"寝室のベッドの下に隠されていたもの" 第11話
何もない暗
環境を変えれば、すぐ元の自分へ戻れるとっていた。正とれ、財産を守り、婚まで成したのだから、恐怖は消えて当然だと考えていた。
現実は違った。しい部には正の物がつもなく、鍵を持つのも私だけである。それでも夜になると物音へを澄まし、朝には財布と印鑑の位置を確認した。ベッドのを見る回数は、晩に度を超えることもあった。
私は療内科ではなく、犯罪被害や理支配を専にする医療関を自分で選んだ。担当の臨理士、藤川は「確認をやめなさい」とは言わなかった。
「確認したくなるのは、あなたの覚がく否定されてきたからです。今は、自分の目で全を確かめることが必な期なのでしょう」
「でも、正が言ったとおり、私はおかしくなったんじゃないですか」
「怖い経験のに怖がることは、判断能力がない証拠ではありません。むしろ、何が起きたかを体が覚えている反応です」
私は初めて、自分をく治さなければならないという焦りからし解放された。確認する自分を責めるのではなく、「今夜も全だった」と記録する。眠れないは無理に横にならず、照をつけて本を読む。さな選択を自分へ返していくことから始めた。
会社の第者監査はか半かかった。
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警察が提供した元映像には、私が混乱するに正が薬の瓶や財布を置く面が残り、独した医師の診断でも業務の判断能力に問題はないと確認された。
管理職へ戻る、瀬部は部署全員ので、会社が部から送られた報を分検証せず、私を業務からしたことを説した。
「島課に責任はありません。会社の対応で利益と苦痛を与えたことを、正式に謝罪します」
同僚たちもをげたが、私は全員に謝ってほしいわけではなかった。報を広めず、仕事を引き継ぎ、私が戻れるよう記録を残してくれたもいる。特に部の宮本は、私が過に決裁した案件を再検証し、件も自然な判断がないことを覧にしていた。
「課が戻った、だけで信じていますと言うより、数字があった方がいいとって」
「ありがとう」
私はその覧を見て泣いた。正は数字を使って私を閉じ込めようとしたが、同じ数字が今度は私の仕事を証してくれた。
会社は私個への謝罪だけでなく、庭からの申告を理由に社員の権限を制限する際の続きを見直した。緊急性があるを除き、本の説、業務実績、独した専の見を分けて確認する。族だから正しい、配偶者だから善という提を置かない制度である。
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見直し会議には私も参加したが、自分の事件だけを基準に厳しい規則を作らないよう注した。本当に体調を崩し、休む支援が必な社員もいる。なのは働かせ続けることでも、律に権限を奪うことでもなく、本を抜きに本のを決めないことだった。
宮本がぽつりと言った。
「課が戻ってきたから言えますけど、僕も父から会社へ話されたことがあります。残業で倒れそうだから辞めさせてくれって。配だったんでしょうけど、歳の自分が子ども扱いされたみたいでつらかったです」
別の社員も、婚の配偶者から事実と異なる連絡を受けた経験を話した。私の事件ほどきくなくても、族の言葉が本の言葉よりく扱われる面は珍しくない。制度を変える理由は、社内で話題になった私を救済するためではなかった。
復帰からか、私は部代理への昇を打診された。事件への同で選ばれたくないと断りかけたが、瀬は評価資料を見せた。過の成果、部の育成、危対応、監査改善の実績が並んでいる。
「これは慰謝料ではない。君が事件から積みげた仕事への評価だ。受けるかどうかは、自分で決めてくれ」
私は晩考え、引き受けた。正に能力を疑われた反で、何でもできると証するためではない。
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責任の範囲と支援体制を確認し、自分がやりたいと判断したからだった。
復帰、最初のきな決裁でが止まった。投資額は億円。以なら根拠を確認した、迷わず印を押していた。違ったらどうする、また判断できないと言われるのではないかという正の声が、のに聞こえた。
私はで無理に決めず、担当者を呼んだ。
「私はこの案がよいとう。ただ、見落としがないか緒に確認してほしい」
へ確認を求めることは、能力がない証拠ではない。正は「俺に全部任せろ」と言い、私から判断そのものを奪った。仕事の仲は、私が決めるために報を差ししてくれる。その違いを理解した、私は落ち着いて決裁印を押すことができた。
正の会社は破産続きへ入り、債権者たちは私の財産から回収できないと正式にらされた。彼が顧客へしていた虚偽説もらかになり、業界で以のように仕事を続けることは難しくなった。
それでも私は、彼がに迷う姿を像してぶことはなかった。正の転落を見届けるために、自分のを使いたくなかった。私が欲しかったのは彼の幸ではなく、私のから彼の声が消えることだった。
義母からは何度もが届いた。息子が病気だった、事業の失敗で追い詰められていた、妻なら助けるべきだった。
封をけるたびが乱れるため、の事務所へ転送するよう設定した。読まないという選択も、私に返ってきた権利のつだった。
半、正、野、登志子らに対する刑事続きの展をから聞いた。罪名や処分はそれぞれの為と証拠に応じて判断され、私が望むさになるとは限らない。それでも、盗撮映像と偽造類が公式な記録に残り、「妻の妄」で片づけられなかったことにはがあった。
帰宅、私はベッドのでライトをにした。覗くかどうか迷い、結局その夜は確認した。翌は確認しなかった。にはまた確認した。
回復は直線ではなかったが、確実に私の速度でんでいた。
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