"四万円を断った朝" 第8話
女社がになった夜
阪へ向かう、私は耶と直接会うことになった。
所は級ホテルでも会社でもない。
速沿いの古い堂だった。
以阪から戻る途、レンタカーが故障したに偶然入っただ。
その、私たちはまだ雇用関係にあった。
私は今でもあの夜をよく覚えている。
阪事業の現へ初めてった。
現責任者たちは、若い女性社である耶をあからさまに軽く扱った。
「社さん、現は危険ですから」
「資格のないは入れません」
規則を盾にし、入能な管理区域からもざけようとした。
表面は全管理。
実際は「女の社は本社に戻れ」という圧力だった。
私がの固定隔と施記録の致を指摘すると、ようやく態度が変わった。
「これ以入を拒否するなら、正規の全管理続きで確認を取ります」
私は言った。
「困るのはどちらですか」
現側はをけた。
そのの調査で、報告と現物のい違いをいくつも確認した。
しかし帰り、レンタカーの却系が故障した。
夜の国。
ロードサービスを待つ、私たちは古い堂へ入った。
トラック運転が集まるで、耶の装だけらかに浮いていた。
私はうどんと豚肉の煮込みを頼んだ。
耶は最初、箸をつけようとしなかった。
「べたことありません?」
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「こういうでは」
「毒は入ってませんよ」
べる。
そしてし目を見いた。
「おいしい」
「でしょう」
い焼酎をしだけむと、彼女はむせた。
それまで完璧に崩れなかった表が初めて緩んだ。
「社も普通にむせるんですね」
「どういうですか」
「会社では呼吸も計算してるように見える」
しばらく沈黙した、耶が言った。
「父がくなった、泣けませんでした」
私は箸を止めた。
「くなった翌週から、役員たちは株の話を始めた。叔父のようにっていたたちまで、会社を守ると言いながら、自分の派閥を作り始めた」
彼女は欠けた湯みを指で回した。
「歳の女が座る子じゃない、と面と向かって言われたこともあります」
「辞めれば楽だったでしょう」
「辞めたら父がかけて作った会社が、あのたちの財布になる」
初めて彼女の目に疲れ以のものが見えた。
恐怖だった。
それでも逃げないの恐怖。
私はその言った。
「で全部やる必はないでしょう」
「信じられるがいません」
「ならくらい作ればいい」
耶は私を見た。
「あなたは自分がそのだと言うんですか」
「そこまでは」
私は酒をんだ。
「でも今夜の酒代くらいなら払えます」
耶が笑った。
それが私たちの距が最初に縮まった夜だった。
そして今。
同じの同じ奥の席。
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私たちは会社を解雇した側と、解雇された側として向きっていた。
「久しぶりですね」
耶は言った。
「まだ週も経ってません」
「会社ではくらいにじます」
彼女はらかに痩せていた。
「田が来週くそうですね」
「由依から聞きましたか」
「はい」
「議決権の過半数を固めつつあります」
「あなたはどうするんです」
「戦います」
「証拠もせずに?」
耶は唇を噛んだ。
私は片桐から得た記録の写しを机へ置いた。
「側からも線がつながりました」
彼女が顔をげる。
「これは?」
「物流の元運転の記録です。会社の正式伝票と違う」
耶がページを追う。
「これだけでは田本までは届きません」
「分かっています」
「それでも……」
彼女はを握った。
久しぶりに希望が見えた。
私は言った。
「社」
「今は社と呼ばなくていいです」
「では島さん」
し迷ってから続けた。
「次の総会、あなたで戦う必はありません」
「あなたはもう社員ではありません」
「だからできることがあります」
「何を?」
私は答えなかった。
まだ形になっていなかったからだ。
ただ、つ確かなことがある。
会社から完全に切りされた私は、田の支配する社内ルールからもれていた。
あとは正面から会へ入る資格だけだ。
堂をる、耶がろから言った。
「さん」
振り返る。
「もし全部終わったら」
「はい」
「もう度、あのの万円を払わせてください」
私は笑った。
「値がりしてますよ」
「いくらです?」
「まだ決めてません」
このの私はらなかった。
彼女がすでに、私を株主総会へ戻すための切符を用していたことを。
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