"大晦日、義実家の60億円計画を知った" 第1話
、午分。 り積もるの気配を孕んだ鉛の夜空の、方都の郊に佇む広な本――夫の実である吉実(よしざね)の階客。 障子で仕切られた畳ので、私、黒川(くろかわ・みなみ)は、えた緑茶を啜り、く息を吐きした。
階からは、親戚同の障りな笑い声と、音量で流れるテレビの末特番の音が、板を通じてビリビリと振となって伝わってくる。 結婚して。毎繰り返されるこの晦の宴席は、私にとって拷問以の何物でもなかった。義母の幸子(さちこ)の嫌を取り、皿料理を運び、酒が切れるたびにちがって燗をつける。吉実の男たちが胡をかいて声を張りげる、嫁である私は座るもなく働き続けるのが「このの伝統」だった。
痛を覚え、し横になると言って階へ避難してきた私は、スマートフォンの画面をタップし、県で暮らす実の母・恵子へビデオ通話を繋いだ。
『あら、。そっちはどう? 今も騒ぎなんでしょう』
画面に映る母は、実の見慣れた居で、いつものように柔らかな笑みを浮かべていた。 父が代で築いた精密部品メーカーをにへ売却し、その資を管理するために設した族の資産管理会社『黒川アセット』。
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現、私が代表取締役を務め、父の茂(しげる)が会職についている。実の両親は穏やかな引退活を送っており、母のその落ち着いた顔を見るだけで、私の張り詰めていた神経がすっと緩むはずだった。
「うん。親戚が以集まってて、階はすごい気よ。……お父さんは? もう寝ちゃった?」
私が何気なく尋ね、画面を覗き込んだ、その瞬だった。 母の顔から、さっと血の気が引いた。 穏やかだった目元が恐怖に歪み、唇をわななかせる。そして、自分の差し指を素く唇のにてると、画面の向こうから、の毛もよだつような鋭く細い声がんできた。
『……声をさないで』
「え……? お母さん、どうしたの――」
『お願いだから、息を殺して。……今、お父さんがをしたわ。そっちのの裏まで、ヘッドライトを消して迎えにく』
冗談を言っている表ではなかった。画面の奥の玄関先で、父の茂が真の分いダウンジャケットに荒々しく腕を通し、の鍵を掴む姿が瞬だけ横切った。臓が嫌な音をててねがる。
「どういうこと……? お父さんまで、何があったの!?」
母は周囲を警戒するようにへ線をらせ、スマートフォンを元に極限までづけて囁いた。
『今の夕方、さんから、お父さんの携帯に直接話があったのよ』
さん――黒川アセットのメインバンクである都信託の、の族担当シニアマネージャー。
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父の現役代から以の付きいがある、極めて誠実での堅いベテランバンカーだ。
「さんが……何て?」
母は震える唇を噛み締め、信じられない事実を告げた。
『「け々に、黒川アセットの代表権を変更される予定があるのか」という確認だったわ。……あなたの夫の幸さんが、けの営業初に続きの相談にくと、の窓へ根回しの連絡を入れてきたそうよ』
その言葉が鼓膜を打った瞬、私の脳内が真っに弾けんだ。 代表権の変更? 私が? 幸に? そんな指示、私は愚か、会である父ですら度たりともしたことなどなかった。
『いい、。詳しい話は。今すぐ回り品だけを持って、誰にも気づかれないように勝からなさい!』
母の声が途切れ、通話が切れた。 静まり返った客。気のたさとは違う、底れぬ悪の気が、私の首からいがってくるのをじていた。
客の引き戸にをかけた私の指先は、刻みに震えていた。 逃げすべきだ。母の言う通り、今すぐ荷物をまとめて裏へ向かうべきだった。 だが、連れ添った夫が、私の背で体何を企んでいるのか。それを自分ので確かめないまま逃げることなど、私のプライドが許さなかった。
音を完全に殺し、え切った廊の板張りをむ。
突き当たりにある、義父・正雄の斎。
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