"浄水器の異物から、夫の秘密が暴かれた" 第9話
「い、千百万……!? そんなお、あるわけないでしょう! 暮らしの老に、ねって言うの!?」
「払えないのであれば、ご自の自宅産を売却して弁済に充てていただきます。すでに保全処分として、ご自宅の建物に対する仮差押えの続きを完しております」
「私のを……!? あのは、んだ夫が遺してくれた唯の財産なのよ! 取らないで、お願いだから許して、美央さん!」
悦子は子から転がり落ちるようにに跪き、私の靴の先に両を伸ばしてきた。
かつて、父の遺産を頑なに放さない私を「欲な嫁」「酷な女」と罵り、から目線で説教を垂れていた姑の、あまりにも無惨で醜悪な姿。
私は歩がり、そのをややかに避けた。
「許しません。父が遺してくれたビルを奪おうとしたあなたに、夫の遺産を惜しむ資格などありません」
私は背を向け、会議の扉をけた。背で「美央さん! 美央さん!」と狂ったように叫ぶ老女の声が、ドアの閉まるい音によって完全に遮断された。
曜の午。
のたいがガラス窓を叩く法律事務所の特別応接で、私は最の対決のを待っていた。
部の隅には、万がの暴発に備えて事務所の屈な男性パラリーガル名が待し、私の隣には弁護士が座っている。
やがてノックの音が響き、ドアがいた。
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警察の監から弁護士同伴のもとでにを命じられた夫・川公平が、部に入ってきた。
わずか週まで、アイロンの効いた級スーツを着こなし、営業マンとしての自信に満ち溢れていた男の面は、そこにはどこにもなかった。無精髭が顎の周りに伸び放題になり、目のには黒ずんだ濃い隈が刻まれ、着古したヨレヨレのジャケットの襟は汚れていた。社内での懲戒解雇続きがみ、融関からの融資引きげと警察の捜査によって、彼ののは完全に崩壊していた。
公平は私の正面の子に腰をろすと、震えるで顔を覆い、くを垂れた。
「美央……本当に、すまなかった……」
掠れた、蚊の鳴くような声だった。
「俺は……どうかしていたんだ。投資できな損失をして、毎融業者から督促の話が鳴り止まなくて……会社にも居所がなくなって、パニックになっていたんだ。美央を本気で傷つけるつもりなんてなかったんだ。信じてくれ……!」
私は両を膝のでね、の起伏を切見せずに、その男を観察した。
かつてし、を共にすると誓った夫。その男のから紡ぎされる言葉のすべてが、いかに浅な自己保で塗り固められているか。今の私には、透するように見通すことができた。
「公平。
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信じるも信じないも、事実だけを確認しましょう」
私は弁護士から受け取ったクリアファイルを、テーブルの央へ滑らせた。
「これは、あなたの斎の庫から押収された類の写しよ。私の実印を無断で持ちし、あなたがきを作成していた包括委任状。そして、佐野恭子さんと交わしていた、私の度障害保険に関する打ちわせ記録」
公平の体が、ビクンと痙攣したようにねがった。
「私が仕事を辞め、痛と吐き気で正常な考ができなくなるのを待って、この委任状にサインをさせる計画だったわね? そして、もし私がサインを拒み続けたら……次は、就業能から度障害へと段階をめ、千万円の保険を掠め取るはずだった。違いますか?」
公平は喉を鳴らし、乾いた唇を激しく震わせた。
「ち、違う……! あれは恭子さんに唆されたんだ! あの女が『この方法なら絶対にバレない、美央ちゃんも会社を辞めて楽になれる』って言ってきたから……! 俺はただ、借を返して、また美央と平穏に暮らしたかっただけなんだ!」
「平穏?」
私は静かにちがった。テーブル越しに、夫の顔を真っ直ぐに見ろす。
「毎朝、私に湯を運んできてくれたわね。『無理するなよ』って、優しい笑顔で背をさすってくれたわね。……あの、あなたののにあったのは、妻の体調への配だったの? それとも、『今も計画通りに毒が回っているか』という観察記録だったの?」
公平は言葉を失い、青ざめた唇を閉させることしかできなかった。
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