"父が開けた祝儀袋" 第4話
志津は、「婚礼は両でするものなのだから、細かく分ける方がおかしい」と主張したという。蔵も、「娘側がまとめて払うのが昔からの習いだろう」と言ったらしい。
「浩司さんはどうう?」
「……うちが増やしたなら、うちにも責任はあるとう」
初めて夫がはっきり言った。
恭子は頷いた。
「私も同じ。私たちが頼んだ分は、私たちで負担する」
「でも万円が分からないんだろ」
「うん」
そこが残った。
翌、恭子は再び実へった。
正吉へノートを見せる。
「お父さん、借は万円いって言ったよね」
「ああ」
「でも婚礼費でりなかったのは万円くらい」
正吉の顔が固まった。
「細かいものがにもある」
「何?」
「祝い返しとか、雑費とかだ」
「領収見せて」
「いちいち残しとらん」
「万円も?」
正吉はちがった。
「親を棒みたいに調べるな!」
「棒なんて言ってない。何に使ったか聞いてるだけ」
文がのへ入った。
「お父さん、本当にに何かあるの?」
その聞き方で、恭子は気づいた。
母もらない。
正吉は妻の顔を見ず、へりていった。
その夜、文から話があった。
「恭子、ちょっと来られる?」
声が震えていた。
実へくと、文が枚の借用証を持っていた。
の帳の奥から見つけたという。
借入額は万円。
貸主は、父が昔から仕入れで付きっている融業者だった。
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問題は額ではなかった。
借入だった。
披宴のか。
まだ会も、装も、料理も正式に決まっていない期である。
摘欄には、父の字でこうかれていた。
《荒物仕入資》
恭子はから目をせなかった。
なくとも万円は、結婚のために借りたではない。
父が披宴当に返していた「婚礼の借」のに、最初からの借が混じっていた。
そして、その借用証の裏にはさく鉛で、
《婚礼精算予定》
とかれていた。
父は披宴が決まるから借を抱えていた。
それを、娘の結婚で返そうとしていた能性がてきた。
翌朝、恭子は仕事を休んだ。
父を問い詰めるに、もう度数字を確かめたかった。会社で経理補助をしている恭子は、領収や支払の順番を追うことには慣れている。父がした婚礼関係の類を付順に並べると、これまで見えなかった流れが浮かび始めた。
。
荒物仕入資として万円借入。
。
恭子と浩司の披宴会が決まる。
。
父が会へ追加料理を依頼。
。
嫁入り具を当初予定より増やす。
。
同じ融業者から万円を追加で借りる。
。
披宴。
そして当、正吉は祝儀をけ、その業者へまとまったを返している。
「お父さん、最初の万円、婚礼費じゃないよね」
を閉めたあと、恭子は借用証を父のへ置いた。
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正吉はしばらく見つめ、やがて煙へをつけた。
「のだ」
「どうして私に黙ってたの」
「おに言う話じゃない」
「私の祝儀で返したでしょう」
「のはのだ」
恭子はその言葉を聞いて、逆に静になった。
「じゃあ、どうして『この披宴をするために借りた』って言ったの?」
正吉は答えなかった。
文が隣で青い顔をしている。
「お父さん、私もらなかったよ。、そんなに苦しかったの?」
正吉は煙を皿へ押しつけた。
駅に型の雑貨ができてから、現売りの客が減った。昔からの得先には掛売りが残り、仕入れ代の支払いだけが先に来る。には問への支払いがりず、万円を借りた。
「それと恭子の結婚は別でしょう」
文が言った。
「別じゃない」
正吉は初めて声を荒らげた。
「結婚にはがかかる。どうせ借りるならつにまとめた方がいい。祝儀だって入る。全部終わったに精算すればいいとったんだ」
「祝儀がいくら入るか分からないのに?」
恭子が聞いた。
「これだけ呼べばある程度は分かる」
その言で、恭子は顔をげた。
「これだけ呼べば?」
父はを閉じた。
恭子は披宴の招待者名簿をいした。
当初予定より増えたい招待客。そのには、恭子がほとんど会ったことのない父の取引先や商のが何もいた。
「お父さん。
招待客を増やしたの、祝儀が欲しかったから?」
「違う」
返事がすぎた。
恭子はちがり、の帳へ向かった。
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