"七年後、屋上で見つかった妻の秘密" 第9話
当たりはありませんか」
「先ほど刑事さんから伺って、変驚いております。ですが、私はあのタンクには切触れておりません。1990に漏れを起こして以来、蓋は溶接で塞がれ、誰もづかない所でしたから」
完璧な受け答えだった。揺の破片すら見当たらない。
1993412のアリバイを問われても、シゲルは滞りなく答えた。毎朝の敷内清掃、午のゴミ集積所のネット掛け、午の植栽剪定。提された当の管理誌には、几帳面な文字で業務内容が刻みで記されており、そのに特別な異常があった痕跡は残されていなかった。
「実に派な管理誌だ」順は誌を閉じ、シゲルの顔を覗き込んだ。「だが、あなたのの誌には、ずいぶんと解な空があるようだ」
順が元のファイルをめくった瞬、シゲルの眉が、ほんのわずかにピクリといた。
県警の鑑識と照会班が、シゲルの戸籍謄本と民票の履歴を徹底に洗っていたのだ。
現の氏名は「佐藤シゲル」。本籍は鹿児島。しかし、彼がサングリーンの管理に就任した1986よりの記録を遡ると、福岡県州倉区の戸籍に、奇妙な改名の記録が残されていた。
1987、福岡庭裁判所倉支部において改名許の審判。
旧名は「佐藤タカシ」。
改名の事由欄には『姓名による社会活の著しい支障』とだけ記されていた。
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続き自体は法であり、法な瑕疵はない。しかし、、父母の氏名、本籍の移履歴を照すると、この「タカシ」という男の周辺に、決して偶然とは片付けられない穏な事実が横たわっていた。
「州代、あなたは倉の造アパート『若葉荘』の管理をしていましたね」
順の言葉に、シゲルの唇がく結ばれた。
「そのアパートで、198510、の若い女性が失踪しています。桑原裕子さん、当歳。元の縫製に勤めていた女性です。彼女はある朝勤のために部をたまま、忽然と姿を消した。事件からヶ、あなたはアパートの管理を辞め、名をシゲルと改め、鹿児島へ移りんでいる」
取調の空気が、張り詰めた氷のように凍りついた。
「シゲルさん。あなたがいた所で女性が消え、あなたが移りんだ所で、また別の女性が消えた。そしてとも、あなたが管理していた建物のだ。……これを単なる偶然と呼べるといますか?」
シゲルはゆっくりと目を細め、静かに息を吐きした。
「州の件はじげております。警察の聞き込みも受けました。しかし、あの事件で私が疑われたことは度もありません。改名したのも、昔の名に良くない因縁をじていたからに過ぎません。……刑事さん、憶測だけでを犯罪者扱いするのはおやめいただきたい」
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声はく、平然としていた。
逮捕状を請求するには、状況証拠があまりにもかった。つの事件を結びつける確たる物証はなく、改名自体は何ら罪にならない。
そのの取り調べは、タイムリミットを迎えて終した。
だが、捜査本部へ戻った順の元に、福岡県警から急送された冊の捜査ファイルが届いた。1985の桑原裕子失踪事件の調。その黄ばんだ類の束のに、順の目を釘付けにする枚の契約があった。
若葉荘の内装補修事を請け負っていた務の名。
『吉永務 代表 吉永郎』
州のアパートと、鹿児島のマンション。
つの建物の歴史の結び目に、まったく同じの男の名が刻まれていた。
翌朝、順と啓太のの刑事は、サングリーンの305号へと向かった。
呼び鈴を幾度鳴らしても返事はなかった。管理組の理事ち会いのもとでドアをけさせると、部のはもぬけの殻だった。台所には昨夜の残り物が放置され、タンスの引きしが乱雑にけ放たれていた。
吉永郎は、逃していた。
「配を急げ! 臓に持病がある男だ、くへはけないはずだ!」
順の読み通り、吉永郎の柄は、わずかに確保された。鹿児島央駅くの総病院の循環器内科。激しい悸と呼吸困難を訴えて救急来に駆け込んでいたところを、捜査員に発見されたのだ。
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