"夫の不倫相手の娘を9年育てた私の離婚" 第5話
義母・貞子の元へ相談にった際、義母は私に温い緑茶をしながら、ややかな目で言い放った。 『男の遊びじゃないの。秀も反省してるんだし、も公平もまださいでしょう。母親であるあんたがどっしり構えて耐えなきゃ、庭なんて守れないわよ』 ――耐えなければならないのは、なぜ裏切られた妻の私なのか。 その理尽に抗う気力すら、当の私には残されていなかった。幼いの子どもを抱えてに迷う恐怖が、私の喉元に「従」という名の首輪を嵌めていたのだ。
そのの、野島マキは女児を産した。 秀は再び私にをげた。 『認だけはさせてくれ。あの子に罪はないんだ。養育費は俺の遣いから万円ずつ面する。おたちには絶対に迷惑をかけない』 「あの子に罪はない」という正論の刃に、私は沈黙で応じるしかなかった。
悪の第幕がいたのは、それからの初だった。 曜の夕暮れ、秀がきなリュックサックを背負った、見らぬ歳の女の子のを引いて玄関に現れたのだ。 『マキのやつ、しい男を作って蒸発しやがった。アパートの部にこの子を残してな……。施設に送るか、うちで育てるか、どっちかしかないんだ』
玄関のたいタタキのに、擦り切れたさな赤い靴。 おどおどと辺りを見回していた歳の女の子が、私の顔を見げ、さなで私のエプロンの裾をぎゅっと握りしめて呟いた。
広告
「……ママ?」
その無垢な瞳から、粒の涙がポロポロと零れ落ちていた。 歳の子どもが、声を殺して泣く姿を、私はその初めて見た。 廊のから、歳のと歳の公平が息を呑んで見つめていた。 『……母ちゃん、妹?』 公平の問いに、私は何も答えられず、ただそのさな体を抱きしめて涙を流した。
その夜、秀は私にこう懇願した。 『母さんや親戚には、おのい親戚の孤児を引き取ったことにしてくれ。本当のことを言えば、このであの子は「倫の落とし子」として蔑まれる。頼む、。おの連れ子という形にしてくれ』
私は承諾した。だが、つの条件をした。 『育てる以、私ときちんと特別養子縁組を結んでください。法に私の子どもにしてください』 しかし秀は、面倒くさそうにを振って話を打ち切った。 『今はいいだろ。戸籍の切れ枚で何が変わるんだよ。俺たちは族なんだからさ』
学入学の際にも、私は再び養子縁組を求めた。 だが秀の返答は同じだった。 『今更何言ってんだよ。理子はもううちの子として育ってんだろ。庭裁判所だの何だの続きが面倒くさいんだよ』
――面倒くさい。 その言葉の真を、私はの今になって、血を吐くようないで理解していた。 秀は、私と理子を法に親子にしたくなかったのだ。
広告
私を「母親」という名の無の政婦として拘束しながら、自らはいつでも親権者のを盾にして、都が悪くなれば私だけを切り捨てられるように――。
、曜の夜。 夕を終え、緑茶をすすっていた秀が、わざとらしくきな溜め息をついて切りした。
「おい、。来から活費を万円減らして、万にするからな」
洗い物をしていた私のが、ピタリと止まる。 「……万円? どうしてですか。今でもの費と学費の積でギリギリなのに、万も削られたら計が回りません」 「会社の業績が悪化して、管理職の当がカットされたんだよ! 俺だって削りたくて削るわけじゃない。文句があるなら、おがパートの数を増やせ。曜もシフトに入れば、万くらい簡単に稼げるだろ」
曜は、理子の唱団の送迎があり、義母が定期にやってくるだ。 私がを空ければ、理子は義母から何を言われるか分からない。それをり尽くしていながら、この男は平然と言い放っているのだ。
「会社の業績悪化なら、与細を見せていただけますか?」 私の静かな問いに、秀の眉がピクリとねがった。 「ああん!? 夫の言うことが信じられないのか! 誰の稼ぎでこのにめてるとってんだ! だいたいな、理子の習い事だのだの、おのパート代からしてるって威張ってるが、もともとはおの親戚の子だろうが! 嫌ならていけよ。
広告
おすすめ作品
-
完結第26話
特上寿司と、消えた妻の半年
3月31日22時、激務を終えて帰宅した私の席にあったのは、冷え切った白米一杯だけだった。目の前で1万8900円の特上寿司を頬張る夫と義母は、「反省したらおかずをあげる」と大笑いする。家計の大半を私が支えているにもかかわらず、9ヶ月間も「罰」として食事を奪われ、夫は横で嘲笑っていた。だが二人は知らない。私が半年かけて集めた出前明細の履歴と、義母が隠し持っていた一枚の申告書の存在を。「じゃあ、外で食べてきます」――二度と振り返らずにドアを閉めた夜、経理の私が仕掛けた冷徹な清算が幕を開ける。嫁姑|夫婦4.0万字5 459 -
完結第34話
妻の葬儀の夜、義母が外した指輪と娘の写真
妻・美保の葬儀が終わった夜、修二の結婚指輪を外したのは、亡き妻の母・麗子だった。「もう美保に隠す必要はないでしょう」と唇を寄せたその瞬間、娘・咲から1枚の写真が届く。そこには半年前の病院で抱き合う修二と麗子、そしてガラス越しに2人を見つめる病衣姿の美保が写っていた。 闘病中の妻を支える献身的な夫を演じながら、修二はいつしか自分の弱さを理解してくれる義母へ逃げ込み、越えてはならない境界を越えていた。しかも麗子は「美保も知っていた」「私がいなくなったら修二さんを1人にしないでと頼まれた」と主張し、その証拠となる録音まであるという。 だが翌朝、咲が告げたのは「お母さんの声を最後まで聞いて」という一言。 亡き妻が本当に残した言葉を前に、2人が都合よく信じてきた“許し”が崩れ始める――。夫婦|修羅場5.1万字5 612 -
完結第14話
「死産」と告げた院長と20年目の出生記録
20年前、出産した娘を「死産でした」と告げられた私・佐藤しず子。しかし私は、麻酔の中で確かに聞いた産声を一度も忘れられなかった。 真実を確かめるため、私は清英産婦人科医院の清掃員として20年間働き続け、誰にも気づかれず院内の秘密を探ってきた。そんなある夜、若い看護師から「まだ間に合います。あなたの娘さん生きています」と書かれた紙を渡される。 やがて地下の保管庫へ忍び込んだ私は、自分の出産記録の隣に「佐藤女児――転送」と記された手帳を発見する。 さらにそこには複数の新生児と金銭の記録まで残されていた。娘を奪ったのは誰なのか。そして病院は20年間、何を隠してきたのか。見下され続けた“掃除婦”は、集めた証拠を手に院長・安藤剛と対峙する――。真相|修羅場2.1万字5 407 -
完結第16話
血染めの写真と三文字のSOS
夕方のコンビニの床に落ちていた一枚の写真。微笑む少女の横には、まだ乾ききっていない赤黒い生血がべっとりと付着していた。 裏返した瞬間、息が止まる。震える筆跡の住所と、指先の血で擦り付けられた『SOS』の三文字。 妻に捨てられ、八歳の息子と写真館を営む私には分かった。この血は付着して数分も経っていない――今すぐ行かなければ手遅れになる。 警察に通報し駆けつけた古い民家の階段下には、右足を骨折し倒れ伏す母親と、自らの手のひらを切り裂いた六歳の少女がいた。 「……だれ?」 母を庇い、血まみれの手で私を睨み据える少女の瞳が訴えていた、あまりに残酷な真相とは。親子関係|金銭問題2.4万字5 200 -
完結第15話
全盲の義母が言い当てた味噌汁の色
「お味噌、白味噌に変えたでしょう?」。11年前の事故で全盲になったはずの義母・かず子が、漆塗りの椀を抱えて微笑んだ。亡き実母への後悔から、365日欠かさず介護と手料理を捧げてきた嫁の私。だが翌朝、ゴミ袋の底から現れたのは、手つかずのまま無残に捨てられた私の料理と、1万8千円の銀座高級寿司やフレンチのデリバリーレシート30枚だった。夫は「お前の味付けが悪い」と冷笑し取り合わない。孤立無援の中、弁護士の助言を得た私はある罠を仕掛ける。そして勝手口の前で義母が放った「ある一言」で、11年間の嘘が音を立てて崩れ去る――。嫁姑|真相2.3万字5 3039 -
完結第22話
夜勤の救急外来に運ばれた夫と義姉
深夜2時、救急外来で夜勤中の看護師・佐藤み咲のもとへ、交通事故で重傷を負った男女2人が搬送されてきた。シーツの下にいたのは、夫・拓也と義姉・麗子。しかも2人は、決して「姉弟愛」では説明できない姿で倒れていた。 み咲は5年間、看護師という仕事を見下す夫と、「子供も産めない」と侮辱する麗子、その2人を庇い続ける義母・里子に耐えてきた。 それでも彼女は感情を捨て、看護師として2人の命を救うことを選ぶ。 だが、惨状を目にした義母まで「全部あなたのせい」とみ咲を罵倒した瞬間、最後の迷いは消えた。 何年も残してきた暴言の記録と証拠を武器に、奪われ続けた人生を取り戻す反撃が静かに始まる――。夫婦|修羅場|不倫3.3万字5 2905 -
完結第19話
深夜2時、隣家の物置で赤ん坊を抱く4歳児
心臓の不整脈で消防士を辞め、故郷の民宿「緑海荘」へ戻った27歳の相馬蒼太。 ある深夜2時、隣家から突然途切れた赤ん坊の泣き声に異変を感じて駆けつけると、物置のような暗い部屋で、全身に青あざを負った4歳のひなが、痩せた妹メイを必死に抱いていた。 「泣いたらまた叩かれるんですか?」――その一言に、蒼太は2人を必ず守ると決意する。民宿へ連れ帰り、常連客の旅行ライター・りんや両親と共に食事と温かな寝床を与え、児童相談所へ連絡。 しかし保護の朝、ひなは「お兄ちゃんと離れたくない」と蒼太の服を握りしめる。初めて見る海の前で、ようやく声を上げて泣いた少女を前に、蒼太とりんは“助ける”だけでは終われない未来を選び始める――。親子関係|修羅場2.8万字5 251 -
完結第25話
底辺受付嬢を見下す役員たちの誤算
父の会社は、最も信頼していた人間の裏切りによって無惨に食い物にされた。巨額の負債を背負い、絶望の中で病に倒れた父。私はその冷酷な真相を暴くため、ハーバード大の博士号を隠し、ただの「受付嬢」として敵の中枢である星空グループに潜入した。 誰からも見下され、理不尽な侮辱に耐え忍ぶこと3年。息を潜めて集めた証拠が示したのは、あまりにも残酷な真実だった。父を破産に追い込み、私から全てを奪った黒幕の正体は、父が家族のように慕っていた古参役員だったのだ。 「黒幕は役員会の中にいる」――私を守るため、父が命懸けで残してくれた最期のメッセージを知った時、胸の奥の悲しみは絶対的な冷酷さを持つ復讐の炎へと変わった。私の素性を知る新社長のハルトや、父の旧友たちと共に、私は決して逃れられない完璧な包囲網を密かに築き上げていく。 そして迎えた運命の役員会。全てを掌握したと信じ、私の前で勝ち誇る黒幕。だが彼はまだ知らない。無力な受付嬢だと思っていた私が、彼を社会的死の淵へと突き落とす致命的な罠を仕掛けていたことを。仮面を脱ぎ捨てた時、強欲な悪魔を地獄の底へと引きずり下ろす、容赦なき反撃が幕を開ける――。因果応報|真相|修羅場3.8万字5 1809