を測ってくれた。

様子を見に来た母が帰るすがら、私にメッセージをくれた。

『ゆか、あのは本当にできただよ』

あのメッセージは、ずっと消せずに残してあった。

私はスマートフォンをき、母のアイコンを探した。

ブレた蓮のの写真だ。

話をかけて、レオの企みを全て話してしまいたかった。

結婚する相を違えたかもしれないと、泣きつきたかった。

でも、発信ボタンを押す直で指を止めた。

母は最血圧が定だった。

それに、誕会のことを何もから楽しみにしていた。

毎のように、連絡が来るのだ。

『どのを着ていけばいいかな』

『親戚にお菓子を用した方がいいかしら』

彼女はいつも、弾んだ声で聞いてきた。

『レオ君は本当に優しいね』と嬉しそうに語る母に、爆弾を投げつけることはできなかった。

キッチンからてきたレオが、私を見た。

ち尽くす私を見て、彼は議そうに笑った。

「何を考えてるの?」

私はスマートフォンをのひらに隠した。

「の会議の資料のこと」

彼はづいてきて、ろから私を抱きしめた。

広告

以は、この温もりに守られているとじていた。

でも今は、腰に回された腕が縛りつけるロープのようにしかじない。

彼は私の元で、優しく囁いた。

「無理しないで。これからは俺がいるから」

私はさく、「うん」とだけ答えた。

その夜、私は浅い眠りについた。

シャワーからたレオのスマートフォンがった。

彼は画面を見て、すぐに角をげた。

私が寝返りを打つふりをして目を閉じると、彼は私の様子を窺った。

彼は私が寝ているのを確認し、音を忍ばせてベランダへた。

ドアの隙から、途切れ途切れの声が聞こえてくる。

「彼女は怪しんでない。今夜も聞いたが、反応は悪くない」

彼は声をひそめて、相をなだめた。

「騒ぐなよ。誕会のには会わないと言っただろう」

私は布団の端を握りしめた。

爪がのひらにい込んだ。

同じベッドで寝ていても、のには広なが横たわっているようだった。

翌朝、オフィスに着くと、佐藤さんが声で言った。

彼女は私の顔を覗き込んで、顔をしかめた。

「ゆか、顔が昨の残り物のパンみたいよ」

彼女はニヤニヤしながら、探りを入れた。

「昨は旦さんとラブラブの巣に帰ったんじゃないの?」

彼女は抱えていたきなフライパンの箱を、机にドンと置いた。

「聞いてよ。カスタマーセンターに連絡したら、おまけのヘラが入ってない証拠の画を撮れって言うのよ」

広告

彼女はため息をついて、愚痴をこぼした。

「私、料理系インフルエンサーじゃないわよ。ただの社畜なのに」

普段なら笑いするところだ。

だが、私の角は力なくがるだけだった。

佐藤さんは顔をづけてきた。

「喧嘩したの?」

私は静かに首を振った。

「ううん」

佐藤さんは目を細めて、私を見た。

「嘘ね」

彼女は声を潜めて、囁いた。

「ゆか、イライラすると引きしを理する癖があるでしょう」

彼女は私のデスクを指差した。

「今はペンのを回も揃えてたわよ」

彼女は真剣な顔で、追及した。

「言いなさい。旦さん、で犬でも飼い始めた?」

私のから、青いペンが転がり落ちた。

佐藤さんの顔も変わった。

彼女は慌てて、謝った。

「ごめん。私、また余計なこと言ったわね。気にしないで」

私はペンを拾いげ、できるだけ平な声で言った。

「丈夫。それよりつお願いがあるの」

彼女はすぐに、真剣な顔になった。

「来週の母の誕会、あなたも来てくれない?」

彼女は戸惑ったように、目を瞬かせた。

「私が?親戚でもないのに、賑やかしよ?」

私は静かに、彼女の目を見た。

「ついでに、ちょっとしたお芝居を見て欲しいの」

私は引きしから、誕会のリストを取りした。

親戚、所の、レオの同僚、そして取引先の名。

最初はがすぎるとっていたが、今はむしろければいほど良いとった。

彼が用した台、彼が呼んだ観客、彼が敷いたレール。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: