"血染めの写真と三文字のSOS" 第6話
その、廊の奥からバタバタと力い音がづいてきた。
「父ちゃん、遅いよ! ……あ、この子、だれ?」
太がひょっこり顔をし、美桜ちゃんの顔を議そうに覗き込んだ。美桜ちゃんはさらにを縮め、私ののに隠れようとする。
「太、この子は美桜ちゃんだ。お母さんが怪で入院することになってな、しばらくの、うちで預かることになったんだよ」
「へえー! 美桜ちゃん、何歳?」
太が屈託のない笑顔で屈み込むと、私の背から消え入りそうな声が返ってきた。
「……ろくさい」
「俺、太! 歳だよ! 美桜ちゃん、こっちおいでよ! 俺がいろいろ案内してあげるから!」
太がポンと胸を叩き、迷うことなくを差しした。美桜ちゃんは戸惑いながらも、その温かなのを、おずおずとさな指先で握り返した。
「俺がお兄ちゃんだからさ、何かあったら何でも言ってね!」
「……うん」
太にを引かれ、美桜ちゃんがゆっくりとリビングへ入っていく。その背を見送りながら、私は固く結ばれていた胸の奥の結び目が、しだけ解けるのをじていた。
「さあさあ、ご飯にしましょう! 美桜ちゃん、何か嫌いなべ物はあるかい?」
母が配膳をえながら尋ねると、美桜ちゃんはさく首を横に振った。
「……ないです」
「よかった! 今は太の好物のごねハンバーグよ!」
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「やったあ! ばあちゃんのハンバーグ、世界うまいんだぞ!」
テーブルのに、ばしい湯気をてるきなハンバーグ、彩り豊かなサラダ、そして裏ごしされた温かいコーンスープが並べられた。母は美桜ちゃんの目のに、誰のものよりもふっくらと分いハンバーグの皿をコトリと置いた。
「はい、美桜ちゃんの分だよ。たくさんべてね」
美桜ちゃんはをわせ、さな声で呟いた。
「……いただきます」
フォークで切り分けたを、さなへと運ぶ。もぐもぐと咀嚼した美桜ちゃんに、隣の太がを乗りして尋ねた。
「どう? うまい?」
「……おいしい」
その瞬、美桜ちゃんの瞳が微かに丸くなり、元にふわりとさな笑みが浮かんだ。ほんの瞬の、掠れるような笑顔だったが、確かに彼女の表に灯った温かなだった。
「よかったわあ! おかわりもたくさんあるからね、ゆっくりおあがり」
母が目を細め、父が嬉しそうに頷く。賑やかな会話と器の触れう音に包まれながら、美桜ちゃんは議そうに周囲を見渡し、しずつ、しかし確実にスプーンをへと運び続けた。
数、病院での結さんの術は無事に成功した。
術の経過も良好で、リハビリを含めて約ヶで退院できる見込みだと医師から告げられた。
病を訪れた私に、ベッドのの結さんはくをげた。
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「さん……美桜が毎お世話になっていて、本当に申し訳ありません……」
「とんでもない。うちの太も、妹ができたみたいだってびで面倒を見ていますから、何も配いりませんよ」
「そう言っていただけると、本当に救われます……。それで、退院したのことなのですが……」
結さんの瞳に、ふと暗いが落ちた。
事故現となったあの古い賃貸宅には、もう戻ることはできない。何者かに襲撃されたあの所に再び母子だけで暮らすなど、危険極まりないことは誰の目にもらかだった。
私はしのを置いてから、もって考えていた提案を切りした。
「結さん。俺が経営している写真スタジオですが、建物の階に昔使っていた空き部があるんです。キッチンも呂もついています。もしよろしければ、退院は美桜ちゃんと緒に、そこにみませんか? 賃はいりませんから」
結さんは驚愕のあまり息を呑み、言葉を失った。
「そ、そんな……! そこまで甘えるわけにはいきません! これ以ご迷惑を――」
「慮しないでください。困ったはお互い様です。それに、美桜ちゃんの全を考えても、俺やうちの両親の目が届く所にいてくれた方が、こちらもなんです」
私の真っ直ぐな線を受け止めた結さんの目から、再び涙が溢れした。
「……ありがとうございます……本当になんとお礼を申しげたらいいか……」
こうして、退院のを境に、結さんと美桜ちゃん、そして私たち族の奇妙で温かな共同活が幕をけることとなった。
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