みかん小説
本棚

"月二十五万を貪る偽装役員一家の転落" 第10話

暴かれる仮面

「……それで、話というのは何かしら?」

かず子は線をジュラルミンケースに吸い付けられたまま、逸る気持ちを抑えきれない様子でを乗りした。

「おは、そのケースのにきっちり千万円入っているのでしょうね?」

文夫はソファーの対面に静かに座っていた。

無言で度頷くと、夫はジュラルミンケースの隣に、もうつ、何の変哲もない茶封筒をトンと置いた。

「何よ、それ」

ミクが審そうに眉をひそめる。

「ああ、これか」

文夫はの籠もらない、静かな声で言った。

「千万円というだ。汗流して働いてきた庶民にとっては、全財産に等しい。渡すに、いくつか確認しておきたいことがあってな」

文夫のそのく落ち着いた言に、部の空気がフッと変わった。

悠の眉がピクリとね、かず子の顔に瞬だけ警戒のがよぎる。

「確認ですって? 何を今更……」

悠が馬鹿にしたようにを鳴らした。

「俺はこれから会社をちげるんですよ? は貴なんです。余計な雑音に付きっている暇はないんですがね」

「すぐに終わる」

文夫はそう言うと、ゆっくりと茶封筒の封を切り、から数枚の類と写真の束を取りした。

そして、そのから数枚のカラー写真を、テーブルのに滑らせるようにして並べた。

「悠君。君はこれから起業をしようとしているそうだな」

広告

「ええ、言った通りですよ」

「そうか。では……この写真に写っている若い女性たちも、君の優秀なビジネスパートナーなのかな?」

ピシリ、と悠の体が凍りついた。

テーブルのに広げられたのは、驚くほど鮮に撮された複数のカラー写真だった。

都内の流ホテルのラウンジで、あるいは級ブランドショップの内で、若い派な女性とぴったりと腕を組み、満面の笑みで抱きっている悠の姿。

そして写真のには、撮がくっきりと印字されていた。

「こ、これは……ッ!?」

悠の顔から、瞬で血の気が引いていくのが見て取れた。

「付を見てみるといい」

文夫の徹な声が、悠の元に突き刺さる。

「々がミクのためにと、結婚祝いと婚活の準備として渡した数百万円。そのを座から引きした、まさにその翌週の写真だ。どうやら君は、々のを元に、派な女性たちと豪遊していたらしいな」

「な……ッ!?」

横に座っていたミクが、目を見いて写真にびついた。

「ちょっと、悠さん!? これ、どういうことよ!? この女、誰なのよッ!?」

「ち、違う! これは……仕事の付きいで、接待だ! そう、事なクライアントの女性だよ!」

悠は脂汗を額にびっしりと浮かべ、見苦しくどもりながら言い訳を並べてた。

すると、横からかず子が慌てたように割って入ってきた。

広告

「そ、そうですわよ! 男の甲斐性というものですわ! これから企業を率いる器の男なんですもの、女性のや侍らせるくらいの度量がなくてどうしますの! あなたのような世らずの庶民の娘には、ビジネスの微が理解できないでしょうけれどね!」

実の息子の貞を「男の甲斐性」と言い放つその異常さに、私は背筋が凍るような嫌悪を覚えた。

だが、文夫はそんな見苦しい言い訳など切に入っていないかのように、たいつきで次の類へと線を移した。

「……そうか。では、次だ」

文夫の乾いた指先が、茶封筒からもう束の類を引きした。

「かず子さん。あなた方は、自分たちのことを『由緒正しい名』だと誇らしげに語っておられましたね」

「そ、そうですわよ! それが何か!?」

かず子は扇子を握りしめ、甲い声で虚勢を張った。

「ええ。ですから、し議にいましてね」

文夫は元の類をペラリと捲り、事務な調で読みげた。

「この、あなた方の本宅宛てに届いている『自己破産申して準備に関する通』の数々は、体どういう名の嗜みなのかといまして」

ドサリ、と。

テーブルのに、裁判所や弁護士事務所、複数の融業者から届いた督促状のコピーが積みげられた。

「な……な、何でそれを……ッ!?」

かず子のから、引き攣った鳴が漏れた。

先ほどの悠以に、その顔は気へと変していた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: