"兄の結婚式に、実の妹の席だけありませんでした" 第7話
と切り捨てたのだ。
「それで?」私はを押し殺し、く問い詰めた。「ゆかさんのご両親から、直接『妹を呼ぶな』って言われたの?」
兄はぎくりと肩をねさせ、線をへと落とした。
「いや……直接言われたわけじゃない。でも、母さんが『向こうの空気を読まなきゃいけない』って……」
「お兄ちゃんは母さんに何て言ったの? 実の妹を式からすって言われて、平気だったの?」
「俺だって最初は反対したよ!」兄は声を荒らげ、すぐに自分のけなさに気づいたようにトーンを落とした。「でも、母さんがどうしてもって言うし……結婚式の直に揉めたくなかったんだ。だから……とりあえず式が終わったら、俺から理にちゃんと話して謝るからって、母さんに言ったんだ」
「説して謝れば、私が笑って許すとでもったの?」
私の乾いた笑い声が、狭い作業に反響した。
兄は顔をげることができなかった。彼は自分がどれほど残酷な取引をしたのか、まるで理解していなかったのだ。美しい結婚式を無傷で挙げるという自分の保のために、妹の尊厳を贄に捧げた。でをげれば、物分かりのいい妹はいつものように許してくれるだろうとを括っていたのだ。
「もう帰って」
「理、頼む、悪かった! 俺がけなかったんだ……!」
「帰ってって言ってるの。あなたの顔、今は秒も見たくない」
広告
私の氷のような差しに射抜かれ、兄はよろめくようにちがると、い取りでをてった。
残された内で、私は暗を見つめていた。
母が体裁のために私を排除し、兄が保のためにそれに乗った。だが——本当にそれだけなのだろうか?
あの事会の、私の仕事に真っ直ぐな敬を払ってくれたゆかさん。彼女のような聡な女性のご両親が、本当に「学退で婚歴のある妹」というだけで、結婚式から排除することを望むような浅ななのだろうか。
疑のが、私の胸ので急速に濃くなっていく。
兄がった翌、事態は誰も予していなかった方向へと暴を始める。
私のスマートフォンに、本の通が入った。
差は、兄の妻となった根ゆかさんだった。
『理さん、突然のご連絡をお許しください。どうしても、直接お会いしてお話ししたいことがあります。幸介さんには内緒で伺います』
そして、そのの夕方、私のを訪れたゆかさんのから語られたのは——母と兄が必に隠蔽しようとしていた、私の像を絶する「もうつの巨な嘘」だった。
枯らしがののを揺らし、乾いた落ち葉がアスファルトを擦る音が響いていた。
午、半分ろしたシャッターを押しげ、根ゆかさんが内へを踏み入れた。
広告
質なキャメルのウールコートにを包んだ彼女は、以事をしたのような柔らかい微笑みを完全に消しり、青ざめた横顔に張り詰めた痛々しさを漂わせていた。
「理さん、突然押しかけて本当に申し訳ありません」
パイプ子を勧め、温かいほうじ茶の湯呑みを渡すと、ゆかさんはそれにはをつけず、膝ので握りしめた両の甲に線を落とした。その指先は、の夕暮れの寒さだけではない震えを微かに帯びていた。
「幸介から、昨夜ここへ来たことは聞きました。……彼が理さんに何を話し、どんな言い訳をしたのか、すべて確かめたくて伺いました」
私は作業台の端に腰掛け、昨夜の兄とのやり取りを包み隠さず伝えた。母が「ゆかさんの実が厳格な柄だから、妹の学歴や婚歴を気にする」と言いし、兄がそれに同して私を排除したこと。そして事報告で謝れば済むとを括っていたこと。
私の言葉がむにつれ、ゆかさんの呼吸が浅く、鋭くなっていった。そして私が「ゆかさんのご両親から妹を呼ぶなと言われたのか」と兄に質したりに達した、ゆかさんは弾かれたように顔をげた。
「そんなこと、私の両親は言も言っていません!」
静まり返った内に、ゆかさんの凛とした、しかしりに震える声が響いた。
「私の実は確かに祖父の代から卸商をやっていますが、を柄や学歴で品定めするようなではありません。
広告
おすすめ作品
-
完結第34話
妻の葬儀の夜、義母が外した指輪と娘の写真
妻・美保の葬儀が終わった夜、修二の結婚指輪を外したのは、亡き妻の母・麗子だった。「もう美保に隠す必要はないでしょう」と唇を寄せたその瞬間、娘・咲から1枚の写真が届く。そこには半年前の病院で抱き合う修二と麗子、そしてガラス越しに2人を見つめる病衣姿の美保が写っていた。 闘病中の妻を支える献身的な夫を演じながら、修二はいつしか自分の弱さを理解してくれる義母へ逃げ込み、越えてはならない境界を越えていた。しかも麗子は「美保も知っていた」「私がいなくなったら修二さんを1人にしないでと頼まれた」と主張し、その証拠となる録音まであるという。 だが翌朝、咲が告げたのは「お母さんの声を最後まで聞いて」という一言。 亡き妻が本当に残した言葉を前に、2人が都合よく信じてきた“許し”が崩れ始める――。夫婦|修羅場5.1万字5 612 -
完結第16話
四十九日の追放、母の隠し遺言
「十年世話しただけの妹に、実家の取り分はないわ」 母の四十九日、喪服の兄夫婦は親族の前で澄子を指差し、台所の冷えた板の間へ追いやった。信金を辞め10年間、720万円の私財を投じて母を看取った澄子に、兄は「今週中に出て行け」と冷酷に通告する。 母のキャッシュカードは7年前から兄が独占し、消えた年金は1240万円。 家財すべてが二束三文で業者に売り払われようとする中、母が50年愛用した古い足踏みミシンの奥底から、厳重に隠された「ある物」が滑り落ちた。 「その言葉、そっくりそのままお返しします」 あの日からちょうど49日後、審判の幕が上がる――。兄弟姉妹|修羅場2.3万字5 434 -
完結第27話
妻を追い出した翌朝、7枚のブラックカードが止まった
結婚3年目の夜、美桜が帰宅すると、夫・達也は若い愛人と義両親を囲み、離婚届を突きつけてきた。「無能で地味な女」「1円も稼げない寄生虫」と嘲られ、慰謝料もなく豪邸から追い出される。 だが4人は知らなかった。美桜の正体は、世界経済を動かす巨大グループの総帥。倒産寸前だった達也の会社を救い、資金も仕事も与え、彼を“天才社長”に見せていたのは全て美桜だった。 さらに豪邸も別荘も、7枚のブラックカードも、達也自身の資産ではなく美桜の法人名義。 離婚届が受理された瞬間、美桜は静かに全カードを停止し、豪邸の退去手続きと会社への特別監査を開始する。 勝ち誇っていた一家がまだ知らない、本当の“無一文”への転落が始まろうとしていた――。修羅場|熟年離婚4.0万字5 285 -
完結第16話
血染めの写真と三文字のSOS
夕方のコンビニの床に落ちていた一枚の写真。微笑む少女の横には、まだ乾ききっていない赤黒い生血がべっとりと付着していた。 裏返した瞬間、息が止まる。震える筆跡の住所と、指先の血で擦り付けられた『SOS』の三文字。 妻に捨てられ、八歳の息子と写真館を営む私には分かった。この血は付着して数分も経っていない――今すぐ行かなければ手遅れになる。 警察に通報し駆けつけた古い民家の階段下には、右足を骨折し倒れ伏す母親と、自らの手のひらを切り裂いた六歳の少女がいた。 「……だれ?」 母を庇い、血まみれの手で私を睨み据える少女の瞳が訴えていた、あまりに残酷な真相とは。親子関係|金銭問題2.4万字5 200 -
完結第22話
夜勤の救急外来に運ばれた夫と義姉
深夜2時、救急外来で夜勤中の看護師・佐藤み咲のもとへ、交通事故で重傷を負った男女2人が搬送されてきた。シーツの下にいたのは、夫・拓也と義姉・麗子。しかも2人は、決して「姉弟愛」では説明できない姿で倒れていた。 み咲は5年間、看護師という仕事を見下す夫と、「子供も産めない」と侮辱する麗子、その2人を庇い続ける義母・里子に耐えてきた。 それでも彼女は感情を捨て、看護師として2人の命を救うことを選ぶ。 だが、惨状を目にした義母まで「全部あなたのせい」とみ咲を罵倒した瞬間、最後の迷いは消えた。 何年も残してきた暴言の記録と証拠を武器に、奪われ続けた人生を取り戻す反撃が静かに始まる――。夫婦|修羅場|不倫3.3万字5 2860 -
完結第11話
貧乏老人を嘲笑った行員の末路
「あんな貧乏臭い爺い、適当にあしらっとけばいいのに」ボストンバッグを抱えた老人に、新入行員は嘲笑の声を浴びせ、エリート課長代理は別の窓口へ強制的に追い返した。母親の入院費のため百万を引き出しに来ただけの、よれよれのジャケットを着た年寄り――。だが、彼こそが全日本経済の裏を牛耳るクオンホールディングスの会長・久音次郎その人だった。侮辱に耐えかねた新人の篠崎水希が一人で抗議する中、老人が静かに古びたバッグの金具を閉じた瞬間、端末の画面で一千万円、一億円と出金通知の数字が狂ったように跳ね上がり始めた。絶望の淵に立たされた傲慢な行員たちの運命を決定づける、驚愕の審判の行方は――。職場逆転|修羅場1.6万字5 1861 -
完結第19話
深夜2時、隣家の物置で赤ん坊を抱く4歳児
心臓の不整脈で消防士を辞め、故郷の民宿「緑海荘」へ戻った27歳の相馬蒼太。 ある深夜2時、隣家から突然途切れた赤ん坊の泣き声に異変を感じて駆けつけると、物置のような暗い部屋で、全身に青あざを負った4歳のひなが、痩せた妹メイを必死に抱いていた。 「泣いたらまた叩かれるんですか?」――その一言に、蒼太は2人を必ず守ると決意する。民宿へ連れ帰り、常連客の旅行ライター・りんや両親と共に食事と温かな寝床を与え、児童相談所へ連絡。 しかし保護の朝、ひなは「お兄ちゃんと離れたくない」と蒼太の服を握りしめる。初めて見る海の前で、ようやく声を上げて泣いた少女を前に、蒼太とりんは“助ける”だけでは終われない未来を選び始める――。親子関係|修羅場2.8万字5 251 -
完結第10話
洋食屋の絆と、高級寿司屋の逆転
岡田悠斗は、高校生の時に両親を交通事故で亡くし、高卒の自動車整備士として働きながら、三歳下の妹・真央をたった一人で大学の法学部まで育て上げた。真央は猛勉強の末に難関の司法試験を突破し、弁護士として初任給をもらう。悠斗への感謝を込めて予約した高級寿司屋の席で、悠斗の職場の傲慢な上司・西村が偶然居合わせ、「工場で油まみれになって働く底辺の作業員」と悠斗と真央を激しく侮辱する。絶望と怒りが交錯する中、隣の席に座っていた一人の客が立ち上がり、西村を冷徹に一喝する。その男の正体は、かつて両親の営む洋食屋「ひまわり」で無銭の少年時代に助けられた大手IT企業の社長・藤井宗介だった。過去の恩返しと、血を分けた兄妹の絆が奇跡を引き起こす感動のヒューマンドラマ。兄弟姉妹|修羅場1.5万字5 641