"昭和38年、つなぐなと言われた救急電話" 第7話
午分
浦の証言を裏づける物が必だった。
澄子が次に探したのは、発破に使われる資材の記録だった。
もちろん部者の自分が会社の帳簿を見られるはずはない。
がかりをくれたのは弟の浩だった。
夕。
澄子がノートを広げていると、浩が横から覗いた。
「姉ちゃん、まだやってるの?」
「見ないで」
「勝雄さんのことでしょ」
澄子が顔をげる。
「学で何か聞いた?」
「勝雄さんの妹、しばらく休んでる」
「そう……」
浩は座った。
「俺の友達の兄ちゃんもあの現にいたよ」
「誰?」
「本さん。薬庫の伝いしてる」
翌。
浩の紹介で、澄子は歳の本忠男に会った。
所は町れの神社。
忠男は最初、震えていた。
「俺、直接見たわけじゃないです」
「それでいいの」
「発破の記録をいただけです」
「いつ?」
「本当は分」
澄子は息を止めた。
「記録には?」
「翌朝、分に直せって言われました」
「誰に?」
「所です」
「原敏夫さんは?」
「横にいました」
「何か言った?」
忠男は首を横に振った。
「ずっと黙ってました」
「元の記録は?」
「捨てたといます」
澄子の肩が落ちた。
だが忠男は続けた。
「ただ……」
「何?」
「発破材料の払いし帳は別です」
「そこにもが?」
「倉庫からした刻があります。夜分」
澄子は顔をげた。
会社の事故報告では、発破は夕方に終わっていたことになっている。
広告
なら午分に発破用資材を持ちす理由がない。
「帳簿はどこ?」
「現事務所」
「き換えられる?」
忠男は苦く笑った。
「もうき換えてるかもしれません」
それでも澄子は記録した。
《薬払いし 2220分》
《発破 2254分》
《事故直 勝雄識あり》
《会社公式説 夜発破なし》
つずつ刻が埋まっていく。
そのの夕方。
林のまでった。
志乃へ会うためだった。
玄関をけたのは歳の女。
勝雄の妹、美代だった。
「母はまだ仕事です」
「そう。じゃあまた来るね」
帰ろうとした、美代が言った。
「お兄ちゃんのこと、調べてるですか」
澄子は振り返った。
「しだけ」
「お兄ちゃん、悪いことしたんですか」
「してないよ」
女はしたような、それでも納得できない顔をした。
「会社のが来た、お母さんに言ったんです」
「何を?」
「勝に危ないところへ入ったから事故になったって」
澄子のがたくなった。
事故の責任まで、勝雄に押しつけようとしている。
その夜。
志乃が交換所の帰りを待っていた。
「娘から聞きました」
「勝に訪ねてすみません」
「違うんです」
志乃は鞄から、さな封筒をした。
「勝雄の料袋に入っていました」
には切れがあった。
事で配られた作業予定表。
1112。
《発破作業 午》
印刷された文字。
その横。
鉛で勝雄自がいたとわれるメモ。
《なら》
さらに。
《主任 夜やると言う》
「これ……」
「息子は何でもにく癖があったんです」
志乃は言った。
「忘れっぽいからって」
澄子はを見つめた。
夜発破が突然決められたことを示す、被害者自のメモ。
さな文字。
たった。
それでも、くなったが残した最初の証言だった。
広告
おすすめ作品
-
完結第21話
日本一情の深い父の裏の顔
妹がサービスエリアで姿を消して5年。全国を巡り「日本一情の深い父親」と称賛される父から、私は古いワゴン車を譲り受けた。だが車内の清掃中、妹の指定席だったシートベルトが事故の衝撃で「4センチ」伸びきっているのを発見する。さらに奥底から見つかったのは、刃物で切断された妹の防犯ブザーだった。父に問いただすと、かつてない冷酷な声で「今すぐ車を処分しろ」と脅され――。私は父の狂気と真実を暴くため、ある決断を下す。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明3.1万字5 75 -
完結第22話
側溝の底のGPS
六年前に娘を事故で亡くし、近所から「不注意な母親」と後ろ指を指されながら暮らしてきた私。ある朝、向かいの名士宅との境界にある側溝の泥から、泥まみれの「娘の見守りGPS」を掘り出した。壊れた端末のログを開くと、六年間、豪雨の深夜になるたび、向かいの家のWi-Fiと通信を繰り返していた。問い詰めた夫が無言で開けた物置には、壁一面に貼られた隣家の行動記録と、五年間密かに改造されていた配管図面があった。ミステリー|因果応報|裡切られた|真相3.3万字5 223 -
完結第11話
九時三十四分の地下鉄、消えた暴行犯
午前九時三十四分、地下鉄の車内で若い男が突如狂乱し、中年客の顔面を骨が軋むほど殴打した。床一面に飛び散る鮮血。だが、隣に座る同じ社章をつけた上司は、ただ口をあわあわと震わせ「腰を抜かして」座り込むだけだった。乗客たちと男を取り押さえ、駅員にすべてを通報した俺。しかし翌日、警察の発表も新聞の三面記事も、この凄惨な事件を「最初から存在しなかった」かのように完全に黙殺していた。なぜあの凄惨な暴力は一行も報道されず、駅の防犯カメラ映像すら消去されたのか。数年後、俺はある大手企業の役員名簿の中に、あの朝、冷たいホームの柱にすがってガタガタと震えていた「あの上司」の顔写真を見つけ、息を呑んだ――。ミステリー|真実1.6万字5 101 -
完結第19話
三十二人目の卒業写真
教職を退いた夜、三十年前に送り出した最初の教え子たちが開いてくれた送別会で、私は三十一人分の感謝の手紙を受け取った。だが自宅で数え直すと、名簿にない三十二通目の白い封筒が混ざっていた。便箋には「全員が卒業しました。私一人を残して」とだけ記されていた。翌日、私が困惑して生徒たちに当時の記憶を尋ねると、誰もが存在を否定し、深夜の受話器の向こうから「あの子のこと、墓場まで隠し通すつもりですか」昭和|ミステリー|因果応報|真相2.8万字5 176 -
完結第21話
十年前に死んでいた夫
病に倒れた夫を十三年間看取り、質素な火葬を終えた私は、医療記録の精算のため大久保総合病院の窓口へ向かった。だが職員から告げられたのは、データベースに夫の名はなく、提示した診察券は十年前に死亡した二十代の別人の番号だという宣告だった。半乱心で戻ったアパートを捜索するも、夫名義の保険証も免許証も通帳すら一枚も見当たらない。十三年間私の隣で息をしていた男の痕跡が、この世のどこにも存在しない現実に立ち尽くした。ミステリー|夫婦|介護|修羅場3.1万字5 2982 -
完結第12話
左足だけの靴箱
隣室の吉岡さんが部屋で亡くなった。付き合いのなかった老人の遺品整理に立ち会った彩香は、業者から「故人の遺言」として段ボール箱を手渡される。中に入っていたのは、彩香が過去5年間に自宅の玄関から消えたはずの「左足の靴」12足。そして、それと対になる新品の右足の靴。靴底をめくると、そこには夫が「深夜残業」と偽っていた日付のタクシー領収書が隠されていた。妻が知ることになる、5年前の事故と夫の病的な贖罪の真相とは。ミステリー|夫婦1.8万字5 47 -
完結第19話
全員が揃えた同じ嘘
小学五年の秋、担任の女性教諭が突然退職し、学校は精神の病気だと説明した。だがその日の放課後、私を含めたクラス二十三人の児童は、それぞれの家庭で「先生は午後三時に帰りました」と全く同じ嘘を親に答えた。口裏を合わせた覚えはない。半年後、唯一何も言わずに転校していった無口な少女が、私の机の引き出しに一枚のメモを残した。そこには『先生は三時のとき、まだ地下室にいました』と記されていた。ミステリー|裡の顔|真相|行方不明2.8万字5 95 -
完結第11話
亡き義母の口座を洗う女
3年前に7年間の壮絶な介護の末に他界し、この手で骨壺に納めたはずの義母。だが解約し忘れていた古い通帳を繰り越すと、死後も毎月「生前給与」が振り込まれ、毎週水曜の深夜に即座に引き出されていた。深夜のコンビニで張り込んだ私が見たのは、義母の服を着て義母と全く同じ体の癖を持つ見知らぬ女。死者は生きているのか。真実を追う私は、隣で眠る夫が隠していた、狂気と冷酷に満ちた「生前名義ビジネス」の底なし沼へと引きずり込まれていく。ミステリー|嫁姑|夫婦1.6万字5 51