"四十九日の遺言" 第14話
号は正隆が鍵を管理していた。消防の入記録が残ったため、資料をから「らない」と切りすことは難しい。警察と税務当局が必な物を保全し、静側には賃貸経営に関する写しが示された。
台帳には分の表と、鉛でかれた分の裏表があった。表は彦へ見せるため、裏は正隆自の回収記録だった。分の賃は管理報酬ではなく、《別》《母には言わない》と記されている。正隆の主張は崩れた。
方で、彦の署名がある支払承認もてきた。正隆の清掃会社へ毎万円、設備会社へ万円。実作業がないにも支払われ、の経費として処理されている。彦が途から黙認したことは否定できなかった。
静は夫の遺をに、晩座った。法事では「族いで責任のあるだった」と皆が語った。だが彦が守った族ので、妻だけは説を受ける相ではなく、穴を埋める働きとして扱われていた。
翌朝、静は片桐へ、自分の未払い与と替も請求に加えたいと伝えた。夫婦なのだからに流すべきだと自分へ言い聞かせてきた部分だった。の帳簿、静には万円の与が設定されていたが、実際の振込はから止まっている。未払い分の全額回収は効や夫婦財産の問題があり難しい。
広告
それでも、労働が無かったことにはしたくなかった。
税理士は、父の保険からした改装費、介護に個座から補填した仕入代、使用の対価を理した。静が取り戻せる額は、正隆が提示した百万円をきく回った。何より、を維持した資が「佐伯の男たち」だけのものではないと数字で示せた。
正隆は警察の事聴取、澄子の部へ戻り、静が帳簿を提したせいで逮捕されると泣いた。澄子は話で静を呼び、「証言をし変えれば、正隆はやり直せる」と頼んだ。
静は断った。
焦げた箱のつには、静の署名を練習したまで入っていた。完全な偽造類は見つからなかったが、正隆が使用の同を作ろうとしていた能性がある。縦き、横き、旧姓。何度もなぞられた自分の名を見た、静はりより寒気を覚えた。族としてっている跡まで、財産をかす具にされたのだ。
警察は練習だけで犯罪を断定せず、いつ誰が作ったかを調べた。静も「きっと正隆だ」と先回りして公言しなかった。結果を急げば、相と同じように都のよい結論へ事実を押し込むことになる。数週、に使われたトナーが正隆の事務所の複と致し、号へ箱を運んだ配送記録も確認された。
焦げた資料の復元にはがかかった。
ページを枚ずつ乾燥させ、煤を払い、順番を撮する。静は専業者の作業を急かさず、結果がるまで公表もしなかった。正隆はそのに「証拠は焼けて読めない」と周囲へ話したが、を受けた表の内側ほど文字は残っていた。捨てようとした記録が、保全続によって最も厳密な証拠になった。
資料のには、彦が正隆へ送った《今で終わりにしろ》というも通あった。どれも翌には支払いが再されている。止めようとした痕跡はあっても、止められなかった結果まで責任が消えるわけではなかった。
「お義母さんが息子を助けたい気持ちと、私が嘘をつくことは別です。私はもう、誰かを守るために事実をさくしません」
広告
おすすめ作品
-
完結第15話
義母ATM、全財産を失う
妻を臨月の過労で倒れさせながら、平然と「嫁の勤め」と言い放つ義母。夫は怒りを押し殺し、法事の席で母の隠し財産とリフォーム費用の着服を暴く準備を進めていた。しかし、母が仕掛けた会社への嫌がらせの裏には、亡き義父が隠し通した衝撃の過去が眠っていた。真実が明かされた時、毒親の描いた完璧な老後計画は完全に崩れ去る。相続|真実|絶縁|金銭問題2.2万字5 113 -
完結第20話
長女にだけ渡された鍵
父の四十九日。「お前が一番しっかりしている」と病床の父から金庫の鍵を託された長女の私は、弟と妹の前で鉄の扉を開けた。だが中にあった私の通帳は残高一万円で、二百八十万円あった預金は弟の名義で全額引き出されていた。問い詰める私に弟は「親父に頼まれた」と父の直筆の手紙を突きつけ、妹も父と交わした別の密約を叫び始める。そこへ男が現れ、父が実家を担保に借りた五百万円の借用書を突きつけてきた。裡切られた|兄弟姉妹|相続|金銭問題|修羅場3.0万字5 92 -
完結第19話
棺の中の男を、夫は知らない
親を捨てて逃げた冷酷な男だと親族中から罵倒される義兄の葬儀で、義母は涙を流し、夫を支えの孝行息子だと称えていた。だが焼香台へ進む夫の前に立ちはだかった私は、「あなた、本当に棺の中にいるその人を知っているの」と告げた。夫が隠していたのは、過去五年間、毎月義兄へ送り続け、そのたびに全額突き返されていた六十回分の送金記録だった。血の気を引かせる夫と親戚の前で、私はその明細を祭壇の上に広げた。兄弟姉妹|親不孝|絶縁|親子関係|修羅場2.8万字5 88 -
完結第25話
祖父が私に遺した最後の拒否権
亡くなった祖父の果園を三千二百万円で売却するため、東京で働く私は十年ぶりに実家へ呼び戻された。生活苦に喘ぐ父と妹の結婚資金のため、名義を持つ父は契約を急いでいたが、司法書士が出したのは「長孫である私の書面同意がなければ売却は無効」という祖父の遺言だった。早く終わらせようとペンを握った私は、ふと買い手企業がここを何にするつもりなのか尋ねた。山を削り大型トラックの夜間中継所にすると聞かされた瞬間、私は手元のペンを静かに机へと置いた。祖父母と孫|相続|親子関係|金銭問題3.7万字5 111 -
完結第23話
母の職場で死んでいた私
母の定年退職をサプライズで祝うため、私は東京から新幹線に乗り宴会場へ駆けつけた。お祝いの品を手にして扉を開けた瞬間、母の同僚は手にしたグラスを取り落とし、顔を青ざめて後ずさりした。毎年盆と正月には実家へ顔を出し、仕送りも続けていたはずの私は、母が二十八年勤めた職場では十五年前に事故で亡くなった娘として扱われていた。ステージを駆け下りてきた母は私の手首を強く掴み、そのまま非常階段へと力任せに引きずり出した。親不孝|親子関係|退職金|修羅場3.5万字5 781 -
完結第21話
解雇された職人が未明に餡を練る
創業五十周年を控えた和菓子屋で働く私は、常連客の前で二十五年尽くした職人が店主に突然解雇される場に居合わせた。跡を継ぐため会社を辞めて戻った一人息子がいるものの、看板である漉し餡の技術はまだ誰にも継がれていない。店が立ち行かなくなると焦った私が翌朝四時に店へ駆け込むと、暗い厨房で追い出されたはずの職人が大鍋を振っていた。仕上がった餡を前に、朝一番に出勤した店主は無言で味見の木さじを口へ運んだ。裡切られた|親不孝|親子関係|修羅場3.2万字5 172 -
完結第19話
席次表から消された姉
披露宴の席次表を確認していた時、婚約者は親族席にある私の姉の名前を赤ペンで乱暴に塗りつぶした。介護士の姉を親戚に見せるのは家の格に関わると吐き捨てる彼に、私は必死で抗議した。だが、両親のいない私を育ててくれた姉は、侮辱されても取り乱すことすらしなかった。ただ、赤線の引かれた名前を静かに見つめ、「彼のお父さんが去年入院した時、毎晩誰が付き添っていたか聞いてごらん」と私に告げた。裡切られた|兄弟姉妹|親不孝|介護|修羅場2.9万字5 428