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"血染めの写真と三文字のSOS" 第9話

「いえ、私なんて……ブランクもありますし……」

「謙遜なんてしなくていいのよ。才能は隠すものじゃないわ。……ねえ、俊介」

母が私に目配せをした。その図は、言われなくても痛いほど理解できた。

「結さん。……うちのスタジオで、正式に働いていただけませんか?」

「え……?」

「レタッチとデザインの専任スタッフとして、力を貸してほしいんです。これからの繁忙期で、俺じゃ本当にが回らなくて困っていたんです」

結さんは驚きのあまり息を呑み、を振って辞退しようとした。

「そんな……お部を無償で貸していただいているに、お料までいただくなんて、申し訳なさすぎます!」

「何を言ってるのよ、結さん!」

母が割って入った。

「働くことと助けうことは別の話よ。美桜ちゃんのためにも、あなた自が技術を使って自した収入を得たいでしょう? 俊介が助かるんだから、慮なんて絶対にしないでちょうだい!」

母の温かくも力い言葉に、結さんの瞳が激しく揺れいた。

「……私で、本当にお役にてるでしょうか……?」

「お役にてるどころじゃありません、最のパートナーです。座ったままできる作業ですから、の負担にもなりません。ぜひ、お願いします!」

私がくをげると、結さんは胸元にを当て、涙ぐみながらく礼した。

「……はい! 精杯、努めさせていただきます! よろしくお願いいたします!」

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こうして、結さんは『フォトルーム』の専属レタッチャーとして、たな歩を踏みすこととなった。

結さんの加入による効果は、まさに劇だった。

翌から始まったの繁忙期、結さんは驚異なスピードと職技で写真データを次々と仕げていった。写真を受け取りに来た親御さんたちからは、「の写真館とは仕がりの透が全然違う」「うちの子がこんなにく写るなんて」と絶賛の声が相次ぎ、コミは瞬くに隣の幼稚園や学の保護者ネットワークへと広がっていった。

スタジオの片隅では、子供たちの距も急速に縮まっていた。

「美桜ちゃん、これ見て! じいちゃんの昔のカメラのレンズなんだよ!」

太が父のコレクション棚からな属製のレンズを持ちし、美桜ちゃんのに差しした。

「さわっていいよ。俺がお兄ちゃんだから許する!」

美桜ちゃんはおずおずとさな指を伸ばし、たい真鍮の鏡胴に触れた。

「……きれい」

「だろう? ものレンズなんだぞ!」

「太、またおは勝に持ちして自してるのか」

奥から父が苦笑いしながら歩み寄ってきた。

「これはな、じいちゃんが若い頃、初めて買った切な宝物なんだ。美桜ちゃんも、カメラが好きかい?」

美桜ちゃんはし首を傾げた。

「……よくわからないけど、ガラスのところがキラキラしてて、きれいだとう」

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「そうかそうか! 見る目があるなあ! よし、今度じいちゃんがシャッターの切り方を教えてやるからな!」

「じいちゃん、また贔屓してずるいー!」

太が茶化すと、美桜ちゃんのから「ふふっ」と声が漏れ、さな鈴を転がすような笑い声が響いた。あの、血にまみれて母親を庇っていた女の顔に、齢相応の無邪気な笑顔が完全に蘇っていた。

に入り、の撮はピークを迎えた。

毎のようにスタジオは満員御礼となり、予約の話は鳴り止まなかった。

しかし、その忙さので、私は結さんの異変に気づいた。

彼女は自分の仕事に切の妥協を許さず、私に迷惑をかけまいとするあまり、夜まで作業を抱え込んでいたのだ。

あるの午、喉が渇いて階の湯へりた私は、スタジオのかりがついていることに気づいた。ドアの隙から覗き込むと、結さんがモニターのを浴びながら、乱にペンをらせていた。

「結さん!」

「ひゃっ……! あ、さん……すみません、物音で起こしてしまいましたか?」

振り返った結さんの目のには、濃い隈ができていた。

「こんなまで何をしてるんですか! のリハビリなんですから、絶対に無理をしちゃ駄目です!」

「でも……私の作業スピードが遅いせいで、納期のスケジュールがギリギリになっていて……私がもっと頑張らなきゃいけないのに……」

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