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"特上寿司と、消えた妻の半年" 第4話

母親と正面から向きって話しい、反発を買うことが面倒なのだ。母親の嫌を損ねてヒステリックに泣きつかれるくらいなら、物静かでい妻に泣き寝入りさせた方が、自分にとって遥かに省エネで楽だからだ。

結婚して、夫のその卑な逃避癖に気づいていなかったわけではない。気づいていながら、「夫婦なのだから私が支えなければ」と、都よく見ないふりをして蓋をしてきたのだ。

夜が怖くてでは眠れないと嘆いて見せたよしえだったが、そののからは、週に度、駅にあるシニア向けのカラオケサークルへ元気に通い始めた。昼は同代の友たちと喫茶を梯子し、夕方には両に買い物の袋を提げて帰宅し、夜のを回れば、誰よりもく自から響きのようない寝息をてて熟していた。

帰るべき頑丈な持ちがあり、これほど健康で活力に満ち溢れているが、なぜ息子のから頑としててこうとしないのか。黒いさな染みのような疑が、私の胸の底に沈殿していった。

ここで、当のがの経済な内についても、正確にき記しておかなければならない。

マンションの賃である額万円と、費、Wi-Fiなどの通信費をわせた約万〜万円は、公平名義の計用座から毎自で引き落とされていた。

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その座に対し、私は毎の料に、欠かすことなく自分の与座から万円を自送していた。対する公平がその座に入していたのは、毎たったの万円だった。

さらに、々のスーパーでの鮮品の買いし、洗剤やトイレットペーパーなどの用品、ネットスーパーのまとめ買い、そしてあのアプリに至るまで、費と雑費のほぼ全額が、私個のクレジットカードから決済されていた。

よしえはといえば、「私は国民暮らしで、にたったの数万円しかもらっていないから細いのよ」と毎のように涙ぐんで訴え、このでの活費を円たりとも負担していなかった。

それでも、当の私がをてこうとしなかったのは、同居はあくまで「半の約束」だったからだ。期限がし延びてしまっただけで、いつかは元の戸建てに帰るが来るはずだと、愚かにも信じ込んでいた。野の農できりで暮らしている実母に、余計な配をかけたくないというもあった。

そして何より、あの頃の私はまだ、夫である公平が、いつか母親の呪縛を断ち切り、妻である私の方としてちがってくれるが来るのではないかと、縷の望みを捨てきれずにいたのだ。

私は昔から、対や揉め事を極端に恐れ、結論を先送りにすることを「忍耐」

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だと勘違いしてしまう性格だった。

経理という仕事は、末の締め切りまでに、帳簿の数字の帳尻を静かに完璧にわせる仕事だ。貸方と借方の数字がわなければ、周囲に騒ぎてるに、まず自分の元の伝票や計算の誤りを疑い、何度も検算を繰り返す。

庭のでも、私は無識に同じことをしていた。卓の空気が狂っているのは、自分の努力がりないからではないか。数字がわないのは、自分の度量が狭いからではないか、と。

同居がを迎えようとしていた翌の初頃から、よしえの言葉の端々に、隠しようもない悪と棘が混ざり始めるようになった。

末の決算作業が引き、疲労困憊でい取りを引きずりながら、過ぎに自宅の玄関ドアをけた夜のことだった。靴の踵を揃えていると、リビングの扉が勢いよくき、よしえのえ切った声が廊に響き渡った。

「またこんなまでふらふらして。主婦っていう自覚がしでもあるならね、どんなに遅くても夜のにはに帰ってきて、温かい夕飯を作って待っているものよ。夫よりも遅く帰宅して平然としている妻なんて、私の若い頃の常識では考えられなかったわね」

リビングのソファにく腰掛け、テレビの画面を見つめながら缶ビールを呷っていた公平は、こちらを振り返りもしないまま、無にをいた。

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