"30万円を止めた日" 第2話
で計万円を超えていた。
これまでの私なら、帰宅に度は問い詰めただろう。
でも病でけない今、のまま話してもがない。
私は会社の業務を任せている取締役の佐藤佳奈へ連絡した。
「社、声、丈夫ですか」
話にた彼女は、私の夫より先に体を配した。
その事実がし皮肉だった。
「術は終わった。まだけないけど、命に関わる状態は抜けたって」
「本当に良かった……。会社のことは私たちで回していますから、今は考えないでください」
「ありがとう。会社とは関係ないことで、つ頼んでもいい?」
私は浩司の裏アカウントを探してほしいと頼んだ。
浩司は以から、には見せない別のSNSアカウントを持っている気配があった。旅先で料理や計の写真を撮る癖があり、酔うと「ネットでは俺も結構られてる」と自したこともある。
ほど。
佳奈からURLが届いた。
《たぶん、これです》
アイコンは級腕計。
私がの誕に贈ったものだった。
アカウント名は《K_FREE》。
公投稿をく。
最初にてきた写真で、私は息を止めた。
級旅館の呂付き客。
テーブルには刺と牛。
その向こうに静が座っている。
《嫁が入院。が静かになったので母さんと温泉。久しぶりに自由》
次の投稿。
《カードは嫁名義だけど族なんだから同じ。
広告
稼いでるが払えばいい》
私は画面を閉じなかった。
さらに過へ遡った。
私が張へっていた週。
《嫁がいないから母さんと座》
私が徹夜で納期対応をしていた夜。
《仕事ばっかしてる嫁より、母さんとむ方が楽》
私が役員会でを空けていた曜。
《族カード、限度額もうしげてほしい》
胸が痛まなかったと言えば嘘になる。
でも泣かなかった。
むしろ、今まで曖昧だったものが数字と文章になったことで、初めて自分のち位置が見えた。
私は妻ではなかった。
便利な支払段だった。
「佳奈」
私はもう度話した。
「お願いがあるの」
「何でも言ってください」
「このアカウント、今までの投稿を全部保して。とURLが分かる形で」
「分かりました」
「それから会社のセキュリティ担当にも伝えて。浩司が来ても、社内システムには絶対触れさせないで」
佳奈が黙った。
「何かありました?」
「まだ何も。ただ……今のうちに線を引いておきたい」
それが最初の反撃だった。
カードもまだ止めていない。
万円の送も続いている。
でも会社だけは触らせない。
私がけないからこそ、守る順番を違えてはいけなかった。
翌朝、浩司から初めて話が来た。
「美咲、まだ入院してんの?」
番、それだった。
「術したばかりだから」
「そうか。ところでさ、族カードの限度額って今いくら?」
広告
私は答えずに聞いた。
「どうして?」
「旅館の売で決済通らなくてさ。旅なんだから困るんだよ」
自分で旅だと認めた。
私は録音アプリを起した。
「私が術してるに?」
「ああ、母さんがからきたがってたから。術は医者がやるんだろ。俺が病院にいても仕方ないじゃん」
「そう」
「それより限度額げといてくれよ。退院したらまた働くんだろ?」
私はしだけ目を閉じた。
そこまで聞けば分だった。
「考えておく」
そう言って話を切った。
そのの午。
私は族カードの利用止続きをした。
温泉で振り回されていた枚のカードが、その瞬ただのプラスチック片になった。
けれど本当に止めなければならないのは、それだけではなかった。
、毎欠かさず振り込んできた万円。
そのが本当に「静の活費」として必だったのか。
私は初めて、そこを疑った。
顧問弁護士の田先が病へ来たのは、入院目だった。
会社を設した頃から付きいのある弁護士で、経営の契約から個な産問題まで相談してきた。私が夫婦のことを話したのは、これが初めてではない。
。
浩司の浮気が度発覚した。
その、私は婚も考えた。
けれど浩司が座し、「度と裏切らない」と泣き続け、静まで「息子を捨てないで」
とをげたため、結局やり直すを選んだ。
田先は当のことを覚えていた。
広告
おすすめ作品
-
完結第26話
特上寿司と、消えた妻の半年
3月31日22時、激務を終えて帰宅した私の席にあったのは、冷え切った白米一杯だけだった。目の前で1万8900円の特上寿司を頬張る夫と義母は、「反省したらおかずをあげる」と大笑いする。家計の大半を私が支えているにもかかわらず、9ヶ月間も「罰」として食事を奪われ、夫は横で嘲笑っていた。だが二人は知らない。私が半年かけて集めた出前明細の履歴と、義母が隠し持っていた一枚の申告書の存在を。「じゃあ、外で食べてきます」――二度と振り返らずにドアを閉めた夜、経理の私が仕掛けた冷徹な清算が幕を開ける。嫁姑|夫婦4.0万字5 471 -
完結第34話
妻の葬儀の夜、義母が外した指輪と娘の写真
妻・美保の葬儀が終わった夜、修二の結婚指輪を外したのは、亡き妻の母・麗子だった。「もう美保に隠す必要はないでしょう」と唇を寄せたその瞬間、娘・咲から1枚の写真が届く。そこには半年前の病院で抱き合う修二と麗子、そしてガラス越しに2人を見つめる病衣姿の美保が写っていた。 闘病中の妻を支える献身的な夫を演じながら、修二はいつしか自分の弱さを理解してくれる義母へ逃げ込み、越えてはならない境界を越えていた。しかも麗子は「美保も知っていた」「私がいなくなったら修二さんを1人にしないでと頼まれた」と主張し、その証拠となる録音まであるという。 だが翌朝、咲が告げたのは「お母さんの声を最後まで聞いて」という一言。 亡き妻が本当に残した言葉を前に、2人が都合よく信じてきた“許し”が崩れ始める――。夫婦|修羅場5.1万字5 614 -
完結第16話
四十九日の追放、母の隠し遺言
「十年世話しただけの妹に、実家の取り分はないわ」 母の四十九日、喪服の兄夫婦は親族の前で澄子を指差し、台所の冷えた板の間へ追いやった。信金を辞め10年間、720万円の私財を投じて母を看取った澄子に、兄は「今週中に出て行け」と冷酷に通告する。 母のキャッシュカードは7年前から兄が独占し、消えた年金は1240万円。 家財すべてが二束三文で業者に売り払われようとする中、母が50年愛用した古い足踏みミシンの奥底から、厳重に隠された「ある物」が滑り落ちた。 「その言葉、そっくりそのままお返しします」 あの日からちょうど49日後、審判の幕が上がる――。兄弟姉妹|修羅場2.3万字5 439 -
完結第16話
十字の紙片と売られた生家
「母さん、老人ホームに入れ。この家も売る」息子夫婦はカナダ移住を前に、相場の半値以下の査定書と山奥の隔離施設のパンフレットを突きつけてきた。共働きで多忙な彼らに代わり、十年間孫娘を育て上げ、遺産から数百万円を用立ててきた私への仕打ちがこれだった。絶望に沈む私の手に、高校生の孫娘が震えながら押し込んだのは、固く折られた「十文字のチラシの紙片」。「明日の朝までに、実印と通帳は絶対に渡さないで」。深夜二時、一人で開いたその紙には、全てを覆す戦慄の計画が記されていた。私は仏壇の隠し金庫に手を伸ばし――。祖父母と孫|介護2.4万字5 426 -
完結第27話
妻を追い出した翌朝、7枚のブラックカードが止まった
結婚3年目の夜、美桜が帰宅すると、夫・達也は若い愛人と義両親を囲み、離婚届を突きつけてきた。「無能で地味な女」「1円も稼げない寄生虫」と嘲られ、慰謝料もなく豪邸から追い出される。 だが4人は知らなかった。美桜の正体は、世界経済を動かす巨大グループの総帥。倒産寸前だった達也の会社を救い、資金も仕事も与え、彼を“天才社長”に見せていたのは全て美桜だった。 さらに豪邸も別荘も、7枚のブラックカードも、達也自身の資産ではなく美桜の法人名義。 離婚届が受理された瞬間、美桜は静かに全カードを停止し、豪邸の退去手続きと会社への特別監査を開始する。 勝ち誇っていた一家がまだ知らない、本当の“無一文”への転落が始まろうとしていた――。修羅場|熟年離婚4.0万字5 285 -
完結第15話
全盲の義母が言い当てた味噌汁の色
「お味噌、白味噌に変えたでしょう?」。11年前の事故で全盲になったはずの義母・かず子が、漆塗りの椀を抱えて微笑んだ。亡き実母への後悔から、365日欠かさず介護と手料理を捧げてきた嫁の私。だが翌朝、ゴミ袋の底から現れたのは、手つかずのまま無残に捨てられた私の料理と、1万8千円の銀座高級寿司やフレンチのデリバリーレシート30枚だった。夫は「お前の味付けが悪い」と冷笑し取り合わない。孤立無援の中、弁護士の助言を得た私はある罠を仕掛ける。そして勝手口の前で義母が放った「ある一言」で、11年間の嘘が音を立てて崩れ去る――。嫁姑|真相2.3万字5 3040 -
完結第22話
夜勤の救急外来に運ばれた夫と義姉
深夜2時、救急外来で夜勤中の看護師・佐藤み咲のもとへ、交通事故で重傷を負った男女2人が搬送されてきた。シーツの下にいたのは、夫・拓也と義姉・麗子。しかも2人は、決して「姉弟愛」では説明できない姿で倒れていた。 み咲は5年間、看護師という仕事を見下す夫と、「子供も産めない」と侮辱する麗子、その2人を庇い続ける義母・里子に耐えてきた。 それでも彼女は感情を捨て、看護師として2人の命を救うことを選ぶ。 だが、惨状を目にした義母まで「全部あなたのせい」とみ咲を罵倒した瞬間、最後の迷いは消えた。 何年も残してきた暴言の記録と証拠を武器に、奪われ続けた人生を取り戻す反撃が静かに始まる――。夫婦|修羅場|不倫3.3万字5 2986