"成人式に消えた母と十三着目の振袖" 第3話
盗まれていなかった960万円
紗季はの相談記録から乃に関する過の苦を抽した。ただし母の事件と利害関係があることを司へ申告し、自分では相談者の個報を見ないことにした。別の担当者が氏名を伏せて契約期と額だけを理し、部弁護士が原本を照する体制を作った。
2011から2014まで、乃で振袖を購入していないのに信販会社から請求を受けたという相談が11件あった。くは転居を繰り返していた若い女性で、督促状が届いても相談先が分からず、額ずつ返済していた。には、自分が契約したのだろうと支援者から決めつけられ、信用報に傷がついたもいた。
請求額は同じではなかった。勤務先がある女性には150万円、活保護を受ける女性には80万円と、審査が通りそうな限へ細かく調されている。申込には施設職員や元雇用主の話番号が無断で保証連絡先としてかれ、信販会社は度話がつながっただけで本確認を終えていた。
相談を受けた窓にも問題があった。当の記録には《成式で気分が揚し、契約を忘れた能性》という職員メモが残り、若い女性の訴えより販売の説が優先されている。紗季は自分が働く制度のにも、乃をく止められなかった原因があったことをった。
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匿名のにあった《13目》は、架空ローンへ名義を使われた被害者の順番だと考えられた。ネガを現像すると、振袖姿の若い女性がい背景のにつ写真が37枚写っていた。同じの振袖、同じ帯、同じ髪飾りをにつけ、顔だけが違う。販売証用の写真を作るため、1着を何度も着回していたのだろう。
そのに瀬葵がいた。笑ってはいるが、袖からた首に濃い痣があり、隣の写真では俊夫が肩を押さえてち位置を直している。最の2枚には撮を止めようとする奈津子と、カメラをろした真壁の姿が偶然写り込んでいた。
警察が当のデータを復元すると、960万円は奈津子の座へ入っていないことが分かった。成式の1かに、予約を取り消した32へ返すため、乃の返専用座へ集められていただった。奈津子は113午748分、返処理を括予約している。
しかし午826分、俊夫の管理者権限で予約は取り消され、全額がライフサポートへ移された。奈津子の職員番号による操作はその43分で、すでに残が空になった座を閲覧しただけだった。警察発表の《奈津子が960万円を送した》という説は、操作の順序を入れ替えた乃の社内資料に基づいていた。
顧客データ32件を削除したのも奈津子ではない。
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削除端末は俊夫の専用パソコンで、ログイン刻には奈津子が着付けで10以の客に囲まれていた。千鶴は当、警察へ端末が共だったと説していたが、パスワードをるのは夫婦だけだったと元従業員が証言した。
母は960万円を盗んでいなかった。むしろ返しようとし、それを俊夫に止められたのである。紗季は10胸に残っていたさがしだけくのをじたが、母が桐箱を持って消えた事実までは変わらない。真壁や葵と逃げた理由も、娘へ直接連絡しなかった理由も残っていた。
ライフサポートの帳簿では、960万円は《成式催事運営費》として処理され、その翌に3つの座へ分けられていた。400万円は俊夫の宅ローン返済、260万円は千鶴名義の定期預、残りは乃の借入返済へ使われている。予約客への弁済には円も回っていなかった。
では千鶴は何を原資に弁済したのか。調査すると、乃は奈津子の失踪から6、《従業員による横領損害》として保険1200万円を受け取っていた。被害届と社内報告を作ったのは俊夫で、千鶴は代表者として、姉が計画にを盗んだと署名していた。
保険から予約客へ返されたのは約700万円だけだった。残額はの運転資と千鶴夫婦の活費へ入り、紗季の護学の学費もそこから支払われていた。
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紗季は、自分を助けてくれたと信じたが、母を犯罪者へ仕てたことで得られたものだとった。
千鶴を問い詰めるに、紗季は学費の記録を弁護士へ渡した。のまま返すれば、相は姪が自発に利益を返したと利用するかもしれない。どのを誰へ返すべきか、保険会社と被害者を含めて決める必があった。
そのの夜、乃の元経理担当・桑原から話が来た。10、奈津子が消えたの午8すぎ、俊夫から《姉がを持って逃げるので、保険会社へす類を用しろ》と命じられたという。奈津子が裏をる1くだった。
俊夫たちは、奈津子が消えることを事にっていた。
そして桑原は、もうつの事実を話した。奈津子が抱えていた桐箱は、の裏で真壁へ渡されたのではない。箱をへ積んだ直、奈津子は1で内へ戻り、千鶴と20分く話していた。
最に母と2きりで会ったのは、噂された男ではなく、紗季を10育てた叔母だった。
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