"昭和38年、つなぐなと言われた救急電話" 第5話
救急話の横でつながった本
澄子は接続控えを閉じなかった。
1112。
午1151分。
《信濃建奥沢事事務所 松本 信濃建本社》
通話、分。
担当欄には、原蔵の印があった。
澄子は刻をので並べた。
1143分。
藤沢医師から最初の救急接続依頼。
原が拒否。
1149分。
度目。
拒否。
その分。
1151分。
事会社から松本の本社へは、線がつながっている。
「故障なんかしてない……」
わず声が漏れた。
原は報告で、線の調を理由にしている。
だが同じ帯に会社の話は分成していた。
しかも接続したのは原本。
澄子は鉛を握った。
控えをき写そうとした、背で子がいた。
慌てて帳面を閉じる。
振り向く。
妙子だった。
「何してるの」
「接続記録の理」
「それ、あなたの仕事じゃないでしょ」
「主任に頼まれたの」
嘘だった。
妙子はしばらく澄子を見ていた。
そしてさな声で言った。
「澄子」
「何?」
「もうやめなよ」
「何を」
「分かってるでしょう」
「私だけ悪いことにされようとしてる」
妙子の唇が震えた。
「だからって何ができるの?」
「本当のことを言う」
「誰に?」
澄子は答えられなかった。
妙子はもっと声を落とした。
「主任だけじゃないよ」
澄子が見る。
「どういう?」
妙子は何も言わなかった。
そのまま自分の席へ戻った。
昼休み。
澄子は帳面の該当箇所をへき写した。
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付。
発信元。
接続先。
。
担当者。
原本を持ちせばすぐに気づかれる。
だから文字だけを残す。
午。
原はした。
澄子は倉庫に保管されている先分の類を調べた。
通話関係の帳票。
回線点検表。
勤務配置。
そこでさらに枚見つけた。
事故翌に作られた「線障害確認票」。
《11122340分より010分まで松本方面線通》
澄子は息を止めた。
らかな嘘だった。
1151分から分、同じ方向へ通話している。
さらに、そのに鉛で度いて消したような跡がある。
を斜めからへ当てる。
《23・51 信》
く読めた。
誰かが最初は事実をき、その消した。
澄子はもう枚の控えを探した。
そこで背から声がした。
「宮坂さん」
驚いて振り返る。
若い事務員だった。
「お客様です」
「私に?」
表へる。
歳ほどの女性が、呂敷包みを胸に抱えてっていた。
澄子には見覚えがなかった。
「宮坂澄子さんですか」
「はい」
女性はくをげた。
「林志乃と申します」
澄子の呼吸が止まった。
勝雄の母親。
「しだけ、お話できますか」
は交換所かられたさな茶へ入った。
志乃は終始、両を膝ので握っていた。
「藤沢先から、お名を聞きました」
「先から?」
「あなたが話を受けていたと」
澄子は俯いた。
「申し訳ありません」
「どうして謝るんですか」
「私がつなげなかったから」
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「でも先は、あなたのせいじゃないって」
「それでも私はそこにいました」
志乃は何も言わなかった。
しばらくして呂敷から封筒をした。
「これを」
「何ですか」
「では言えないから、きました」
澄子は受け取った。
「私は何が本当なのか分からないんです」
志乃の声が震えた。
「会社のは落だと言います。聞もそういてある。でも先は、夜のうちに勝雄が診療所へ来たと言う」
「はい」
「息子は……すぐんだんじゃなかったんですよね」
澄子は答えられない。
志乃は目を伏せた。
「りたいんです」
「何をですか」
「どうして助からなかったのか」
その夜。
に帰った澄子は封筒をいた。
便箋に、丁寧な文字が並んでいた。
《宮坂様》
《勝雄は父親がくなってから、自分が働くと言ってへきませんでした。まだです。本当は学へきたかったといます》
《私は事故のことを何も教えてもらえていません》
《つだけりたいのです》
次ので、澄子のが止まった。
《息子は最まできようとしていましたか。誰も本当のことを教えてくれないのです》
澄子は便箋を閉じた。
泣かなかった。
翌。
再び交換所の記録庫へ入った。
信濃建の話がつながった先を詳しく調べる。
松本本社代表ではない。
直接指定された内線の名が、通話票の隅に残っていた。
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《務部 古田》
澄子はさらに、そのの本社側から奥沢町へ折り返された通話を探した。
午003分。
本あった。
発信、信濃建松本本社。
接続先――奥沢町役建設課宅。
そして担当欄。
原蔵。
病院にも。
警察にも。
話はつながらなかった。
しかし事故に関わる会社と、町の建設担当者だけは、がまだ診療所で息をしていたに連絡を取りっていた。
その。
記録庫の扉がいた。
原がっていた。
には、枚の報告があった。
「探してるのは、これか?」
澄子はけなかった。
原はを机へ置いた。
《救急接続遅延事故 担当者処分案》
原因欄。
《交換宮坂澄子の判断誤り》
そのにはすでに、町の部局へ提するための印が押されていた。
原は言った。
「の朝、これが発送される」
澄子はを見つめた。
「私がやったことになるんですか」
「あの夜、コードを差さなかったのはおだ」
「主任が止めた」
「証はいるか?」
その瞬、澄子は理解した。
自分が真相をらかにするに。
向こうはすでに、事件の責任者を決めていた。
それは事会社でも。
原敏夫でも。
主任でもなかった。
自分だった。
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