"「父の31億を狙った泥棒女」と罵られた私。孤独な老人に贈った2180円のラーメンが、巨大金庫の上に供えられていた" 第12話
61個の承認印
翌朝9、御厨産の臨取締役会が始まった。
健はいつものように会議央の座へ座った。だが机の名札には、「代表取締役社」ではなく、単に「御厨健取締役」と印刷されていた。
「誰が名札を変えた」
秘は答えず、席者へ資料を配った。
社取締役2名、常勤監査役、顧問税理士、財務部の田所、部調査会社の責任者、遺言執者の黒田が席に着く。さくらは株式承継の続きであるため、黒田の説を聞くとして方へ座った。
健は彼女を見つけ、元を歪めた。
「部者を経営会議へ入れるな。翻訳しかしたことのない女に、会社の数字が分かるのか」
「さんは、株式を取得する予定の利害関係として招いています。議事を妨げない限り問題ありません」
常勤監査役が答えた。
「それより、KMコンサルティングほか社との取引について説してください」
健は資料をかず、腕を組んだ。
「会社を成させるための部投資だ。親父の古いやり方では、今のをき残れない」
「では、成果物を提してください。報告、作業記録、担当者とのメール、いずれでも構いません」
「担当部署にある」
「全社サーバーと庫を確認しましたが、件もありませんでした」
田所が型モニターへ覧を映した。、61件の送。計4億8120万円。
広告
契約を承認した物、振込先、そのの資移が線で結ばれている。
毎同じ額ではない。620万円、735万円、580万円。定額の正送に見えないよう、額と名目を変えていた。しかし振込、資の割以が健の個座と美穂名義のカード決済座へ流れている。
「会の指示だった」と健は主張した。
黒田が源蔵の署名付き確認を配った。
「源蔵様は社との契約を承認していません。押印に使われた代表者印についても、健さんが印章管理から持ちしたの防犯映像があります」
「父親があとから話を変えたんだ」
「映像をお願いします」
田所が画面を切り替えた。
映ったのは、源蔵が古いへ移されたの社用運記録と、運転の証言映像だった。健は「父が自ら静養を希望した」と社員へ説していたが、報には、源蔵が会社へ戻りたいと何度も訴えたことがかれている。
『会はをりる際、会社の印鑑を健さんへ渡すなと私に言いました。翌から私は担当をされ、かに退職を勧められました』
続いて、源蔵の認能を診た医師の回答が示された。診察当、契約や経営判断を理解できない状態ではなかった。それでも健は社員へ「父はい認症だ」と説し、面会を制限していた。
「くだらない。俺は創業者の息子だ。
広告
この会社を継ぐは、最初から俺しかいない」
健はテーブルを見回した。
「おたちの料を決めてきたのは誰だ。俺を追いせば、も取引先も黙っていないぞ」
社取締役のが資料を閉じた。
「主取引からは、疑惑を放置する、融資方針を見直すとの連絡を受けています。あなたの解職を妨げる向はありません」
健は昨の支の顔をいしたのか、返事が遅れた。
監査役が決議案を読みげる。
代表取締役からの解職。業務執権限の止。会社貸与品と印章の返却。第者調査委員会への全面協力。損害賠償請求及び刑事告訴の検討。
「議決権なら俺にもある」
「あなたの反対見を議事録へ残し、定款と会社法に従って採決します」
結果は賛成数だった。
秘が会社用スマートフォンと入館証を受け取るため、健の横へった。
「俺を誰だとっている」
「御厨健さんです」
さくらは席をたずに答えた。
「創業者の息子であることと、会社のおを自由に使えることは同じではありません」
「おが俺を追いしたのか」
「違います」
さくらはモニターに残る61本の送記録を見た。
「あなたをここから追いしたのは、のあなた自です」
健は入館証を机へ投げた。
その直、彼の私用スマートフォンが震えた。美穂からのメッセージだった。
『あなたの犯罪には巻き込まれません。婚について弁護士から連絡します』
添付された写真には、が空になった自宅の宝箱が写っていた。
広告
おすすめ作品
-
完結第16話
血染めの写真と三文字のSOS
夕方のコンビニの床に落ちていた一枚の写真。微笑む少女の横には、まだ乾ききっていない赤黒い生血がべっとりと付着していた。 裏返した瞬間、息が止まる。震える筆跡の住所と、指先の血で擦り付けられた『SOS』の三文字。 妻に捨てられ、八歳の息子と写真館を営む私には分かった。この血は付着して数分も経っていない――今すぐ行かなければ手遅れになる。 警察に通報し駆けつけた古い民家の階段下には、右足を骨折し倒れ伏す母親と、自らの手のひらを切り裂いた六歳の少女がいた。 「……だれ?」 母を庇い、血まみれの手で私を睨み据える少女の瞳が訴えていた、あまりに残酷な真相とは。親子関係|金銭問題2.4万字5 200 -
完結第20話
長女にだけ渡された鍵
父の四十九日。「お前が一番しっかりしている」と病床の父から金庫の鍵を託された長女の私は、弟と妹の前で鉄の扉を開けた。だが中にあった私の通帳は残高一万円で、二百八十万円あった預金は弟の名義で全額引き出されていた。問い詰める私に弟は「親父に頼まれた」と父の直筆の手紙を突きつけ、妹も父と交わした別の密約を叫び始める。そこへ男が現れ、父が実家を担保に借りた五百万円の借用書を突きつけてきた。裡切られた|兄弟姉妹|相続|金銭問題|修羅場3.0万字5 92 -
完結第25話
祖父が私に遺した最後の拒否権
亡くなった祖父の果園を三千二百万円で売却するため、東京で働く私は十年ぶりに実家へ呼び戻された。生活苦に喘ぐ父と妹の結婚資金のため、名義を持つ父は契約を急いでいたが、司法書士が出したのは「長孫である私の書面同意がなければ売却は無効」という祖父の遺言だった。早く終わらせようとペンを握った私は、ふと買い手企業がここを何にするつもりなのか尋ねた。山を削り大型トラックの夜間中継所にすると聞かされた瞬間、私は手元のペンを静かに机へと置いた。祖父母と孫|相続|親子関係|金銭問題3.7万字5 111 -
完結第19話
完璧な夫に給料を突き返した朝
毎月二十五日、夫は手取り四十五万円の給料を一円も引かずに私の口座へ振り込み、親戚の前で完璧な夫として称賛されている。だがその裏で、私は息子の塾代を払うために結婚五周年の指輪を買取店へ持ち込んでいた。固定費と夫のカード代だけで毎月赤字が続き、私の独身時代の貯金も底をついた。翌朝、いつも通り振り込まれた四十五万円の通知を見つめた私は、その全額をそのまま夫の口座へ送金し、スマートフォンの画面を伏せた。嫁姑|夫婦|金銭問題|修羅場2.9万字5 7822 -
完結第21話
優しい教室で震える息子
息子が突然学校に行けなくなり、担任は「いじめなどなくクラス全員に愛されている」と胸を張った。不審に思った私が息子のランドセルを調べると、底板の裏から三十七枚の給食費受領書が出てくる。我が家は困窮などしていないのに、三ヶ月間、生徒全員が日替わりで息子の昼食代を立て替えていた。私が学校へ確かめに行こうとした瞬間、息子は「言わないで」と叫んで床に泣き崩れ、その紙片を必死に胸へ抱え込んだ。怒り|裡の顔|親子関係|金銭問題3.2万字5 6057 -
完結第15話
五人の元彼と三万一千円
結婚式当日の朝、ホテルのフロントに差出人不明の現金書留が五通届いた。中身はすべて、三万一千四百八十円という奇妙な端数のご祝儀だった。面識のない私の歴代の元彼五人からだと気づき、私は血の気を引かせて金庫への保管を頼み込む。だが、不審に思った夫が私の手提げから抜き取ったのは、三週間前に私がその五人へ同額を送金した明細だった。親族紹介まであと十五分、夫は控え室の鍵を閉め、冷たい目で私を見下ろした。夫婦|裡の顔|金銭問題|修羅場2.2万字5 166 -
完結第18話
退職金と三百万円の借金
三十二年間勤めた会社を定年退職する日、人事に呼び止められた私は、一枚の紙を突き出された。それは私の名義と私印で作成された、三百万円の福祉貸付金の借用証書だった。返済が済むまで退職金は支払えないと告げられるが、私に借金の覚えなど一切ない。震える手で書類の日付を確認すると、そこには十一年前、夫が急逝して告別式を行っていた日の数字が並んでいた。私は退職の合意書へのサインを拒み、人事の机に手をついた。怒り|退職金|金銭問題|修羅場2.6万字5 603 -
完結第19話
レジ打ちの妻は恥ずかしい
結婚式まであと一か月。婚約者から突然、私の名前が印刷された『退職届』を差し出された。「うちの嫁がスーパーでレジ打ちなんて困る」と義母と決めたという。冗談だと笑おうとした私に、彼は真顔で「取引先に見られたら恥ずかしい」と言い放った。この三年間、一生懸命働く私の姿が好きだと言ってくれたのは嘘だったのかと問うと、彼は静かに言った。「恋愛と結婚は、違うんだよ」。私は差し出されたペンを机に押し返した。裡切られた|怒り|金銭問題|修羅場2.9万字5 578