"昭和28年、妻が消える炭鉱町" 第7話
「で言うから終わるんよ」
「何?」
「田辺さんも松永さんも川崎さんも、同じやろ」
夫たちは妻のき先をりながら黙っている。
恐れているものも同じ。
ならば軒ずつ脅されるのではなく、同に声をげればいい。
茂は首を振った。
「誰も乗らん」
「兄ちゃんが最初になれば」
「簡単に言うな」
「簡単じゃないよ」
澄子も声をめた。
「節子さんは炭ので毎働きよる。兄ちゃんはを守るために黙っとる。でも黙っとったら、そのに節子さんが戻れんやろ」
茂の顔が歪んだ。
その、奥で武が寝返りを打った。
子どもは、母が「実」にいるとっている。
いつ戻るのか毎聞く。
茂は両で顔を覆った。
「俺がかせた」
同じ言葉を、今度は別の声で言った。
「節子は嫌がったんやない。俺が頼んだ。かだけ頼むって。子の病院代もある。俺の怪の借もある。戻ってきたら全部やり直せるとった」
「うん」
「もし最初から嘘やったなら……俺は女を売ったのと同じやないか」
「違う」
澄子はすぐ否定した。
「騙されたんよ。でも、ここから黙ったら違わんようになる」
茂はいかなかった。
翌朝。
坑へ向かう、田辺栄吉のへ寄った。
昼には松永。
夕方には川崎。
。
の夫が、組事務所の裏部へ集まった。
皆、最初は互いに目をわせなかった。
妻を働きへしたことを恥じていた。
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自分だけだとっていた。
そこへ澄子が、軒分の違う残を並べた。
田辺が呟いた。
「俺んとこもか」
松永が顔をげた。
「うちだけじゃなかったんか」
沈黙を作っていたのは、秘密そのものだった。
互いにらされていなかったから、誰も声をげられなかった。
そして若い組記の田が、資料を枚ずつ見た。
「これは、族の借の話だけでは済まんかもしれません」
ようやく、炭鉱ので別の扉がいた。
田は歳で、坑内勤務を経験したあと組の記になった男だった。澄子の話を聞いてもげさに驚かず、まず数字を確認した。
「同じ借に残がつある。ここが番事です」
古い伝票。
黒い通帳の写し。
夫へ渡された返済予定表。
つを並べる。
「完済証もあります」
澄子が母のをすと、田の表が変わった。
「これはい」
「い?」
「過に完済した証拠があるのに、別帳簿では残っている。単なる計算違いなら訂正の跡があるはずです」
田はすぐに会社へ突きつけることをしなかった。
「証拠をもうし固めます。向こうが帳簿を隠したら終わる」
組にも会社寄りのはいる。
話が漏れる能性がある。
そこで最初はだけで調べることになった。
澄子。
田。
そして森。
森は覚悟を決め、購買所に残っている過分の貸付伝票を夜ごと確認した。
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共通点が見えてきた。
「族労務」へ妻がる。
購買所側では定額が返済済みになる。
しかし会計側の黒帳簿では、その額が全部反映されない。
差額はどこかへ消える。
さらに翌、「族替」「送数料」「寮費補填」などの項目が加わる。
田が計算した。
「仮に女のが千円分働いて、向こうで千円差し引かれたとしても、残り千円がこっちへ来れば借は減るはずです」
「減ってない」
「つまり、返済として送られたの部が帳簿に載っていない」
誰かが抜いている。
翌週。
節子からしいらせが届いた。
洗濯物のへ縫い込まれたさなだった。
《分賃 千百円》
《寮費 千百円》
《費 千百円》
《紹介料 百円》
《返済送 千百円》
《渡し 百円》
返済送、千百円。
ところが黒い通帳に記録された兄の返済額は百円。
千百円が消えている。
「これや」
田がを指した。
「初めて同じの両側の数字が取れた」
さらに節子は、の女性の細もき写していた。
すべて同じ。
送ったはずの返済より、炭鉱側で記帳された額がない。
差額はごとに百円から千円。
さな額。
だから軒では気づきにくい。
だが何軒、何も続けばきくなる。
「誰が取ってる」
茂が聞いた。
田は答えた。
「そこはまだ分からん」
澄子は佐伯の顔をい浮かべた。
しかし田は釘を刺した。
「疑うのと証するのは違います」