"兄夫婦を亡くした日、5歳の双子を家族にした" 第6話
涙がこぼれた。
「私、兄たちに返したいんです」
「何を?」
「全部です」
「全部って?」
「も学も、医学部も。今の私があるのは2のおかげだから」
文さんは首を振った。
「んだへの恩返しのために、きてるとの縁を切るの?」
「そうじゃ……」
「そう見えるわ」
返せなかった。
そのときチャイムが鳴った。
文さんは計を見た。
「来たわね」
「誰がですか」
「本」
玄関をけると、蓮がっていた。
には、私が公園のベンチに置いた指輪があった。
「母さん、来てるんだろ」
奥から文さんの声がんだ。
「自分で話しなさい。私は子供たちを見てるから」
蓮は靴を脱ぎ、廊へがった。
私たちはしばらく向きった。
「つずつ聞く」
蓮が言った。
「向と蒼依を育てたい?」
「育てたい」
迷わなかった。
「俺と結婚したい?」
今度は答えられなかった。
「それは別の質問だからな」
涙がた。
「……したい」
蓮が息を吐いた。
「じゃあ、なんで別れた」
「あなたを巻き込みたくなかった」
「だから、巻き込まれるかどうかは俺が決める」
「怖くないの?」
「怖いよ」
即答だった。
「俺は子供を育てたことなんかない。から父親ですって言われても無理だ。美緒の仕事だって変だし、あの子たちが俺を嫌うかもしれない」
蓮はそこで度言葉を切った。
「でも、怖いからやめるかどうかも俺が決めたい」
私は泣きながら頷いた。
蓮は指輪を差しした。
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「今、戻す?」
私はを伸ばしかけて止めた。
「……今戻していいのかな」
蓮はし考え、指輪をポケットへ戻した。
「じゃあ延期」
「え?」
「結婚式。止じゃなく延期。今は子供たちの活を作るほうが先だろ」
私は初めてし笑った。
それは、何も解決していない同士が選べる、最も現実な答えだった。
翌週、私は病院の医局に事を話した。
当直を定期してもらい、休暇と勤務調を組みわせる。永に特別扱いを求めるのではなく、まず3かで活の形を作ることにした。
蓮も勤務先へ相談し、週に1はく帰れるを固定した。
文さんは曜と曜なら伝えると言った。
それ以は自治体の支援制度と延保育を使う。
のでは、完璧に見えた。
実際に始めると、3で崩れた。
朝6に起きても、向が靴を履きたくないと言い、蒼依は織さんが買った以を拒んだ。朝をべさせ、着替えさせ、自分も病院へける格好になるころには、毎朝すでに仕事終えたように疲れていた。
夜はもっと難しかった。
向は眠る直になると急に無になった。
蒼依は夜に何度も目を覚まし、玄関へった。
「ママ帰ってきた?」
そのたびに私は布団からた。
「まだ帰ってこない?」
「うん」
「ずっと?」
「ずっとだよ」
同じ会話を何度もした。
ある曜、帰宅した私はソファに腰掛けたまま眠ってしまった。
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目を覚ますと1以経っていた。
テーブルに積んでいた器は洗われ、のおもちゃも片付いている。
台所に文さんがっていた。
「ごめんなさい」
反射に言った。
「何が?」
「寝ちゃって」
「疲れたら寝るでしょう」
「でも、洗い物まで」
文さんが振り返った。
「美緒さん。あなた、『ごめんなさい』って1何回言ってる?」
「え?」
「数えたほうがいいわよ」
私は黙った。
「助けてもらうたびに謝ってる。蓮にも、私にも、病院のにも」
図だった。
「迷惑をかけてるから」
「織さんは、あなたに何て言ったの」
胸が詰まった。
「困ってるがいたら、をしてあげてって」
「じゃあ今、困ってるのは誰?」
私は答えられなかった。
自分が困っていると認めた瞬、兄たちへの恩返しに失敗する気がしていた。
文さんは濡れたを拭いた。
「を差しすばかりじゃ、族にはならないのよ」
「……」
「誰かが差ししてくれたを掴むも必なの」
そのから、私はつだけルールを作った。
助けてもらったとき、「ごめんなさい」を言わない。
代わりに「ありがとう」と言う。
最初は難しかった。
翌週、病院で会議が引き、保育園の迎えににわなくなった。
私はスマートフォンを握ったまま5分迷い、蓮へ送った。
《今、迎えお願いできる?》
すぐに返事が来た。
《ける。夕飯も買って帰る》
指が勝に《ごめん》と打ちかけた。
私は消した。
《ありがとう》
それだけ送った。
帰宅すると、向と蓮がリビングでブロックのを作っていた。
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