みかん小説
本棚

"剣を捨てない花嫁" 第6話

消えた借の半分

翌朝、私は何もらない顔で志乃のに座った。

問い詰めたい気持ちはあった。

だが剣でも同じだ。相の構えが分からないうちに踏み込めば、返し技を受ける。

私は、待つことを教えられてきた。

父は「先にいた方が負ける」とよく言っていた。

皮肉なことに、その教えを今度は父自に向けることになる。

帳へき、過分の記録を調べた。

刀、防具、米、炭、布、薬。

どれもしずつ数字がい。

つひとつはきな額ではないが、積みねるとかなりの額になる。

しかも支払先のに、同じ号が何度も現れた。

志乃の実と縁のい商だった。

臣はっていた。

「父に話す」

「まだ待ってください」

「なぜだ」

「帳面だけでは、違いだと言われれば終わります」

臣は私を見た。

「おは静だな」

「怖いだけです」

本当だった。

もし違っていたら。

もし私がを壊すになったら。

また「余計な娘」になるのが怖かった。

そのの午、私は買いしにた女について町へった。

刀を納めている具に寄り、久世への納品数を尋ねる。

主は帳面をいた。

「に本ほどですね」

久世の帳簿には本とある。

「代は?」

「こちらです」

額も半分だった。

私は何も言わずをげた。

次に防具。

同じだった。

帳簿の数字は、実際より倍く膨らまされていた。

広告

敷へ戻る途、佳代が私を追いかけてきた。

「奥様」

彼女が私を奥様と呼ぶ、以のような嘲りはなくなっていた。

「志乃様に気をつけてください」

私はを止めた。

「どういうこと」

佳代は周囲を見た。

「私、聞いたことがあります」

「何を?」

「若旦の縁談が決まる、志乃様がご実の方と話していたんです。森田の借なら利用できるって」

背筋がえた。

「には」

「分かりません。ただ……」

佳代は唇を噛んだ。

「奥様が来る、志乃様の姪御さんがこのへ何度も来ていました。皆、いずれ若旦のお嫁さんになるとっていました」

私はようやく全体が見え始めた。

志乃は臣を姪と結婚させたかった。

しかし臣は私を選んだ。

そこで志乃は縁談そのものを止めるのではなく、父の借を利用した。

久世からるの部を自分の側へ流し、私の父には「借がまだ残る」とわせる。

そうすれば私は久世に逆らえない。

そして失敗のい嫁として追い詰めれば、やがて自分からを引くかもしれない。

「臣さん」

夜、私はすべてを話した。

臣はしばらく何も言わなかった。

「俺は馬鹿だった」

「なぜです」

「おを選べば、それで終わるとっていた。のでこんなことが起きているとは」

私は首を振った。

「私も何もりませんでした」

「、父に見せる」

今度は止めなかった。

広告

翌朝、久世当主・義隆のに帳簿との証言を並べた。

義隆の顔はみるみる青ざめた。

「志乃を呼べ」

やがて志乃が現れた。

彼女は帳簿を見るなり、私を睨んだ。

「あなたが調べたの」

「はい」

「嫁の分際で、の帳を嗅ぎ回るなんて」

その瞬、義隆が机を叩いた。

「説しろ」

志乃は黙った。

しばらくして彼女がにした言葉は、謝罪ではなかった。

「このを守るためです」

「何?」

「臣さんが、あんな娘を妻にすると言いしたから」

線が私へ向く。

「あの子は久世の嫁にふさわしくない。剣しからず、女としての教育も受けていない。いずれ必ずの恥になるといました」

「だからを抜いたのか」

「違います」

志乃は声をげた。

「私は正しい縁談に戻そうとしただけです」

その言葉で、臣の表が変わった。

「澄との縁談は、違いだったと言いたいのか」

志乃は答えなかった。

臣は静かにちがった。

「なら覚えておけ。違っているのは縁談ではない」

彼は帳簿を指した。

「のを勝に値踏みした、あなたの方だ」

志乃はそのから帳をされた。

しかし問題は終わらなかった。

抜かれたの部はすでに私の実へ流れ、別の借の返済に使われていた。

そして数。

父が久世へ乗り込んできた。

「娘を返してもらう」

私はを疑った。

弟がまれたに私を追いした父が、今度は私を取り戻しに来たのだ。

理由はただつ。

が、再び危に陥っていた。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: