"凍える孫と消えた家" 第4話
『余計なしをするな、この子を甘やかすな』って……」
音実は包帯のを胸元に寄せ、さく嗚咽を漏らした。 「今の朝も……あのたち、朝に起きてきて、スーツケースをに積み込んで……。私が『お昼ご飯はどうしたらいいですか』って聞いたら、パパが笑いながら私の襟首を掴んで、玄関のに放り投げたの。『留守にを汚されたら困るから、ででもやしてろ』って……。鍵をガチャリと閉められて……」
真の寒空の、の部着ジャージのまま閉めされた女。 財布も、携帯も、着すら持たされず、ただ凍えぬのを待つだけの放置。 刑法第百条、保護責任者遺棄致罪に直結するな犯罪だ。
その、居の引き戸が勢いよくいた。 「奥様! にお客様が……!」 政婦の叫び声と同に、玄関から荒々しい音が母の廊を軋ませてづいてきた。
現れたのは、息を切らし、髪を振り乱したの若い女性だった。 派な髪交じりの茶髪に、黒の革ジャン。だがその瞳は、鬼気迫る覚悟に満ちていた。 妻・よしえの連れ子、歳の学・杏奈だった。
「音実ちゃん……ッ!!」
杏奈はに転がり込むようにして音実の元へ駆け寄り、その包帯だらけのを抱きしめて号泣した。 「よかった……きてた……! 本当に、無事でよかった……!!」
の義理の姉妹が抱きって涙を流す景を、私は息を呑んで見つめていた。
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だが、涙を拭った杏奈が、私のに膝をつき、々と額を畳に擦り付けた瞬、そのから放たれた言葉は、私の像を絶するおぞましい告発だった。
「奥様……突然の躾なお話、本当に申し訳ありませんでした」
畳に額を擦りつけたまま、杏奈の肩が激しく震えていた。 顔をげた彼女の目元には、隠しきれない痣が痛々しく残っていた。ファンデーションでく塗り固められているが、拳で殴られた痕であることはだった。
「座りなさい、杏奈さん。……あなた、その顔の傷は体どうしたの」
私の問いに、杏奈は自嘲気に元を歪めた。 「……昨の夜、母に殴られました。『の朝、空港へくまでに完璧に荷造りを済ませておけ、貴照さんに粗相があったら承しない』って」
杏奈は震えるで、ポケットから枚の国際線のEチケットの控えを取りし、座卓のに置いた。 成田発、バンコク経由、プーケットき。 搭乗者名簿には、堀内貴照、堀内よしえ、そして堀内杏奈の名が記載されていた。期はからまでの、実に週に及ぶ超期バカンス。
「貴照は……会社はどうしたの? 末始とはいえ、週も仕事を休めるはずがないでしょう」
「仮病です」 杏奈は吐き捨てるように言った。 「『度の腰痛で起きがれず、けまで自宅療養をする』という偽の診断を、りいのヤブ医者にを握らせてかせたそうです。
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会社にはそう言って、裏では母と豪遊する計画でした。……でも、この旅の本当の目は、観なんかじゃありません」
杏奈の呼吸が、急速に荒くなる。 彼女は自らの腕を抱きしめ、爪が革ジャンにい込むほどくを縮こまらせた。
「あの男……貴照は、母と再婚するから、ずっと私に卑猥な目を向けていました。私がの頃、母のアパートにがり込んできては、母の目を盗んで私の体を触ろうとしたり、着を盗み見たり……。あのに移ってからは、もっと酷くなりました」
「な……なんですって……!?」
「お呂に入っていると、勝にドアをけて入ってこようとするんです。『背を流してやる』『族になったんだから恥ずかしがるな』って……! 私が叫んで抵抗すると、からやってきた母が、私を鳴りつけるんです。『あんたが目を使うからだろ! 旦様の嫌を損ねたら、この活が全部終わるんだよ!』って……!」
部のの空気が、瞬で凍りついた。 が腹を痛めて産んだ息子が、血の繋がらない義理の娘に対して、常に性暴未遂を繰り返していた。 そして、その実の母親であるよしえは、それを止めるどころか、娘を罵倒して黙らせていたというのか。
「今回の旅……プーケットのリゾートホテルは、部ではなく、最級のスウィートルームが部だけ予約されていました」
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