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"雑用係の逆襲――百億の商談と偽りの女社長" 第5話

ロマンを追う父と世界を巡る幼期

ミスター・モリティー。

報セキュリティ業界にを置く者であれば、その名をらぬ者はいない。数々の国規模のサイバーテロを未然に防ぎ、悪あるクラッカー集団を壊滅に追い込んできた、世界最の防壁を創りす伝説の。

その正体が、目ので雑用係としてこき使っていた男だとらされ、女社は腰を抜かさんばかりに震えていた。

――俺の名は、森本(もりもと たいが)。歳。

なぜ俺がこのような規格のを歩むことになったのか。計の針をしだけ、俺の幼期へと巻き戻そう。

俺の族は、父と母、そして俺のだけだった。かつてはらしい犬が族の員だった期もあったが、命あるものとの切ない別れを経験し、そのしみに耐えかねたがでは、もう度とペットは飼わないとに誓っていた。

俺の格形成に決定な響を与えたのは、違いなく父親だった。

父の専は考古学。それも、筋入りのフィールドワーカーだった。

「、いいか。考古学というのはな、無限のロマンに満ち溢れているんだ!」

俺が物ついた頃から、父は毎のようにそう弁していた。母が「まだこの子にはいですよ」と苦笑いして諫めても、父は子守唄代わりに古代文の壮さを語り聞かせるような、筋入りの物好きだった。

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「パパ、ロマンってなに?」

言葉を覚えたばかりの幼い俺が尋ねると、父は豪に笑って胸を叩いたものだ。

「ロマンとはだ! そして宇宙を司る壮なスペクタクルだ!」

「すぺく……たく?」

「スペクタクル! エクセレント! するに、最に素らしいということだ!」

父の斎は、のかけらや素焼きの形、所の錆びた属片など、子供の目から見れば完全にガラクタのだった。しかし父にとっては、そのつひとつが命よりもい宝物だった。目に入れても痛くないほどがられていた俺ですら、その棚に触れることだけは固く禁じられていた。

「パパ、僕と形、どっちが事?」

ある、悪戯でそう尋ねた俺に、父は秒の躊躇もなく即答した。

「どっちも事だ!」

「しは悩んでよ! 僕が番じゃないの?」

「もちろんはパパの宝物だ。だが、この千の形も同じくらい切な宝物なんだ。選べるわけがないだろう。じゃあは、ママと幼稚園のエマちゃん、どっちと結婚するんだ?」

「う……えっと……」

「ほら見ろ、選べないだろう!」

どこか論点がズレている気もしたが、父の突き抜けたには議な説得力があった。

そして、発掘がライフワークである父にとって、活の台は本国内に留まらなかった。世界のどこかでたな遺跡が発見されたとにすれば、「ロマンが俺を呼んでいる!」

と叫び、族を置いて颯爽と現へびしてしまう。

残された母と俺は、慌ててトランクに荷物を詰め込み、父のを追いかけるのが常だった。

ドイツ、アメリカ、ギリシャ、ペルー、国、イタリア、メキシコ、トルコ、エジプト……。

父は学での専分野を持っていたはずなのだが、プライベートでは完全な自由だったため、文や代を問わず、の吹くままに世界を渡り歩いた。

奇妙なことに、父はどこの国へってもを得た魚のように現に溶け込み、お嬢様育ちでおっとりした母は、まるで最初からそのにんでいたかのように現の々と仲良くなった。そして幼い俺は、畳のを歩くたびに陽気な国たちからを撫でられ、両腕いっぱいの果物やパンを持たされるのだった。

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