"「もう連絡しないで」と言った娘から48件の着信" 第12話
捨てはしなかった。
事実として残す。
ただし、毎の活からはざける。
そのの夕方、美咲から話が来た。
以のような緊急の着信ではない。
度だけ鳴り、なければ留守番話へ切り替わった。
私は洗濯物を畳み終えてから折り返した。
「どうしたの?」
『したことじゃないんだけど、輔君と末どっちの実にくか話してて』
私は瞬笑った。
「また、どちらか選ぼうとしてるの?」
話の向こうで美咲も笑った。
『違うよ。今は輔君の実にって、1の別のにお母さんのところにこうかって。お母さんの予定を聞こうとって』
「1の第2週は旅よ」
『また?』
「今度は温泉」
美咲はし黙った。
昔なら「じゃあ程変えて」と言ったかもしれない。
けれど、
『じゃあ帰ってきたでいい?』
と尋ねた。
「ええ」
それだけで予定は決まった。
誰かを優先するために、誰かを切る必などなかった。
翌の、美咲が結婚して半が過ぎた。
母娘の連絡は以よりずっと減った。
毎のように届いていたメッセージは、週に度あるかないかになった。
それでも関係がくなったとはわなかった。
むしろ、以より話す内容は増えた気がする。
美咲は仕事の愚痴を言うも、
「聞いてほしいだけ。解決しなくていいから」
と最初に言うようになった。
私も、すぐに答えをそうとしなくなった。
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輔さんと喧嘩をしたと聞いても、仲裁しない。
体調を崩したと聞いても、本が頼まない限り事を持ってかない。
代わりに私自も、仕事で主任になったことや、陶芸の作品が域展に選ばれたことを娘へ話すようになった。
以の私は、自分のことをあまり話さなかった。
母親とは、娘の話を聞く側だとっていたからだ。
ある、美咲が私の部へ来た。
卓のには、で買った青の湯呑みが置いてある。
美咲はそれをに取り、
「これ、いいね」
と言った。
「でしょう。自分で買ったの」
「ってる」
美咲は笑った。
しばらくして、ふと真面目な顔になった。
「お母さん。あののこと、たまにいす」
「どの?」
「私が『もう連絡しないで』って言った」
私は湯呑みにお茶を注いだ。
「私も忘れてはいないわ」
「今でも、よくあんなこと言えたとう」
「怖かったんでしょう」
「うん。でも怖かったからって、言っていいことじゃなかった」
美咲はそう言い、しを置いた。
「お母さんが『ありがとう』って言った、最初は嫌だとった」
私は笑った。
「そうでしょうね」
「でも今は、し分かる気がする」
「何が?」
「私があんなこと言わなかったら、お母さんは今でも私の結婚式の配とか、役所の続きとか、何でもやってたかもしれない。私もずっとそれが普通だとってた」
私は答えなかった。
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美咲の言う通りだった。
あの話がなければ、私は今も「何かあったらいつでも話して」と言いながら、自分のを娘のために空けていたかもしれない。
美咲も、母親は絶対に消えないというので、自分の言葉がを傷つけるさをらないままだったかもしれない。
娘が私を切ろうとしたあの夜。
私は22と同じように、再び誰かから選ばれなかった。
けれど今度は、追いかけなかった。
追いかけなかったからこそ、見えたものがあった。
娘の恐怖。
私自の依。
直の嘘。
織の保。
そして、族とは誰かを選び続けることではないという、ごく当たりのこと。
「ねえ、美咲」
「何?」
「あの、48回も話したでしょう」
娘の顔が赤くなった。
「数えてたの?」
「画面にてたもの」
「忘れてよ」
「無理ね」
で笑った。
美咲は帰り際、玄関で靴を履きながら言った。
「今度の曜、輔君と具見にくんだけど、お母さんも――」
そこまで言って、言葉を止めた。
私は娘を見た。
美咲はし考え、言い直した。
「……やっぱりで決める。買ったら写真送るね」
「そうしなさい」
ドアが閉まった。
私はになった部で、卓へ戻った。
スマートフォンは静かなままだった。
昔なら、その静けさを寂しいとっただろう。
今は違う。
窓辺には、陶芸教で作った器が並んでいる。帳には来の旅と展示会の予定がかれ、蔵庫には友とくの予約票が貼ってある。
娘のが私かられても、私のは空にはならなかった。
私はで買った湯呑みをに取り、まだ温かいお茶をんだ。
あの夜、美咲に言った言葉をいす。
「そう、ありがとう」
あれは別れの言葉ではなかった。
22続けてきた古い親子の形を終わらせる言葉だった。
そして今なら、もう度同じ言葉を言える。
娘が私かられて、自分ので歩き始めたことに。
私自も、母親という役割だけではないへ戻れたことに。
ありがとう、と。
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