"正月に八人で来る嫁へ、家は売りました" 第16話
ファミレスの審判と、崩れ落ちた見栄
「棒ですって!? 何よ、聞きが悪い!」 ついに追い詰められた彩佳さんが、逆してテーブルをバンと叩いた。 周囲の席の客たちが斉にこちらを振り返る。 「どうせ直さんがっ子なんだから、あのは将来うちのものになるはずだったんじゃない! ちょっと期がまっただけよ! 借りした何が悪いのよ!」
「お、いい加減にしろッ!!」 直がちがり、声を張りげた。 温で、事なかれ主義で、何事も笑って誤魔化してきた息子が、初めて妻の胸倉を掴まんばかりの形相で叫んだ。 「母さんのは母さんのものだ! 俺のものじゃない! お、キッチンのリフォーム代、独代の貯で払ったって俺に嘘ついたよな!? 健さんから借して見栄張って、その利息を母さんので払わせてただと!? 恥をれよ、恥を!!」
「私だって見栄くらい張りたかったわよ!!」 彩佳さんも涙をボロボロとこぼしながら、叫び返した。 「美のところは築の注文宅で、健さんは流企業で取り! うちだけ築数の古い建売で、台所もボロボロで……惨めだったのよ! お正くらい、広いで『お姉ちゃんすごいね』って言われたかったのよ! 何が悪いのよぉぉっ!!」
妹に対するらない嫉妬と見栄。 そのちっぽけなプライドを満たすためだけに、彼女は義母のの歴史を切り売りし、老いた私の体を酷使し続けてきたのだ。
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あまりの浅ましさに、私はりを通り越して、い溜め息しかてこなかった。
「彩佳さん」 私の静かな言に、喚き散らしていた彩佳さんがハッと息を呑んだ。 「あのは、もうのです。先週、塚さんという素らしいご族に千百万円で売却し、登記も完しました。……あなたが借の担保にしようとしていた財産は、この世のどこにもしません」
「お……お母さん……」 彩佳さんの顔から血の気がサーッと引き、すがるようにテーブルに両をついた。 「お願いです……! を売ったおから、百万円だけでいいんです! 健さんに返す分だけでいいから、貸してください! それさえあれば、丸く収まるんですから!」
テーブルを挟んで、直も、美さんも、健さんも、全員が息を呑んで私を見つめた。 私は、めた茶をに含み、彩佳さんの目を真っ直ぐに見据えて告げた。
「お断りします」
氷のように澄み切った、絶対の拒絶。 「百万の借は、あなたと健さんのの契約です。私が円たりとも肩代わりする筋いはありません。私の正を勝に利息代わりに搾取しておいて、今度は私の老資から元を掠め取ろうというのですか? ……盗にも分の理と言いますが、あなたには分の理もありません」
「お母さん……!」 「健さん、美さん」
私は妹夫婦に向き直り、々とをげた。 「私の庭の始末で、おにも変愉ないをさせました。……ですが、この借の清算は、川直・彩佳夫妻の庭ので、法に則って解決してください。私をこれ以、あなた方の銭トラブルに巻き込まないでちょうだい」
健さんは々とをげた。 「当然です、川さん。……彩佳さん、直さん。末までに、残額百万円の具体な返済計画を作成し、公正証として提してください。できなければ、与の差し押さえ続きに移ります」
「……分かりました。俺が、責任を持って返します」 直は項垂れ、絞りすように答えた。 勝負は、完全に決した。 見栄で塗り固められた虚飾のが、元の夜、ファミレスの片隅で音をてて瓦解した瞬だった。
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