"十三通の退職届と百七回の着信" 第3話
半に戻ってきてから、板に入るたびに同じ空気がある。
若いたちは私の顔を見ない。
私が座敷の話をしても黒田さんの方を見る。
その、廊で仲居の1とすれ違った。
彼女は軽くをげた。
「女将さん、おはようございます。」
私はを止めた。
「おはよう。3の法事、お膳の数はこれでってる?」
彼女は困ったような顔をした。
「あ、板さんがもう決められましたので。」
彼女は伝票を胸に抱えて、そのまま座敷の方へってしまった。
帳に入ると、静さんが献表を広げていた。
静さんは私を見げて言った。
「綾乃さん、これごでしたか?」
3の法事の献だ。
私が先週、法事をされるご族と話で相談して決めたものだった。
配の方がいので揚げ物を1品減らして膳を軽くする。
そういう約束をしていた。
表の半分が赤い字でき直されている。
揚げ物が2品に戻り、が濃いものに変わっていた。
字は黒田さんのものだ。
私は静さんを見た。
「いつですか?」
静さんは表を指差した。
「昨の夜です。板さんがいらして。」
私は赤い字を見た。
料理としては黒田さんの組み方の方が理にかなっているだろう。
それは分かる。
分からないのは、ご族と話したに言もないことだった。
私は板へ戻って黒田さんに献表のことを聞いた。
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私は元のを示した。
「3の法事ですが、揚げ物を減らすとご族にお約束しています。」
黒田さんは鍋のを見たまま答えた。
「あれじゃ膳が痩せる。」
私は歩づいて言った。
「軽くしてほしいというご希望です。お寄りがい席なので。」
黒田さんは玉杓子を鍋の縁に置いた。
黒田さんは振り向かずに言った。
「板のことは板のが決める。」
黒田さんがそこで顔をげた。
黒田さんは見すような線を向けた。
「女将さん、あんたは料理を作ったことがないでしょう。」
黒田さんは再び鍋に目を落とした。
「素がをすとのが痛むんですよ。」
それから鍋に向き直り、話は終わったという背になった。
私は板をた。
廊で息を吐いてから、お施主のご族へ話を入れた。
私は受話器を握りしめて言った。
「揚げ物のことをもう度お詫びして、こちらの都で献が変わったとお伝えします。」
をげるのは私の仕事だ。
そのの昼、さんから話が入った。
さんはし慮がちな声だった。
「綾乃さん、確かめたいことがあってな。」
受話器の向こうでさんが咳払いをした。
「はい。」
さんは言葉を探すように言った。
「板さんから、しばらく数を減らすと聞いとるんだが本当かね?」
さんは続けた。
「11の分から半分でええと。
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」
私は受話器を持ち替えた。
「そんな話はしてません。」
さんは納得したように息を吐いた。
「そうか。そうだろうとったんだ。」
さんの声は困っていた。
さんはし優しい声になった。
「うちはのさんにわせるだけだから、決まったら教えてくれればええ。」
話を切ってから、私はしばらく帳の子に座っていた。
11は忘会の予約が入り始めるだ。
数を減らす理由がない。
昼を過ぎて、私はの帳簿をいた。
半に戻ってから辞めたが3いる。
魚を引く向板の子と、仲居が2。
3とも黒田さんが「使えんかった」と言で片付けた。
私はそれを受け入れた。
板のの采配は板のがする。
父もそうしてきた。
3の顔は覚えている。
向板の子は29歳で、父が包丁の持ち方を褒めたことのあるだった。
仲居の1は常連のお客に指名でついていた。
辞めるに挨拶へ来た彼女は、私と目をわせずに言った。
「お世話になりました。」
とだけ言って帰っていった。
その、私は若い子は続かないものだと自分に言い聞かせた。
ホテルでもはよく辞めた。
だから同じことだとった。
名簿を3分遡って、私はもう1つのことに気付いた。
仲居の欄が3から空になっている。
座敷を仕切るがいないまま、5の仲居が黒田さんの指示でいていた。
3までそこには井久美さんという名があった。
私が学の頃からのにいただ。
辞めたことは聞いていたが理由は聞いていない。
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