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"妻の葬儀の夜、義母が外した指輪と娘の写真" 第6話

麗子は計を見た。

「昨夜美保のががったから。11半からよ」

修の眉がわずかにいた。

正午から役所との最終プレゼンがあった。

病院から会まではで40分。

説を最まで聞けばにわない。

美保は彼の顔を見ていた。

「っていいわよ」

修は慌てて否定した。

「まだ何も言っていないのに」

美保は静かに言った。

「でも、医師の説がお母さんが聞いてくれる」

修はいがった。

「僕もいた方がいい。本当に」

美保の瞳は静かだった。

修は答えを探した。

本当にいた方がいいのか?

夫として、いるべきだった。

だが彼自はそこにいたいのか。

病名、数値、治療の限界、残された。

医師がそれらをにするたび、修は自分の力が届かない所へ連れてかれる。

建物なら補できる。

予算なら増やせる。

期なら交渉できる。

けれど妻の体は、彼の命令を聞かなかった。

その無力さに耐えるくらいなら、決断を求められる会議へ戻りたかった。

修は言った。

「できるだけく戻る」

美保は目を閉じた。

「うん」

その言を、修は許として受け取った。

麗子は何も言わなかった。

ただ、瓶から抜いたを聞で包む指に、しく力を入れた。

病をる直、美保が修を呼び止めた。

「あなた、これ」

美保がベッド脇のカップを指した。

朝修が来ると聞いて、美保が護師に頼んだものだった。

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2でむつもりだったのだろう。

もう湯気はなかった。

修は振り返った。

「戻ってからむよ」

美保はし寂しそうだった。

「きっとめるわ」

修は笑顔を作った。

「淹れ直せばいい」

美保はもう1度だけ笑った。

「そうね」

修は病をた。

扉が閉まった直、から属の受け皿が落ちる音がした。

次に麗子の声が聞こえた。

「美保、ゆっくり息を吐いて」

修のが止まった。

取っへを伸ばす。

その、スマートフォンが鳴った。

役所案件の担当役員だった。

「社、先方が匠案の変更を求めています。到着には判断だけいただけますか?」

修は閉じた扉を見た。

から美保の苦しそうな呼吸が聞こえる。

修は話に応えた。

「資料を送ってくれ」

彼は廊を歩き始めた。

「で見る」

エレベーターの扉が閉まる直、病からてきた護師が見えた。

修はくボタンを押さなかった。

1階のロビーでは、咲がカメラを構えていた。

仕事帰りらしい。

黒いパンツにきめのいシャツ。

く切った髪の先がでし濡れている。

咲がカメラをろした。

「お父さん、来たのか」

修は頷いた。

「うん。これからにく」

咲は怪訝な顔をした。

「もう帰るの?」

修は腕計を見た。

「事なプレゼンがある。終わったら戻る」

咲の返事がしくなった。

「お母さんより事?」

修はため息をついた。

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「比べる話じゃない」

咲の目が細くなる。

27歳の娘は、母親に似ていた。

を責めるほど、声を荒げない。

咲は静かに言った。

「じゃあ比べずに残ればいいのに」

修はし声を張った。

「会社には僕を待っているがいる」

咲は見つめ返した。

「にもいるよ」

修は息を吸った。

言い返そうとしたが、ロビーの向こうから広報担当者がを振っていた。

修は表を変えた。

「咲、でな」

修はに歩きした。

娘の方へ軽くを振る。

「お母さんを頼む」

その瞬、咲のカメラが胸元で揺れた。

咲は呟いた。

「みんな私にそれを言うね」

修は振り返った。

「何を?」

咲はめた目で父を見た。

「お母さんを頼むって。お父さんも、おばあちゃんも。頼まれたが誰かに頼りたいとはわないの?」

修は言葉を失った。

咲は目を逸らし、ガラス越しの庭へカメラを向けた。

の向こうに渡り廊が見えた。

修が尋ねた。

「何を撮ってる?」

咲はファインダーを覗いたまま答えた。

「反射。ガラスって向こう側も写すし、こっち側も写すでしょう」

咲はシャッターを切った。

「なると、どっちが本物か分からなくなる」

シャッター音がした。

そのは、まだ裏切りの写真は撮られていなかった。

だが咲は、すでにガラスのに2つの世界を見ていた。

1つは、誰もが見ている黒川。

病気の妻。献な夫。

支える義母。配する娘。

もう1つは、それぞれが誰にも見せない世界だった。

逃げたい夫。

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