"今日でクビだ」黒蛇の夢を信じて280万円の起爆装置を壊した俺。3日後、127人が退避した直後――山が崩れた" 第14話
しいヘルメット
特別功労が振り込まれた週末、私は久しぶりに自宅へ帰った。
美は玄関まで迎えに来たが、ドラマのように抱きつくことも、泣き崩れることもなかった。
「肩は?」
「もうほとんどがる」
私が腕をかすと、美は確かめるように度頷いた。
卓には、焼き魚と噌汁、ややっこが並んでいた。いつもの夕だった。
私は会社の処分、警察への説、任命、300万円の功労について、順番に話した。
「それで、おはどうするの」
「宅ローンを200万円繰りげ返済したい。残りは、何かあったのために置いておく」
美はし考えた、めかけた噌汁をんだ。
「いいんじゃない。発破器よりは、ずっとできる使いね」
わず笑うと、美も笑った。
それから彼女は、テーブルのに置いた私のへ、自分のをねた。
「壊したことまで正しかったとは、今も言わないよ」
「分かってる」
「でも、きて帰ってきてくれてよかった。みんなも」
それだけで分だった。
3か、私はしいヘルメットを受け取った。
い線のに《保改善》と記されている。以の主任用ヘルメットより軽いはずなのに、に持つとくじた。
黒鉱の朝礼所には、しい全確認表が掲示されていた。
ガス警報、湧、岩盤音、振の項目は、正常値だけでなく“異常がた刻と所”も入力しなければ完できない。
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記録は現と本社へ同保され、から方だけをき換えることもできなくなった。
発破を実施するには、発破主任と現責任者に加え、保担当者の確認が必になった。
朝礼で、太田が第3区画の報告を読みげた。
「ガスは正常範囲です。湧量も昨と同じです。ただ、側の岩壁で、昨はなかった細い亀裂を見つけました」
以なら、“その程度で止めるな”と言われたかもしれない。
私は壁の計を見た。
「第3区画は10分止。位置を記録して、保担当と確認しよう」
「分かりました」
太田は確認表へ刻をいた。
調査の結果、亀裂は表面だけで、危険な岩盤移ではなかった。作業は28分に再された。
若い作業員が申し訳なさそうに言った。
「何もなかったのに、止めてしまってすみません」
「何もなかったと分かったから、してめる」
私は彼の職員番号を確認表へき、横の欄に印を入れた。
《報告者への利益なし》
昼休み、藤本班が私のしいヘルメットを眺めた。
「肩きだけは、ずいぶん派になったな」
「止める現が増えました」
「おは昔から、めるより止める方が得だった」
「褒めていますか」
「半分だけな」
藤本班は弁当の蓋を閉じた。
第4区画では、全に調査できる範囲を分けながら、鉱脈の確認がんでいる。会社の発表では、黒鉱の操業をなくとも18延ばせる能性があるという。
急いで掘る計画は承認されなかった。しい排気設備と避難坑を先にえ、採掘始はくても2となった。
夕方、私は1で坑のへった。
あの黒蛇のが何だったのかは、今も分からない。岩の音や湿った臭いを無識にじ取り、にしただけかもしれない。本当にが3を求めたのかもしれない。
答えを決める必はなかった。
私はしいヘルメットをかぶり、黒い全帳をいた。
《第3区画、亀裂確認。異常なし。作業再。報告者への利益なし》
最のをき終え、帳を閉じる。
坑から、作業を終えた127が順番に歩いてきた。
太田も、藤本班も、若い作業員もいる。
全員がへたことを確かめてから、私は事務所のかりへ向かって歩きした。
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