"白米だけの夕飯を出されたので、家を出ました" 第8話
義母が隠していたつの数字
。
をるまで残りか半となった頃、芳の方から私へ珍しく頼み事をしてきた。
「麻子さん、確定申告のやり方を教えて」
私は洗濯物を畳むを止めた。
「確定申告?」
「は税理士さんに頼んだんだけど、かったのよ。うちには経理がいるんだから、今はあなたがやって」
お願いというより命令だった。
さらに芳は声を落とした。
「このこと、公平には言わないでね。あの子、余計な配するから」
関係なら、なぜ秘密にする必があるのか。
気になった。
ただ、私はもうをる準備をしている。
余計な争いは避けたかった。
「入力方法だけなら」
ノートパソコンをき、国税庁の申告作成画面を表示した。
芳は封筒から類をす。
の源泉徴収票。
医療費。
保険関係。
そこまでは普通だった。
そして最に、産関係の類がてきた。
私は瞬、指を止めた。
芳はになった。
「それも入れなきゃいけないって、税理士さんに言われたの。あんたは入力する所だけ教えてくれればいいから」
私は内容を問い詰めなかった。
ただ数字を見た。
賃貸収入。
額万円。
で万円。
そして実際の賃貸始期。
。
私は芳の顔を見た。
芳は画面だけを見ている。
。
それは芳が私たちのへ来て、まだ半も経っていない期だった。
広告
初めに私が、
「そろそろご自宅へ戻りませんか」
と聞いた。
芳は言った。
「今さら暮らしなんて無理」
「夜が怖い」
でも、そのすでに自宅には別のがんでいたのだ。
帰れなかったのではない。
帰る所を自分で貸していた。
さらに類の束には、産管理会社との契約の控えもあった。
契約。
。
私は息を呑んだ。
芳が私たちのマンションへ引っ越してきたのは。
つまり同居が始まる週もから、自宅を貸す準備を始めていたことになる。
「半だけ」
そう言ってきたには、すでに帰るつもりなどなかった能性がい。
仏壇まで運んできた理由もつながる。
半に戻るなら、わざわざい仏壇まで移す必はない。
を貸すから。
だから先に仏壇も運びした。
私は何も言わなかった。
芳との約束通り、公平にも言わなかった。
申告を印刷する。
芳は署名した。
「助かったわ」
「はい」
「公平には絶対言わないでね」
「分かりました」
芳が客へ戻った、私は閉じたノートパソコンへを置いたままけなかった。
の来事が別のに変わっていく。
活費を円も入れず、
「だけでは細い」
と言っていた。
けれど以に万円の賃収入がある。
暮らしは怖いと言った。
しかし帰れないように、自分でを貸した。
公平の側にいたい。
それ自体は悪いことではない。
正直に相談してくれればよかった。
でも芳は、
「半だけ」
という嘘を使った。
私は、自分の半だけは嘘にしたくなかった。
。
必ずる。
。
しい部の契約へ署名した、私はもう迷っていなかった。
芳が守らなかった「半」を、私は自分のために最まで守る。
広告
おすすめ作品
-
完結第26話
特上寿司と、消えた妻の半年
3月31日22時、激務を終えて帰宅した私の席にあったのは、冷え切った白米一杯だけだった。目の前で1万8900円の特上寿司を頬張る夫と義母は、「反省したらおかずをあげる」と大笑いする。家計の大半を私が支えているにもかかわらず、9ヶ月間も「罰」として食事を奪われ、夫は横で嘲笑っていた。だが二人は知らない。私が半年かけて集めた出前明細の履歴と、義母が隠し持っていた一枚の申告書の存在を。「じゃあ、外で食べてきます」――二度と振り返らずにドアを閉めた夜、経理の私が仕掛けた冷徹な清算が幕を開ける。嫁姑|夫婦4.0万字5 413 -
完結第34話
妻の葬儀の夜、義母が外した指輪と娘の写真
妻・美保の葬儀が終わった夜、修二の結婚指輪を外したのは、亡き妻の母・麗子だった。「もう美保に隠す必要はないでしょう」と唇を寄せたその瞬間、娘・咲から1枚の写真が届く。そこには半年前の病院で抱き合う修二と麗子、そしてガラス越しに2人を見つめる病衣姿の美保が写っていた。 闘病中の妻を支える献身的な夫を演じながら、修二はいつしか自分の弱さを理解してくれる義母へ逃げ込み、越えてはならない境界を越えていた。しかも麗子は「美保も知っていた」「私がいなくなったら修二さんを1人にしないでと頼まれた」と主張し、その証拠となる録音まであるという。 だが翌朝、咲が告げたのは「お母さんの声を最後まで聞いて」という一言。 亡き妻が本当に残した言葉を前に、2人が都合よく信じてきた“許し”が崩れ始める――。夫婦|修羅場5.1万字5 608 -
完結第16話
四十九日の追放、母の隠し遺言
「十年世話しただけの妹に、実家の取り分はないわ」 母の四十九日、喪服の兄夫婦は親族の前で澄子を指差し、台所の冷えた板の間へ追いやった。信金を辞め10年間、720万円の私財を投じて母を看取った澄子に、兄は「今週中に出て行け」と冷酷に通告する。 母のキャッシュカードは7年前から兄が独占し、消えた年金は1240万円。 家財すべてが二束三文で業者に売り払われようとする中、母が50年愛用した古い足踏みミシンの奥底から、厳重に隠された「ある物」が滑り落ちた。 「その言葉、そっくりそのままお返しします」 あの日からちょうど49日後、審判の幕が上がる――。兄弟姉妹|修羅場2.3万字5 432 -
完結第27話
妻を追い出した翌朝、7枚のブラックカードが止まった
結婚3年目の夜、美桜が帰宅すると、夫・達也は若い愛人と義両親を囲み、離婚届を突きつけてきた。「無能で地味な女」「1円も稼げない寄生虫」と嘲られ、慰謝料もなく豪邸から追い出される。 だが4人は知らなかった。美桜の正体は、世界経済を動かす巨大グループの総帥。倒産寸前だった達也の会社を救い、資金も仕事も与え、彼を“天才社長”に見せていたのは全て美桜だった。 さらに豪邸も別荘も、7枚のブラックカードも、達也自身の資産ではなく美桜の法人名義。 離婚届が受理された瞬間、美桜は静かに全カードを停止し、豪邸の退去手続きと会社への特別監査を開始する。 勝ち誇っていた一家がまだ知らない、本当の“無一文”への転落が始まろうとしていた――。修羅場|熟年離婚4.0万字5 285 -
完結第15話
全盲の義母が言い当てた味噌汁の色
「お味噌、白味噌に変えたでしょう?」。11年前の事故で全盲になったはずの義母・かず子が、漆塗りの椀を抱えて微笑んだ。亡き実母への後悔から、365日欠かさず介護と手料理を捧げてきた嫁の私。だが翌朝、ゴミ袋の底から現れたのは、手つかずのまま無残に捨てられた私の料理と、1万8千円の銀座高級寿司やフレンチのデリバリーレシート30枚だった。夫は「お前の味付けが悪い」と冷笑し取り合わない。孤立無援の中、弁護士の助言を得た私はある罠を仕掛ける。そして勝手口の前で義母が放った「ある一言」で、11年間の嘘が音を立てて崩れ去る――。嫁姑|真相2.3万字5 3039 -
完結第22話
夜勤の救急外来に運ばれた夫と義姉
深夜2時、救急外来で夜勤中の看護師・佐藤み咲のもとへ、交通事故で重傷を負った男女2人が搬送されてきた。シーツの下にいたのは、夫・拓也と義姉・麗子。しかも2人は、決して「姉弟愛」では説明できない姿で倒れていた。 み咲は5年間、看護師という仕事を見下す夫と、「子供も産めない」と侮辱する麗子、その2人を庇い続ける義母・里子に耐えてきた。 それでも彼女は感情を捨て、看護師として2人の命を救うことを選ぶ。 だが、惨状を目にした義母まで「全部あなたのせい」とみ咲を罵倒した瞬間、最後の迷いは消えた。 何年も残してきた暴言の記録と証拠を武器に、奪われ続けた人生を取り戻す反撃が静かに始まる――。夫婦|修羅場|不倫3.3万字5 2732 -
完結第11話
貧乏老人を嘲笑った行員の末路
「あんな貧乏臭い爺い、適当にあしらっとけばいいのに」ボストンバッグを抱えた老人に、新入行員は嘲笑の声を浴びせ、エリート課長代理は別の窓口へ強制的に追い返した。母親の入院費のため百万を引き出しに来ただけの、よれよれのジャケットを着た年寄り――。だが、彼こそが全日本経済の裏を牛耳るクオンホールディングスの会長・久音次郎その人だった。侮辱に耐えかねた新人の篠崎水希が一人で抗議する中、老人が静かに古びたバッグの金具を閉じた瞬間、端末の画面で一千万円、一億円と出金通知の数字が狂ったように跳ね上がり始めた。絶望の淵に立たされた傲慢な行員たちの運命を決定づける、驚愕の審判の行方は――。職場逆転|修羅場1.6万字5 1861