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"剣を捨てない花嫁" 第18話

運命の結婚

そのの。

庭の桜が満になった。

私は鏡ので髪をえていた。

母の櫛を使い、最にのかんざしを差す。

ろから臣が覗き込んだ。

「曲がっている」

「あなたが最初につけたほどではありません」

「まだ覚えているのか」

「言います」

臣は笑った。

では子どもたちが稽古を始めている。

女だった佳代は今では稽古を伝い、絹乃は々子どもを連れて遊びに来る。

志乃も以ほどをさなくなった。

父のは形を変えながら残り、弟は絵のへみたいと言っている。

誰も、誰かのを跡取りという言葉だけで決めなくなった。

なくとも、昔よりは。

「くか」

臣が言った。

「はい」

庭へる。

子どもたちが私を見つけて声をげる。

「先!」

私は袂をたすきで留め、刀を取った。

青い着物のから稽古用の袴をはく。

昔の私なら考えられない格好かもしれない。

でもこれが今の私だ。

臣も刀を取った。

「今は負けない」

「またですか」

「今は本当に違う」

「秘密の稽古を?」

「した」

「っています」

「また聞こえたか」

私は笑った。

で向かいう。

――いや、もうずっと昔。

町の会で、名もらないと向かいった。

あの、私が本を取らなければ。

臣は私を探さなかったかもしれない。

父が弟を授からなければ。

私は嫁にされなかったかもしれない。

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そう考えれば、これを運命と呼ぶもいるのだろう。

けれど私はし違うとう。

運命だけで、ここまで来たわけではない。

捨てられた、私は黙って嫁いだ。

笑われたも耐えた。

でもその、刀を受け取ったのは私だ。

父に戻れと言われて断ったのも私。

剣を続けると決めたのも私。

着物を着ると決めたのも私。

母の櫛を使うと決めたのも私。

臣の隣にいると決めたのも。

全部、自分だった。

「始めるぞ」

臣が構えた。

「どうぞ」

彼が踏み込む。

私は受ける。

刀がぶつかり、の空に乾いた音が響いた。

数の、臣の刀がわずかに流れた。

私は迷わず踏み込む。

。

本。

臣が悔しそうに空を見げる。

「また負けた」

私は笑った。

「仕方ありません」

「何が」

「私の方がいので」

庭から笑い声ががった。

臣も笑った。

私は刀をろし、に揺れる桜を見げた。

歳の、父に髪を切られた私は、自分のを選べなかった。

歳の、弟がまれたに、私はになった。

そして嫁ぎ先で初めて、私を私のまま見てくれるに会った。

けれど今なら分かる。

臣が私を見つけてくれたことだけが、私を救ったのではない。

彼の隣で、自分自を見つけ直したこと。

それこそが、私のを変えたのだ。

臣が私の髪に差したのかんざしが、の差しを受けてさくった。

「澄」

「はい」

「似っている」

私はもう照れなかった。

「っています」

そう答えると、臣はし驚いて、それから笑った。

私も笑った。

初めて鏡のの自分を好きになれたあのから、ずいぶんいが過ぎた。

男として育てられた娘。

跡取りの代わり。

借と引き換えに嫁がされた女。

昔の私は、いくつもの名で呼ばれていた。

けれど今は、それらのどれでもない。

私はただ、澄だ。

剣をし、着物も好きになり、には夫よりく、にはく、迷いながら自分できるの女だ。

「もう本やるか」

臣が刀を構え直した。

私はかんざしを指で確かめ、同じように構えた。

「負けても泣かないでくださいね」

「誰が泣くか」

の庭に、再び刀の音が響いた。

そしてそのも。

やはり臣は、私に勝てなかった。

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