"母の葬儀から戻ると、私の寝台はもうなかった" 第7話
森が守ろうとしているのは、単なる勤務表のき違いではない。
そしてが利用しているのは、女たちの若さだけでもなかった。
故郷にいる弟、病気の父、学を待つ妹、毎の仕送り。
女を黙らせるには、その背にいる族の暮らしを指で押さえればよかった。
はその仕組みを初めて、自分自の恐怖として理解した。
が次に確かめたのは、帳面にかれた賃と実際に女が受け取った額だった。勤務だけを比べても、は「記録の都」と言い逃れできる。ならば、記録された労働に対してがどこへ流れたのかを見なければならない。
文代は退職、同じ班の女たちから送を頼まれることがく、何かの与額を覚えていた。たちは元女へを送り、元に細や与袋が残っていれば貸してほしいと頼んだ。事を詳しくけば怖がられるため、《自分の勤務記録を確かめています》とだけ添えた。
1週で7から返事が来た。そのうち4は古い細を保管していた。自と芳、富美をわせると7分になる。
数字を並べてみると、しい矛盾が見つかった。
帳面では芳が退職に夜勤したことになっているが、そのは芳には支払われていない。富美も同じだった。の葬儀の残業分も与袋へ入っていない。
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方、千代たち入りの女には、正式な与袋そのものが渡されていなかった。
「じゃあ、は同じで度得してるの?」
文代が言った。「帳面では芳さんたちに払ったことにして、しい子には見習いだからって渡さない」
「そうかもしれない。でも、その帳面をまだ見てない」
は慎だった。疑っていることと、証できることは違う。森と同じように、自分に都のいい説だけを信じれば、最には数字で負けるとっていた。
そこでは千代に頼み、入りの女が受け取っている《預り控》を見せてもらった。毎週、堂代や用品代として額だけ渡され、その額が鉛で記されている。だが勤務も基本もかれていなかった。
「には送ってないの?」
「まだです。最初の2か分をまとめて送るって」
千代はそう答えたあと、し恥ずかしそうに続けた。「母からが来たんです。の募集員は、最初のから送できるって言ったのに、どうしたんだって」
はそのも借りた。
入りの女たちが黙っている理由も分かってきた。15歳や16歳でい県から来て、のにりいがいない。寝台も事も仕事もが用している以、「続きだから」と言われれば待つしかなかった。
自も1はそうだった。岐阜のからてきた、名古駅の波だけで怖くなり、迎えに来たの腕章を見てからした。
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寮の規則に疑問を持つ余裕などなく、与袋の計算が分からなくても「きなが違えるはずがない」とっていた。
そのが、数字を確かめない理由になっていた。
さらに3の元女から細が届き、たちの元には10分がそろった。辞めたあとも番号が残っていた者が6、期欠勤に勤務記録がついた者が2、のように休暇に働いたことになっている者が2。
つなら違いだった。
つなら偶然かもしれない。
になった、は初めて森の机へ戻る準備を始めた。
ただし、まだりなかった。
が最も簡単に使える言い訳は、「勤務表の数字はあくまで現の仮記録で、実際の与計算では修正している」というものだった。
それを崩すには、の内側にあるもうつの数字が必だった。
久子へもう度勤務表を見てほしいとは頼めなかった。弟の就職を握られている以、これ以巻き込めば、が森と同じことをすることになる。代わりには、自分たちがすでに持っているだけで何を証できるかを考えた。
転になったのは文代の夫、信夫の何気ない言だった。信夫は同じではなくくの染に勤めており、与計算の仕組みを聞いて「勤務表だけじゃなく、現には産量の記録もあるだろう」