"三日待て――命を懸けて起爆盤を粉砕した現場主任、120人を救い500億の黄金を暴く" 第3話
告発のタイムスタンプ
午分。太田は理研計器製の能携帯型ガス検器『GX-3R Pro』を首からげ、防毒マスクを腰に装着して坑の保線のにった。
藤本が無言でヘルメットのライトを点け、太田の隣に並ぶ。 「酒井さん」太田が保ロープのにつ酒井を振り返った。その表には、朝礼ののような怯えは消え、代わりに張り詰めた緊張が宿っていた。「どこを点に見ればいいですか」
酒井は帳を示しながら、確に伝えた。 「坑の井付に溜まるメタンガスと、面をう硫化素は比が違う。入付でち止まるな。装薬予定の切羽メートル、番岩盤が脆くなっているクラックの隙にプローブを差し込んでくれ。そこで最でも分、数値をホールドするんだ」
「余計な入れ恵をするな!」 背から、腕組みをした監督が吐き捨てた。にはトランシーバーが握られている。 「分で往復しろと言ったはずだ。さっさとけ!」
のが坑のへ吸い込まれていった。 酒井は坑の岩壁に寄りかかり、帳のストップウォッチを作させた。坑内からは、局所送ダクトの震える音と、の全靴がをねげる音だけが届いてくる。
のトランシーバーから、太田の声がノイズ混じりに流れた。
広告
『――こちら太田。坑からメートル通過。燃性ガスゼロ、酸素濃度点パーセント。異常なし』
が満そうにの端を吊りげる。「ほら見ろ。何ともないじゃないか」
『メートル通過……硫化素ゼロ、酸化炭素ゼロ……』
秒針がむ。午分。
酒井のに、坑の奥から送の音とは異なる、極めて微細な切り音が届いた。まるで細い針の穴から圧の気体が漏れしているような、シューという乾いた音だ。
そして、午分。
『ピピピピッ、ピピピピッ――!』
無線のスピーカーから、鼓膜を劈くような甲い子警告音が鳴り響いた。 坑に待していた装薬班の男たちが、弾かれたように顔をげた。
『太田! 止まれ! がれ!』藤本の声がなる。
がトランシーバーを掴み、鳴り散らした。 「どうした! 何の警報だ! 誤作か!」
『……燃性ガスです!』太田の鳴のような叫びが返ってきた。 『切羽メートル……岩盤の割れ目にプローブをづけた瞬、メタン濃度が気に爆発限界のパーセントまでねがりました! 次警報が作してます!』
「何だと!?」の顔がサッと変わった。「数値をもう度見ろ! 械を振るな!」
『……あ、がった……数値ががっていきます……通常範囲に戻りました』
「ほら見ろ! 誤作だ!」は吐き捨てるように叫んだ。
広告
「センサーにでも吸い込ませたんだろうが! もう度そので測れ!」
『……いや、藤本班が退避しろと……』
「監督の命令が聞けんのか! 測り直せ!」
酒井はのからトランシーバーを奪い取らんばかりに踏みした。 「監督、無茶をさせるな! 度でも警報域に達した以、そこにはガスの pocket(溜まり)がしている証拠です! 数値ががったのは送ダクトのでに散らされただけに過ぎません!」
「部者はすっこんでろ!」が酒井を突きばした。
数分、太田と藤本が青ざめた顔で坑から転がりてきた。太田のにあるガス検器の液晶画面は、確かに『燃性ガス:0.0% LEL』を示していた。
「見たか!」は太田の検器を指差した。「正常じゃないか! 瞬のノイズで騒ぎしやがって。いいか、報には『再測定の結果、全域正常につき作業継続』と記載しろ。余計な数字を残して現を混乱させるな!」
「消すことはできません」酒井が毅然と言い放った。 「携帯型検器の内部メモリには、警報が作した瞬のログがデータとして自保されています。分というタイムスタンプとともにです」
「貴様……!」が酒井の胸倉を掴みかけたそのだった。
『カツン……』
坑の奥くから、乾いた、質な音がへ届いた。 拳のが井から剥がれ落ち、線のレールを叩いたような音だった。
広告
続いて、チャポンとに何かが没する音が響く。
藤本が酒井を見つめた。の線が交錯する。 「誠、奥の岩盤が鳴いてるぞ。ガスだけじゃない、がいてる」
酒井はもはやと言い争うを惜しんだ。踵を返すと、坑をれて事務所のプレハブ棟へとった。
事務所の央には、全社全管理イントラネットに接続された専用端末が置かれている。酒井はキーボードのに座ると、自らの社員番号と、保責任者の認証コードを打ち込んだ。
画面にちがったのは、京本社の保推部直通の『保報・緊急発信システム』だった。
【案件:黒事業所 第区画 発破直インシデント報告】 【報告者:薬類取扱保責任者 酒井誠】 【発刻: 午分】 【現象:切羽付における燃性ガス次警報作、湧量増加および断層音の変調】 【請:本午の発破作業の即止、ならびに本社保推部による現緊急査察を請】
「おい! 貴様、何をしている!」 事務所にび込んできたが、画面を見るなり血相を変えて突してきた。 「ログアウトしろ! 本社へ勝な報告をげるな! 現の統括権は俺にあるんだぞ!」
のが酒井の肩に伸びた瞬、酒井は迷うことなく差し指を振りろした。 『送信(ENTER)』キーが、い音をてて沈み込む。
画面が青くフラッシュし、央に太いゴシック体で文字が表示された。 『送信完。受付番号:SAF-2026-1029-04。本社保推部サーバーに保全されました』
酒井はちがり、掴みかかろうとするの線を正面から受け止めた。 「これで、今の異常は全社の記録になりました。私をクビにしようが、報を改ざんしようが、この受付番号とタイムスタンプを消すことは、現監督のあなたには能です」
の顔が、りと恐怖で気に変していった。
広告
おすすめ作品
-
完結第11話
貧乏老人を嘲笑った行員の末路
「あんな貧乏臭い爺い、適当にあしらっとけばいいのに」ボストンバッグを抱えた老人に、新入行員は嘲笑の声を浴びせ、エリート課長代理は別の窓口へ強制的に追い返した。母親の入院費のため百万を引き出しに来ただけの、よれよれのジャケットを着た年寄り――。だが、彼こそが全日本経済の裏を牛耳るクオンホールディングスの会長・久音次郎その人だった。侮辱に耐えかねた新人の篠崎水希が一人で抗議する中、老人が静かに古びたバッグの金具を閉じた瞬間、端末の画面で一千万円、一億円と出金通知の数字が狂ったように跳ね上がり始めた。絶望の淵に立たされた傲慢な行員たちの運命を決定づける、驚愕の審判の行方は――。職場逆転|修羅場1.6万字5 1861 -
完結第25話
底辺受付嬢を見下す役員たちの誤算
父の会社は、最も信頼していた人間の裏切りによって無惨に食い物にされた。巨額の負債を背負い、絶望の中で病に倒れた父。私はその冷酷な真相を暴くため、ハーバード大の博士号を隠し、ただの「受付嬢」として敵の中枢である星空グループに潜入した。 誰からも見下され、理不尽な侮辱に耐え忍ぶこと3年。息を潜めて集めた証拠が示したのは、あまりにも残酷な真実だった。父を破産に追い込み、私から全てを奪った黒幕の正体は、父が家族のように慕っていた古参役員だったのだ。 「黒幕は役員会の中にいる」――私を守るため、父が命懸けで残してくれた最期のメッセージを知った時、胸の奥の悲しみは絶対的な冷酷さを持つ復讐の炎へと変わった。私の素性を知る新社長のハルトや、父の旧友たちと共に、私は決して逃れられない完璧な包囲網を密かに築き上げていく。 そして迎えた運命の役員会。全てを掌握したと信じ、私の前で勝ち誇る黒幕。だが彼はまだ知らない。無力な受付嬢だと思っていた私が、彼を社会的死の淵へと突き落とす致命的な罠を仕掛けていたことを。仮面を脱ぎ捨てた時、強欲な悪魔を地獄の底へと引きずり下ろす、容赦なき反撃が幕を開ける――。因果応報|真相|修羅場3.8万字5 1809 -
完結第10話
実家のオンボロ工場を笑った次期社長を54階へ案内した
長年勤めた会社で、俺は「会社の金を着服した犯人」に仕立て上げられた。仕掛けたのは、幼い頃から貧しい実家を嘲笑い続け、社長の座に就いた幼馴染・元村だった。データを消され、嘘の噂を広められ、最後には経理の取り巻きまで使った罠で退職へ追い込まれる。祖父母を亡くした俺を拾い、育ててくれた恩人の会社だったからこそ耐えてきたが、犯罪者の濡れ衣まで着せられた瞬間、俺はついに決断した。「辞めます」と。すると元村たちは、俺が“オンボロ工場”へ落ちぶれるのだと大喜びし、見物させろとまで言い出した。俺は静かに笑って彼らを案内する。だが彼らは知らない。あの古びた工場の先に、俺がこれから向かう本当の場所があることを――。そしてエレベーターが54階へ上がった時、元村たちの顔から笑みが完全に消え始める。職場逆転2.0万字5 1697 -
完結第15話
不当解雇された高卒技術者の特許逆転劇
精密機械メーカーの技術者・中村誠は、高卒叩き上げであることを理由に、名門大卒のエリート上司・北川部長から「掃除とオイル交換しかできない無能な雑用係」と見下されていた。ある日、大口顧客向けの製品に二百個超の大量不良が発生。北川は自らの設定ミスを隠蔽し、誠を犯人に仕立て上げて責任を押し付ける。深夜に真相を暴くアクセスログのUSBメモリーを確保した誠だったが、直後に車に撥ねられ全治三ヶ月の重傷を負ってしまう。病室から連絡を入れると、北川は「好都合だ、クビにしておく」と嘲笑し電話を切った。だが誠が病室のベッドから特許庁へ出願した一枚の技術書類と、彼が去って完全沈黙した工場の製造ラインが、欺瞞に満ちた組織に前代未聞の崩壊をもたらす――。職場逆転|人生逆転2.5万字5 430 -
完結第10話
廃業寸前の豆腐屋に来た東大院卒の母親
廃業寸前の豆腐屋を営む俺の前に、4歳の娘を連れた美咲が「ここで働かせてください」と突然現れた。行く場所もなく、公園で夜を越そうとしていた親子を放っておけず、俺は店の2階に住まわせることにする。ところが、ただの訳ありシングルマザーだと思っていた美咲の正体は、東京大学大学院を卒業し、大手食品メーカーで商品開発を担っていた元研究員だった。彼女の知識で売れ残っていた豆腐は息を吹き返し、止まりかけた俺の人生まで少しずつ動き始める。だが、突然現れた元上司が「研究資料」を持ち出した疑いを突きつけ、根も葉もない噂によって取引先まで離れていく。迷惑をかけたくないと姿を消す美咲を前に、俺はもう見て見ぬふりをしないと決めた。彼女の潔白と、この店で一から積み上げたものを証明するため、俺は過去と向き合う――。そして2人の再起は、まだ誰も想像していなかった次の一手へと動き出す。職場逆転|修羅場2.0万字5 327 -
完結第14話
高卒エースを掃除係に落とした無能社長
大手玩具メーカーの営業エース・篠田零司は、高卒叩き上げながら十二年間にわたりトップの成績を維持してきた。だが、恩師である先代の矢吹会長が病で倒れ、新社長に就任した倉島哲也から全社報告会で突如「先月の達成率は三十パーセント、部内最下位のお荷物だ」と虚偽の数字で公開処刑される。強烈な学歴コンプレックスと嫉妬を燃やす倉島は、篠田を社長室の雑用係へと追いやったばかりか、彼が一年かけて心血を注いだ総額百億円の大型独占契約を故意に破談へ追い込む暴挙に出る。しかし、篠田の手元には「確定売上高一億四千二百万円」を証明する売上管理ファイルの原本が存在していた。理不尽の極みの中で静かに退職届を差し出した篠田。だが、現場の異変を察知した車椅子の矢吹会長が立ち上がり、握りつぶされた証拠が暴かれたとき、欺瞞に満ちた社長室に前代未聞の鉄槌が下される――。職場逆転|人生逆転2.9万字5 204 -
完結第10話
操縦桿が壊れた旅客機を救った町工場の技術者
太平洋上空1万メートル、機長と副操縦士が同時に意識を失い、300人を乗せた旅客機が墜落を始めた。 小型機の免許を持つ乗客が操縦桿を握るも、かえって機体は失速。絶望するチーフパーサー・長谷川絵里の前に現れたのは、パイロットではなく小柄な日本人技術者・佐藤だった。彼女は壊れた操縦桿には触れず、自ら設計に関わったフライトコンピューター、トリムホイール、左右のエンジン出力だけで機体を立て直す。しかし操縦系統は完全に死に、雷雲と燃料切れが迫る中、地上の専門家は「夜の太平洋へ不時着水せよ」と通告する。生存率は2割以下。それでも佐藤は羽田への着陸は理論上可能だと言う。残された条件は、絵里と300人の乗客が彼女の数字を信じ、一度きりの着陸にすべてを賭けることだった――。職場逆転3.6万字5 1340 -
完結第14話
雑用係の逆襲――百億の商談と偽りの女社長
病気の母の療養のため帰国し、学歴を「中卒」と偽って中小IT企業「藤山システム開発」に入社した森本大河。しかし傲慢な女社長・藤山薫からは「引きこもりの変人オタク」と蔑まれ、社運を賭けた百億円の新システム開発から外され雑用掃除係に追いやられてしまう。 だが大河の真の姿は、ハーバード大学を早期卒業しMIT大学院を修了した、世界が畏怖する伝説のスーパーホワイトハッカー「ミスター・モリティー」だった。迎えた海外メガIT企業首脳陣との商談当日、手配されていた通訳3名が全員ドタキャンし絶体絶命の危機に陥る。 「失敗したらクビ」と責任を押し付ける女社長の前で、大河が手元のコントローラーを操作して口を開いた瞬間、会議室の空気が一変する。そして明かされる社長の巨額不正と、タブレット端末に隠された決定的な証拠の行方は――。職場逆転|裡の顔1.9万字5 230 -
完結第24話
目覚めた部下にクビを問われた
地方旅館の火災で客を救い出し重傷を負った部下が目を覚ました。だが彼女の記憶は直近の二年分が抜け落ち、着任初日の私が冷酷に解雇を迫った日のまま止まっていた。会社は避難扉が開かなかった責任を彼女の記憶喪失に乗じて背負わせようと、退職金の支払いを口実に過失を認める書類への署名を病室で迫る。何も思い出せない部下は震える手でペンを握り、かつて自分を追い詰めたはずの私を怯えた目で見つめた。職場逆転|真実|裡の顔|修羅場3.7万字5 691 -
完結第30話
一万八千円の伝票
病を克服し、身なりを隠して自らのホテルへ宿泊客として訪れたオーナー・佐藤かず子。亡き夫と四十年にわたり心血を注いできた老舗ホテルは、かつての温もりを失い、強欲な支配人・中村の私欲に侵されていた。 きっかけは、わずか千八百円の粗末な昼定食に突きつけられた「一万八千円」の法外な伝票。中村たちは気の弱そうな高齢客を狙って組織的なぼったくりを繰り返し、さらにはホテルそのものを外資系ファンドへ売り飛ばそうと目論んでいた。 無力な老婆と侮られ、嘲笑と脅迫を受けるかず子。だが彼女の手には、亡き夫の誇りである一本の「蒔絵万年筆」と、深夜に掴んだ決定的な「裏帳簿」の証拠があった。誇りを泥靴で踏みにじられた元女将の、静かなる大反撃が今、幕を開ける――。職場逆転|真相4.6万字5 6317