"特上寿司と、消えた妻の半年" 第14話
分もしないうちに、隣のベッドからいいびきが聞こえ始めた。
妻を獄へ突き落とした男が、何の憂いもなく熟している。その醜悪な寝顔を見つめながら、私はスマートフォンのメモ帳アプリをいた。
『()昼:公平・義母は特鰻。私には苔なし梅干しおにぎり個。義母「答えしたバツ、嫁はべ物で覚える」。公平は笑いながら静観。夜:公平「唐揚げのから母さんに相談されていた。好きにさせとけと言った。麻子がすれば済む」と自』
唐揚げの夜。すき焼きの夜。そして今の鰻の昼。
付と、皿のの料理の内容、交わされた言葉を、を挟まずに淡々と記録していった。
記録を並べれば、誰の目にもらかなモラルハラスメントの軌跡が浮かびがる。
私は、今夜この瞬にをびすような浅はかなは取らない。
任せに荷物をまとめてびせば、あの親子は「嫁がヒステリーを起こして突然蒸発した」と親戚に嘘を言いふらすだろう。私にはまだ、次にむ所も、法なろ盾もない。
でけば、必ず負ける。
決算の締めと同じだ。準備を完璧にえ、証拠を揃え、逃げを完全に塞いだで、撃で息の根を止める。
よしえが「半だけ」と言ってこのにがり込んできたように。
今度は私が、半の猶予を自分に課し、このから永に消えるための準備をめるのだ。
広告
スマートフォンの画面を伏せると、暗のに蔵庫のモーター音だけが微かに響いていた。
翌週から、私の面の作戦が始まった。
まず着したのは、資産の保全だった。
独代からコツコツと貯め込んできた個名義の定期預百万円。結婚も夫に教えず、野の実の引きしに眠らせてあった通帳と印鑑を、の連休を利用して実へ帰省した際に回収してきた。母には「ちょっと類の理が必でね」とだけ伝えた。
次に、分証と類の搬だった。
パスポート、帳、命保険の証券、私名義の座の通帳。
これらを度に持ちせば怪しまれるため、毎週通ずつ、化粧ポーチの底に忍ばせて会社へ運び、職の個ロッカーの奥くへと移送していった。
私名義で契約しているすべてのサービスの覧表も作成した。
スマートフォンのキャリア契約、クレジットカード、ネットスーパー、そしてアプリ。
公平との過のLINEのやり取りもすべて見直した。
「今もお母さんからおかずを減らされたの」「帰ったら話せる?」という私の痛なメッセージに対し、「またかよ」「適当にわせとけ」と淡に突き放す夫の返信画面を、付と刻が確に分かる形でスクリーンショットに収め、クラウドに保した。
広告
からは、夕の卓に並ぶの皿の写真を、よしえの目を盗んで毎撮し始めた。
の曜、私は会社のくの定で、経理部の先輩である美穂さんと向かいっていた。
につらい婚を経験し、現は自して暮らしを謳しているさんは、私のやつれた顔を見るなり、焼き魚の箸を止めて配そうにを乗りしてきた。
「さん、最本当に顔が悪いわよ。ちゃんとご飯べてる?」
私は堰を切ったように、唐揚げの個から始まり、すき焼きの肉抜き、鰻とおにぎり、そして夫の「すれば済む」という裏切りの言葉まで、すべてを打ちけた。
さんは途でを挟むことなく、りに瞳を震わせながら最まで聞いてくれた。
「それ……庭内の些細ななんかじゃないわよ。派なモラルハラスメントであり、精神虐待よ。さん、今すぐ弁護士に相談しなさい。私が婚したに本当にお世話になった、女性の先を紹介するから」
さんは帳のページを破り、「原今子法律事務所」の連絡先を力い跡でき殴ってくれた。
の曜、私は駅にある原弁護士の事務所の相談にいた。
代半ばの、物腰の柔らかい原弁護士は、私が差ししたスマホのメモと卓の写真を枚ずつ丹に確認し、く息を吐いた。
広告
おすすめ作品
-
完結第34話
妻の葬儀の夜、義母が外した指輪と娘の写真
妻・美保の葬儀が終わった夜、修二の結婚指輪を外したのは、亡き妻の母・麗子だった。「もう美保に隠す必要はないでしょう」と唇を寄せたその瞬間、娘・咲から1枚の写真が届く。そこには半年前の病院で抱き合う修二と麗子、そしてガラス越しに2人を見つめる病衣姿の美保が写っていた。 闘病中の妻を支える献身的な夫を演じながら、修二はいつしか自分の弱さを理解してくれる義母へ逃げ込み、越えてはならない境界を越えていた。しかも麗子は「美保も知っていた」「私がいなくなったら修二さんを1人にしないでと頼まれた」と主張し、その証拠となる録音まであるという。 だが翌朝、咲が告げたのは「お母さんの声を最後まで聞いて」という一言。 亡き妻が本当に残した言葉を前に、2人が都合よく信じてきた“許し”が崩れ始める――。夫婦|修羅場5.1万字5 612 -
完結第15話
二十人分の祝い膳を押しつけられたので、家を出ました
義母から「家族のお祝いだから」と押し付けられたのは、二十人分の料理作りと高額な費用負担。 夫も義妹も、私を一人の家族ではなく、都合よく使える存在として扱っていた。 五年間、我慢し続けた嫁・美咲は、ある決断をする。 それは、義妹の息子の一歳祝いの前日に、すべてを捨てて家を出ることだった。 しかし、静かに準備を進める中で、美咲は夫と義母が隠していた驚くべき事実を知る。 そこには、単なる身勝手な家族関係では終わらない、彼女を縛り続けるための計画が隠されていた。 そして迎えた祝いの日。 親戚二十人が待つ食卓に残されたのは、豪華な料理ではなく、誰も予想しなかった「空っぽの祝い膳」だった。 奪われ続けた人生を取り戻すため、美咲が選んだ静かな反撃とは――。嫁姑|親子関係|修羅場2.2万字5 284 -
完結第15話
全盲の義母が言い当てた味噌汁の色
「お味噌、白味噌に変えたでしょう?」。11年前の事故で全盲になったはずの義母・かず子が、漆塗りの椀を抱えて微笑んだ。亡き実母への後悔から、365日欠かさず介護と手料理を捧げてきた嫁の私。だが翌朝、ゴミ袋の底から現れたのは、手つかずのまま無残に捨てられた私の料理と、1万8千円の銀座高級寿司やフレンチのデリバリーレシート30枚だった。夫は「お前の味付けが悪い」と冷笑し取り合わない。孤立無援の中、弁護士の助言を得た私はある罠を仕掛ける。そして勝手口の前で義母が放った「ある一言」で、11年間の嘘が音を立てて崩れ去る――。嫁姑|真相2.3万字5 3039 -
完結第22話
夜勤の救急外来に運ばれた夫と義姉
深夜2時、救急外来で夜勤中の看護師・佐藤み咲のもとへ、交通事故で重傷を負った男女2人が搬送されてきた。シーツの下にいたのは、夫・拓也と義姉・麗子。しかも2人は、決して「姉弟愛」では説明できない姿で倒れていた。 み咲は5年間、看護師という仕事を見下す夫と、「子供も産めない」と侮辱する麗子、その2人を庇い続ける義母・里子に耐えてきた。 それでも彼女は感情を捨て、看護師として2人の命を救うことを選ぶ。 だが、惨状を目にした義母まで「全部あなたのせい」とみ咲を罵倒した瞬間、最後の迷いは消えた。 何年も残してきた暴言の記録と証拠を武器に、奪われ続けた人生を取り戻す反撃が静かに始まる――。夫婦|修羅場|不倫3.3万字5 2900 -
完結第14話
月二十五万を貪る偽装役員一家の転落
外資系コンサルティングファームで働く小笠原萌子は、お見合いで大手企業勤務のエリート・東野広夢と結婚した。しかし新婚早々、夫の経歴が全て嘘で、定職すら就いていない無職だと発覚する。さらに広夢は「大企業の役員に抜擢された」と両親に大嘘を吹き込み、見栄を張る義父母は都心のタワマン家賃二十五万円や、百万円の旅行代を萌子の給料から平然と搾取し始めた。夫の度重なる深夜帰宅に不審を抱いた萌子が財布を探ると、そこには見知らぬ甘い香りと、黒地に金箔押しされた高級シティホテルの会員カードが。探偵の分厚い報告書によって夫のキャバクラ通いと裏切りが露呈したとき、萌子は離婚を決意する。だが、金の蛇口を止められた元夫と義家族の強欲は暴走し、SNSでの悪質なデマ拡散、そして新居への土足侵入へとエスカレートしていく。すべてを奪おうとする寄生虫たちに、萌子が下す冷徹な鉄槌とは――。嫁姑|夫婦2.4万字5 695 -
完結第15話
元義母の誤爆着信と暴かれた花婿の嘘
モラハラと不倫を重ねた夫・裕二と離婚し、独身としての平穏な生活を取り戻してちょうど一年が経ったある休日の朝。主人公・マナのスマートフォンに、元義母・文から突如「結婚式になぜ来ないの! 早く来ないと離婚させるわよ!」と怒鳴りつける狂気の電話が入る。 「私はもう独身ですが」と告げるも、来なければ自宅や職場に押しかけると脅され、指定された高級シティホテルの式場へ向かうマナ。黒留袖姿で激怒する文は、新郎となった息子の晴れ舞台を元嫁が邪魔しに来たとロビーで激しく罵倒し、白タキシード姿の元夫も腕力で追い出そうと詰め寄る。 だが、文のスマートフォンの発信履歴を確認させた瞬間、事態は暗転。人身事故で遅延していた本当の新婦「まみ」が泥だらけのパンプスで駆けつけた時、元夫が隠し続けていた致命的な大嘘が白日の下に晒される――。嫁姑|修羅場2.5万字5 358 -
完結第11話
「子どもを産めない」と捨てられた妻の逆転
結婚前は優しく誠実だった夫・誠。 しかし結婚後、彼の本性は少しずつ姿を現していった。 子どもを望めない妻を「役立たず」と罵り、家では暴言を浴びせながら、自分は若い女性との時間を楽しむ。 かな子は「自分が悪いのだ」と耐え続け、愛した人との生活を守ろうとしていた。 だが、ある夜、夫の裏切りを示す決定的な証拠を見つける。 そして離婚を決意したかな子のもとに、長年知らされていなかった父からの連絡が届く。 そこで明かされたのは、彼女自身も知らなかった巨大な財産と、人生をやり直すための力だった。 すべてを失ったと思っていた妻が、実は何も持たない弱者ではなかったと知った時――。 誠の傲慢な要求と、隠されていた真実が次々と崩れ始める。 愛だと信じた結婚の終わりから、かな子の本当の人生が始まる。夫婦|第二の人生|不倫1.6万字5 397 -
完結第32話
不妊を理由に別れた元妻が、機内で双子を抱いていた
5年前、妻・小百合に「ほぼ不妊」という診断が下された瞬間、俺は後継ぎを求める父の言葉に従い、彼女へ離婚届を突きつけた。あの選択は正しかった――そう信じて生きてきた俺の前に、ファーストクラスで小百合と、自分に瓜二つの幼い双子が現れる。 真相を追ううち、俺は恐ろしい事実に辿り着く。不妊診断そのものが偽りであり、小百合は両親まで脅され、何も言えないまま俺の前から消えていた。そして、その全てを裏で仕組んだのは、俺が誰より尊敬してきた父だった。 さらに、本当に問題を抱えていたのは小百合ではなく俺自身で、双子は離婚直前に宿った俺の子供だと判明する。 妻を捨て、子供たちの5年間まで奪ってしまった俺は、もう父の作った「正しい人生」に従うつもりはない。失った家族と向き合い、父が守り続けてきた巨大な権力と秘密に、自分の手で決着をつけると決めた――。夫婦|熟年離婚4.9万字5 8453 -
完結第10話
妹が断った牡蠣漁師は、港の社長だった
「貧乏な漁師なんて絶対に嫌」――妹・美咲が鼻で笑って断った縁談を、35歳の私・香織が代わりに受けることになった。幼い頃から何でも妹を優先され、「我慢できる姉」として生きてきた私にとって、それは初めて自分で選んだ人生だった。 相手の総一郎は、古い家と軽トラックで暮らす不器用な牡蠣漁師。ところが島では誰もが彼に頭を下げ、格式高い老舗料亭まで最上級の敬意を払う。やがて大嵐で加工場が壊れ、会社が存続の危機に陥る中、私は書店員時代に培った「名前と物語を届ける力」で直売所を立ち上げる。そんな矢先、総一郎の本当の立場を知った母と美咲が現れ、「その縁談は本来、美咲のものだった」と言い出す。そして料亭に掛けられた、値段も生産者名もない古い「牡蠣」の木札が、夫にも知らされていなかった過去へとつながっていく――。夫婦|修羅場1.4万字5 726