"大晦日、義実家の60億円計画を知った" 第9話
その母が――。 く、静かな呼吸をつ置くと、まるで絶対零度の氷壁のような声で言い放った。
「幸子さん。つ、な勘違いをされているようですね」
受話器の向こうで、幸子が『えっ……?』との抜けた声を漏らした。
「これは、夫婦喧嘩でも、親同士がで丸く収めるような話でもありません。……黒川アセットの資産は、私の夫が命がけで築き、娘のが代表として法に管理している【企業の正式な資】です。それを、あなた方の会社の焦げ付き億円を穴埋めするために、実印を盗んで勝に連帯保証に組み込もうとしたのですよ?」
『な……っ、な、何をおっしゃってるの恵子さん! そんなげさな聞きが悪い――』
「げさではありません」 母の声が、段とく、鋭く研ぎ澄まされた。
「族だからこそ、娘に無断で代表権を奪おうとしたり、犯罪に巻き込もうとしたりしないでいただきたかったわ。……今、の会社のことに、あなた方ご族が指本触れることは許しません。度と、このような無礼極まりない話をかけてこないでください」
『ちょ、ちょっと待ちなさいよ恵子さん! あんたたち、うちの会社がどうなってもいいの!? 幸のが――』
ガチャリ。 母は幸子の切り声を遮るように、迷いなく受話器をフックへ叩きつけた。
静まり返る居。 母はし乱れた息をえると、私に向かって、優しく、けれど力く微笑んだ。
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「……これでいいのよね、」
「お母さん……ありがとう」 胸がくなり、涙がこぼれそうになった。 守るべきものは、もう完全に決まっていた。
正が。 世が初詣や寝正で穏やかなを過ごす、実の応接は、吉実エステートを法に包囲するための「作戦本部」と化していた。
、曜。官公庁と融関の仕事始め。 午零分。 私の元のスマートフォンに、菱UFJの法座アプリからプッシュ通が届いた。
【振込入:、〇、〇〇〇、〇〇〇円 依頼:都信託】 【振込入:、、〇、〇〇〇円 依頼:都信託(定期解約元利)】
総額、億千百万円。 都信託にあった黒川アセットの資のほぼ全額が、吉実の響力が切及ばないメガバンクのセキュアな座へと、無事に全額着した瞬だった。 都信託の残は、自引き落とし用の数万円を残して、完全に空っぽになった。
「資の移、完しました」 私が告げると、川弁護士が満そうに頷いた。 「これで、彼らが物理にも法にも、黒川の資を差し押さえたり担保に取ったりするは永久に閉ざされました」
そして同午。 川弁護士が配していた民の信用調査関から、吉実エステートに関する極秘の『特別信用調査報告』がファックスで届いた。
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さにしてページを超えるその報告をめくった瞬、私と父は言葉を失った。
「……ここまで、腐敗がんでいたのか」 父が呻いた。
報告に記されていた吉実エステートの実態は、私たちの像を絶する破滅の沼だった。 郊の型リゾートホテル発は、事の捗率がわずか〇パーセントの段階で、から量の産業廃棄物と濃度のヒ素が検され、県から事止命令がされていた。すでに施会社への未払いは億円に達し、現は完全閉鎖。 さらに、義父の正雄は、その損失を隠蔽するために架空の売を計し、複数のノンバンクから利パーセントの超利で億円以の期借入をねていた。
「これを見てください」 川先が、報告の巻末にある資繰り表を指差した。
「吉実エステートが末に振りした約束形、計億千万円。その決済期が、今末――に迫っています。……彼らは、興からの億円の融資を引きしてこの形を決済し、さらに残りのでノンバンクへの返済をう計画でした。それが破綻した今、彼らにはを乗り切る資が、円もありません」
「つまり……」 私が呟くと、先は徹に言い放った。
「今末をもって、吉実エステートは回目の形渡りをし、取引止処分――事実の倒産に追い込まれます。
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