"二十六年目の告白" 第7話
狂気のパズルが嵌まる
「先、類をお願いします」 私の図に、弁護士が鞄から枚の公な鑑定を取りし、テーブルの央に滑らせた。
「これは、のおよびに、当院のである産婦科医院にて発された、児の血液型検査結果の原本です」 弁護士の淡々とした声が、静まり返った病に響く。
「夫である佐藤浩司氏の血液型はA型。妻であるゆみさんの血液型はO型です。医学に、こののにまれる子の血液型は、A型かO型以にはあり得ません」
美の弁護士が目を見き、テーブルのの面を凝した。 「……そして、美さん。あなたの母子帳に記載された血液型は、B型ですね」
「な……何よ、それがどうしたっていうのよ!?」 美が声を荒らげる。 「血液型の話なんてどうでもいいでしょ! 浩司さんが病院ですり替えたって言ってるのよ! 名札を替えたんだから、誠君が私の子で、達也があの女の子に決まってるじゃない!」
「いいえ、決まっていません」 私は封筒から、褪せた枚のへその緒の箱を取りし、並べた。 「浩司さんは確かに、あの嵐の夜、児で名札をすり替えました。自分のの子を正妻に育てさせ、正妻の子をに虐待させるという、最の企みのために」
私は浩司の、血った絶望の目を見据えた。
広告
「でもね、浩司さん。あなたが部をてった直、私は児に入り、すり替えられた名札をもう度、元の正しいコットに戻したのよ」
「……は?」 美のから、抜けな音が漏れた。
「誠の血液型はO型です。私の血を引いた、私と浩司さんの実の子よ」 私は達也を指し示した。 「そして、達也さんの血液型はB型。……A型の浩司さんと、B型のあなたとのにまれた、紛れもない『あなた自の実の息子』よ」
カサリ、と類が落ちる音がした。 美の若い弁護士が、額の汗を拭いながら元の資料と照し、震える声で呟いた。 「……本当だ。O型の母親からB型の子がまれることは、遺伝学、絶対にあり得ない。……さん、あなたが育ててきた達也さんこそが、あなたの実子です」
「嘘……嘘よ……!」 美の顔から、すべてのが抜け落ちた。気に変した肌、見かれた瞳孔。 「嘘よぉぉぉっ! そんなのデタラメよ! 私が産んだのは、優秀で、派な誠君のはずよ! なんで……なんであんたみたいな来損ないが、私の腹からまれるわけぇぇぇっ!?」
狂乱して叫ぶ美のに、達也が歩踏みした。 その顔には、りも憎しみもなかった。ただ、底れない軽蔑と、完全な諦だけが宿っていた。
「……美さん。僕は子どもの頃、ずっと議にっていました」 達也は静かに言った。 「なぜ、あなたは僕をこれほどまでに憎むのか。
広告
なぜ、僕が『お母さん』と呼ぶたびに、汚い虫を見るような目で殴りつけるのか。……僕がゆみさんの子だから憎かったんじゃない。あなた自の醜いエゴと嫉妬が、僕をサンドバッグにしていただけだったんですね」
「た……達也……違うのよ、私は騙されていたの! 浩司に騙されて——」 縋り付こうと伸ばされた美のを、達也は無慈に払い落とした。
「学の、僕が度のをして倒れたを覚えていますか?」 達也の声が、氷の刃となって美の胸を抉る。 「あなたは僕の枕元に百円玉を枚だけ置いて、『浩司さんと温泉にくから、勝になない程度に何かべなさい』と言って鍵を閉めててきました。僕を助けてくれたのは、異変に気づいたアパートのさんでした」
達也は々と息を吐いた。 「あの、僕ので『母親』というはにました。……あなたが僕の本当の親だったなんて、虫唾がる。度と、僕のに現れないでください」
「あ……ああ……あああっ!」 美は崩れ落ちるようにに膝をつき、両でを抱えて絶叫した。 自分がもの、正妻への復讐のために踏みにじり、罵倒し、を注がなかった子どもが、自らのたったの血肉だった。そして、憎い正妻の元で何自由なくされて育った男こそが、正妻の誇りき実子だった——。
すべてが、裏返しの獄。自らが仕掛けた悪の罠に、自らので息を放り込み、自らので破壊し尽くしていたのだ。
広告
おすすめ作品
-
完結第26話
特上寿司と、消えた妻の半年
3月31日22時、激務を終えて帰宅した私の席にあったのは、冷え切った白米一杯だけだった。目の前で1万8900円の特上寿司を頬張る夫と義母は、「反省したらおかずをあげる」と大笑いする。家計の大半を私が支えているにもかかわらず、9ヶ月間も「罰」として食事を奪われ、夫は横で嘲笑っていた。だが二人は知らない。私が半年かけて集めた出前明細の履歴と、義母が隠し持っていた一枚の申告書の存在を。「じゃあ、外で食べてきます」――二度と振り返らずにドアを閉めた夜、経理の私が仕掛けた冷徹な清算が幕を開ける。嫁姑|夫婦4.0万字5 449 -
完結第34話
妻の葬儀の夜、義母が外した指輪と娘の写真
妻・美保の葬儀が終わった夜、修二の結婚指輪を外したのは、亡き妻の母・麗子だった。「もう美保に隠す必要はないでしょう」と唇を寄せたその瞬間、娘・咲から1枚の写真が届く。そこには半年前の病院で抱き合う修二と麗子、そしてガラス越しに2人を見つめる病衣姿の美保が写っていた。 闘病中の妻を支える献身的な夫を演じながら、修二はいつしか自分の弱さを理解してくれる義母へ逃げ込み、越えてはならない境界を越えていた。しかも麗子は「美保も知っていた」「私がいなくなったら修二さんを1人にしないでと頼まれた」と主張し、その証拠となる録音まであるという。 だが翌朝、咲が告げたのは「お母さんの声を最後まで聞いて」という一言。 亡き妻が本当に残した言葉を前に、2人が都合よく信じてきた“許し”が崩れ始める――。夫婦|修羅場5.1万字5 612 -
完結第16話
四十九日の追放、母の隠し遺言
「十年世話しただけの妹に、実家の取り分はないわ」 母の四十九日、喪服の兄夫婦は親族の前で澄子を指差し、台所の冷えた板の間へ追いやった。信金を辞め10年間、720万円の私財を投じて母を看取った澄子に、兄は「今週中に出て行け」と冷酷に通告する。 母のキャッシュカードは7年前から兄が独占し、消えた年金は1240万円。 家財すべてが二束三文で業者に売り払われようとする中、母が50年愛用した古い足踏みミシンの奥底から、厳重に隠された「ある物」が滑り落ちた。 「その言葉、そっくりそのままお返しします」 あの日からちょうど49日後、審判の幕が上がる――。兄弟姉妹|修羅場2.3万字5 434 -
完結第27話
妻を追い出した翌朝、7枚のブラックカードが止まった
結婚3年目の夜、美桜が帰宅すると、夫・達也は若い愛人と義両親を囲み、離婚届を突きつけてきた。「無能で地味な女」「1円も稼げない寄生虫」と嘲られ、慰謝料もなく豪邸から追い出される。 だが4人は知らなかった。美桜の正体は、世界経済を動かす巨大グループの総帥。倒産寸前だった達也の会社を救い、資金も仕事も与え、彼を“天才社長”に見せていたのは全て美桜だった。 さらに豪邸も別荘も、7枚のブラックカードも、達也自身の資産ではなく美桜の法人名義。 離婚届が受理された瞬間、美桜は静かに全カードを停止し、豪邸の退去手続きと会社への特別監査を開始する。 勝ち誇っていた一家がまだ知らない、本当の“無一文”への転落が始まろうとしていた――。修羅場|熟年離婚4.0万字5 285 -
完結第16話
血染めの写真と三文字のSOS
夕方のコンビニの床に落ちていた一枚の写真。微笑む少女の横には、まだ乾ききっていない赤黒い生血がべっとりと付着していた。 裏返した瞬間、息が止まる。震える筆跡の住所と、指先の血で擦り付けられた『SOS』の三文字。 妻に捨てられ、八歳の息子と写真館を営む私には分かった。この血は付着して数分も経っていない――今すぐ行かなければ手遅れになる。 警察に通報し駆けつけた古い民家の階段下には、右足を骨折し倒れ伏す母親と、自らの手のひらを切り裂いた六歳の少女がいた。 「……だれ?」 母を庇い、血まみれの手で私を睨み据える少女の瞳が訴えていた、あまりに残酷な真相とは。親子関係|金銭問題2.4万字5 200 -
完結第15話
全盲の義母が言い当てた味噌汁の色
「お味噌、白味噌に変えたでしょう?」。11年前の事故で全盲になったはずの義母・かず子が、漆塗りの椀を抱えて微笑んだ。亡き実母への後悔から、365日欠かさず介護と手料理を捧げてきた嫁の私。だが翌朝、ゴミ袋の底から現れたのは、手つかずのまま無残に捨てられた私の料理と、1万8千円の銀座高級寿司やフレンチのデリバリーレシート30枚だった。夫は「お前の味付けが悪い」と冷笑し取り合わない。孤立無援の中、弁護士の助言を得た私はある罠を仕掛ける。そして勝手口の前で義母が放った「ある一言」で、11年間の嘘が音を立てて崩れ去る――。嫁姑|真相2.3万字5 3039 -
完結第22話
夜勤の救急外来に運ばれた夫と義姉
深夜2時、救急外来で夜勤中の看護師・佐藤み咲のもとへ、交通事故で重傷を負った男女2人が搬送されてきた。シーツの下にいたのは、夫・拓也と義姉・麗子。しかも2人は、決して「姉弟愛」では説明できない姿で倒れていた。 み咲は5年間、看護師という仕事を見下す夫と、「子供も産めない」と侮辱する麗子、その2人を庇い続ける義母・里子に耐えてきた。 それでも彼女は感情を捨て、看護師として2人の命を救うことを選ぶ。 だが、惨状を目にした義母まで「全部あなたのせい」とみ咲を罵倒した瞬間、最後の迷いは消えた。 何年も残してきた暴言の記録と証拠を武器に、奪われ続けた人生を取り戻す反撃が静かに始まる――。夫婦|修羅場|不倫3.3万字5 2860