みかん小説
本棚

"四万円を断った朝" 第6話

会社から消された男

問題が起きたのは曜の朝だった。

社すると、普段は静かな階を社員がり回っていた。秘の由依まで青ざめている。

「何があったんです」

私が聞くと、彼女はく言った。

「関速の入札価格が漏れた」

原グループが今期最案件としてめていた型公共事。

数千規模の雇用と複数の売をする案件だった。

競企業が、原グループの予定価格よりわずかにい額で入札していた。

偶然では説しにくい差だった。

臨役員会がかれた。

田はすでに証拠を揃えていた。

「先週曜、午分。部アドレスへ見積価格表が送信されています」

スクリーンに接続記録が映る。

端末番号。

私の机にあるパソコンだった。

「ふざけるな」

私はわず言った。

「私は関案件のファイルをく権限すら持っていない」

報システム部が答えた。

「特別補佐アカウントには、社共フォルダへのアクセス権があります」

「使ったことはない」

「記録は使われています」

田がゆっくりった。

「君。私は最初から配していた」

「何をです」

「借です」

会議の線が集まる。

「千万円い債務を抱えた物を最密に触れられる所へ置く。社の判断を疑うつもりはありませんが、に困るには誘惑がい」

広告

「私が売ったと言いたいんですか」

「私は事実を並べているだけです」

田は笑った。

完璧な罠だった。

端末。

。

銭。

私は週、夜遅くまで阪の資料を調べていた。

社内にいたことまで事実だった。

「社」

私は耶を見た。

彼女ならっている。

あの夜、私が何を調べていたか。

そして、田が記録を作り替えられるにいる能性も。

しかし耶の顔はたかった。

「さん」

その声音を聞いた瞬、駐での会話をいした。

――今、私はあなたを公ので守らない。

だが、それにしてもたすぎた。

「失望しました」

耶は言った。

「私はあなたを信頼しすぎたようです」

「社」

「借問題を抱えるを報へづけた責任は私にあります」

役員たちがざわついた。

耶は枚のを取りした。

解雇通。

私の背筋にたいものがった。

なぜ、会議始から用されている。

耶は迷わず署名した。

「拓。本付で特別補佐を解任し、雇用契約を終します」

「待ってください」

「警備を」

扉がき、の警備員が入ってきた。

さすがに私もりが込みげた。

これは計画なのか。

それとも耶は本当に私を切ったのか。

駐での会話すら、私をく内部へ入り込ませるための演技だったのではないか。

を信じた結果、私は度を壊している。

広告

同じことをまたやったのか。

私は耶を見た。

彼女もこちらを見ていた。

たい。

何も読み取れない。

警備員が腕へ触れようとした。

「触らなくていい」

私は社員証をした。

机に置く。

「自分で歩きます」

田の顔には勝利のがあった。

私は耶だけを見た。

「島社」

彼女の目がほんのわずかにいた。

「承しました」

それだけ言って、私は会議をた。

会社のへると、がり始めていた。

数週、初めて耶と会った朝とよく似ていた。

だが今度は乗せてくれるなどない。

私は傘も差さず歩いた。

へ戻るまでに全が濡れた。

源は何も聞かなかった。

酒をみながら、私はようやく言った。

「またやられました」

「何を」

「裏切られた」

話しているうちにりが増した。

私はコップを机へ置いた。

「利用されるだけ利用されて、最は報漏洩の犯ですよ。結局同じだった。信じた私が馬鹿だった」

源は黙ってうどんを置いた。

「え」

「いりません」

「ってから吠えろ」

「そんな気分じゃない」

私は器を押した。

次の瞬、源の平が私の頬へんだ。

乾いた音がした。

「何するんですか!」

「目を覚ませ」

「分覚めてます」

「なら考えろ」

源はの隅に置かれた型タイヤを指した。

「この穴、見えるか」

太い釘が刺さり、ゴムがきく裂けていた。

「こんな傷をからさく塞いでもがない。

いったんホイールから全部す。空気を抜いて、側から傷をいて、初めて本当に直せる」

私は苛ちながら聞いた。

「何の話です」

「おの話だ」

その瞬、ので何かが止まった。

全部す。

会社から。

肩きから。

監から。

私は会議をいした。

耶は、罠が発覚した直なのに解雇通を用していた。

まるで最初から、今私を会社のへすことをっていたように。

いや。

っていたのではない。

そうするつもりだったのだ。

私は子からちがった。

りが急速に引いていく。

代わりに鳥肌がった。

「……そういうことか」

源が眉をげた。

私は笑った。

「今度は私を、本当に会社のへしたんだ」

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: