"援助し続けた兄が隠していた二年間" 第8話
「分かってる」
「でも回勝てばとか、来のボーナスでとか……ずっと先延ばしにした」
私はようやく兄を見た。
「じゃあ、今度は先延ばしにしないで」
兄はさく頷いた。
その夜、昔のを見た。
学裏の空き。
私はランドセルを抱えて面へ座っていた。
の級が囲んでいる。
そこへ兄がってきた。
「直に触んな!」
あのの健司は、本当に格好良かった。
目が覚めてからもしばらく胸が痛んだ。
今の兄がどれほど嘘をついたからといって、あのの来事まで嘘になるわけではない。
兄は私を守った。
何度も助けてくれた。
その恩は本物だ。
だから私は余計に苦しかった。
美咲へその話をすると、彼女は言った。
「じゃあ、それは事にしていいんじゃない?」
「でも」
「昔助けてもらったことと、今おを渡し続けることは別でしょう」
私は黙った。
「健司さんが昔いいお兄さんだったことを否定しなくても、今してることにノーって言えるよ」
その考え方を、私は持ったことがなかった。
はつの役割ではない。
優しい兄でもあり。
嘘をついたでもある。
事故でが変わった被害者でもあり。
その苦しさを理由に弟を利用したでもある。
どちらか方だけに決めなくてもいい。
翌週、兄が再びがへ来た。
今回は杖を持っていなかった。
玄関でし気まずそうにっている。
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「今は丈夫なの?」
私が聞くと、
「うん」
と答えた。
それだけだった。
以なら「杖がない」という点を証拠のように見ただろう。
もうしなかった。
兄の痛みがどれほどあるかは、兄と医師が考えることだ。
私が見るべきなのは、兄が私たちへ何をするかだった。
兄は枚のをした。
借返済の計画表だった。
柴田へ万円。
ほかの友へ万円ずつ。
活費も細かくかれている。
「、売ることにした」
「通勤は?」
「会社のくに引っ越す」
「賃は?」
「今より万千円い」
私は計画表を見た。
以の私なら、そこで「引っ越し代くらいす」と言ったかもしれない。
言わなかった。
兄も頼まなかった。
そのことが、さな変化だった。
兄はを売った。
くは売れなかったが、消費者融の社をかなり減らせた。
引っ越しもした。
駅から徒歩分の古いKで、以より狭い。
「惨めだ」
最初に部を見た、兄はそう言った。
私は言った。
「の部、誰ので維持してた?」
兄は黙った。
「ごめん」
「謝らなくていい。自分で払える部なら、その方がいいだろ」
兄は満そうだったが、それ以は言わなかった。
パチンコを完全にやめるのは難しかった。
度だけ、料の翌にへ入った。
だが以とは違い、千円負けたところでて、翌相談先へ自分で連絡した。
私はそれをから聞いた。
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「何で俺に言わなかったの」
「言ったら、おが何とかしようとするだろ」
兄は苦笑した。
否定できなかった。
今まで私は、兄が困るたびにを送った。
結果として、兄から「自分で困る会」まで奪っていたのかもしれない。
だからといって、援助した私が悪いとはわない。
当はらなかった。
ただ今は、同じやり方を続けない。
それだけだ。
方、美咲との関係もすぐ元通りになったわけではなかった。
以、私は兄を優先してきた。
度止めたから全部帳消しになるわけではない。
私たちは毎度、計を緒に見ることにした。
貯。
活費。
自分たちがしたいこと。
そのには久しぶりに、
《引っ越し》
という項目が戻った。
「来くらいに考えようか」
私が言うと、美咲は笑った。
「今度はちゃんとのおでね」
その言が嬉しかった。
か。
柴田から私へメッセージが届いた。
《健司から万円返ってきました》
それだけだった。
私は兄へ何も言わなかった。
翌も万円。
その次も万円。
した額ではない。
万円を返すにはがかかる。
それでも今までの兄にはなかった継続だった。
ある、柴田と偶然話で話す会があった。
「最どうですか」
私が聞くと、
「よりはマシです」
柴田は笑った。
「最初、直さんが払ってくれないって分かった、健司かなり荒れてましたよ」
「でしょうね」
「でも、あれで良かったといます」
しを置いて続けた。
「俺も貸しすぎました」
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