"母の葬儀から戻ると、私の寝台はもうなかった" 第14話
川紡績ほどきくはなく、賃もしがったが、寮へ入らず文代と同じの空き部を借りることにした。
畳。
共同炊事。
のには廊まで湿った。
それでも戸には自の名がかれた札があった。
料になると、は必ず細を広げた。勤務数を数え、残業したを暦と照らしわせ、控除のが分からなければ事務員へ尋ねた。
最初は「細かい子だね」と笑われた。
も笑って答えた。
「ので、数え方を覚えたんです」
正男は、へ学した。
志乃のから通える県で、授業料の部はが送り、残りは正男自が休に働いて補うことになった。が全部をそうとすると、正男は《姉ちゃんは子の分もあるんだから、半分でいい》とにいてきた。
妹の子は、そのの端にきな字で《わたしもきくなったらはたらきます》といていた。
は笑いながら、その文だけは母のと緒に箱へしまった。
あの段ボール箱は、今も部の隅にある。
のへ放りされたと同じ箱だった。
けれど今は、誰かに捨てられた荷物を入れる箱ではなかった。
が自分で残すと決めたものをしまう箱になっていた。
昭354。
正男の入学式が終わったというが届いたの夕方、は料袋をけた。
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基本。
残業6。
控除された健康保険と部代。
つずつ指で確認した。
全部、自分が働いただった。
は与袋から正男の学費分を取り、封筒へ入れた。次に子の学用品の分をし取り分ける。以なら残りのほとんども故郷へ送っていただろう。
そのはを止めた。
財布には、しだけが残った。
は仕事帰りに商の靴へ入った。
母の葬儀から戻った朝に履いていた靴は、まだ捨てずに持っていた。底はく、踵は斜めにすり減り、のにはが入る。それでも弟の学費を考えると買い替えられなかった。
「通勤用ですか」
員に聞かれ、はうなずいた。
黒い革靴を何かしてもらい、そので番丈夫そうなものを履いた。し歩き、つま先を曲げ、踵を確かめる。
「きつくありませんか」
はをもう度踏んだ。
「丈夫です」
財布から自分のをした。
をると、の夕方のには帰りの若い女たちが何も歩いていた。寮へ戻る者もいれば、郵便局で故郷へ送する者もいる。皆、似たような作業着を着て、似たような与袋を持っていた。
も1までは、そののだった。
族へを送るために働き、会社がいた数字を疑ったことなどなかった。
けれど今は違う。
自分がいつ働いたのか。
何残業したのか。
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いくら受け取り、何を引かれたのか。
いつ辞めるのか。
どこで眠るのか。
それを決める権利まで、与袋と緒に会社へ預ける必はない。
数、千代からが届いた。
《今も細を取ってあります。久子さんも取っています。しく来た子にも、捨てないほうがいいと言いました》
は読み終えると、そのを母のの隣へしまった。
母がきていたころ、は毎、与袋をけると真っ先に送額を考えた。
母がんだあと、初めてそのにかれている自分のを見た。
そして、そこに自分が働いていない3を見つけた。
あの、のには段ボール箱が置かれ、階の窓にはらない女がっていた。
「あなたの寝台は、もう別の子に渡しました」
あの言葉を、はい忘れなかった。
ただしいすたびに胸が痛んだのは、最初の数だけだった。
やがてにとってあの朝は、居所を奪われたではなくなった。
自分の名で働くことを、自分で守り始めたになった。
はしい靴を履いて仕事へ向かった。
踵はまだく、歩くたびにさな音がした。
それでも元には、もう穴はいていなかった。
そしてそのの勤務表には、が働いただけが、の名で記されていた。