みかん小説
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"四万円を断った朝" 第14話

今度のお礼は万円ではなく

「専属の備士になってもらえませんか」

私はレンチを持ったまま止まった。

「原グループの?」

「違います」

「では、社個の?」

「それだけでもありません」

耶は自分でも言いにくそうに線をそらした。

あの会社で何百ものにち、田副社と平然と渡りった女性が、ののでは妙に落ち着かない。

私はし悪をした。

「条件をはっきりお願いします。曖昧な契約は嫌いなので」

「まだ連帯保証の件を引きずっているんですね」

「の教訓です」

耶は笑った。

それから、私の目を真っすぐ見た。

「仕事の契約ではありません」

私は黙った。

「会社を継いでから、ずっと未来の予定は会社のことしかありませんでした」

彼女は言った。

「来どの事業をするか。誰を役員にするか。何で売を伸ばすか。全部数字で決められることばかり」

がのを抜ける。

「でも、さんといるだけは予定通りにならない」

「褒めています?」

「半分は」

「残り半分は?」

「迷惑です」

「でしょうね」

耶はまた笑った。

「あなたは会社に残らないと言う。おをしても断る。助けたとったら勝に危ないところまで調べる」

「勝に、は余計です」

「でも」

彼女の表が静かになった。

「いなくなると言われた、番困ったのは会社じゃなくて私でした」

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胸の奥がしいた。

私はちがった。

は油で汚れている。

目のの彼女は、本でも数の企業グループを率いる社。

最初に会ったから、その差は変わっていない。

しかし議と、今は距をじなかった。

「私、かられませんよ」

「れなくていいです」

「層ビルにも戻りません」

「来なくていいです」

「級も苦です」

「うどんで分です」

「もよく油で汚れます」

「っています」

私は笑った。

「条件が悪いですね」

耶が歩づいた。

「だから聞いています」

「何を?」

「これからいをるに、隣にいてくれますか」

冗談ではなかった。

彼女の目を見れば分かった。

私はすぐ答えなかった。

昔の私は、を変えるものはきな仕事だとっていた。

い与。

役職。

企業。

成功。

だが実際に私のを変えたのは、ので台のがパンクしたことだった。

もしあの朝、がないからと通り過ぎていたら。

もし万円を受け取って終わりにしていたら。

もし度断った仕事へ戻らなかったら。

どこかつ違えば、私は今ここにいない。

「つ条件があります」

私は言った。

耶が真剣な顔になる。

「何です?」

「次にタイヤをわざとパンクさせたら、修理代は万円です」

彼女が目を丸くした。

「わざとじゃありません」

「では払わなくて済みます」

「本当に頑固ですね」

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「ってるでしょう」

数秒。

耶は声をてて笑った。

私も笑った。

その、トラックのから源が顔をした。

「おい拓」

「何です?」

「話がい。タイヤを直すのか嫁をもらうのか、どっちかく決めろ」

「源さん!」

耶の顔が気に赤くなった。

私はわず笑いした。

あれほど静な社が、こんなことで慌てる。

その姿を見た瞬、答えはもう決まっていた。

私は汚れたを作業着で丁寧に拭いた。

完全にはきれいにならない。

それでもを差しした。

「いなら」

耶を見る。

「よりの方が、故障したに楽でしょう」

彼女はそのを握った。

最初に会ったの。

私は万円を断った。

代わりに「途まで乗せてください」と頼んだ。

あの、私は会社まで乗せてもらっただけだとっていた。

けれど本当は、もっとい所まで連れてきてもらっていたのかもしれない。

借しか見えなかった活から。

裏切られることを恐れてを信じられなくなった所から。

の評価でしか自分の価値を測れなかったから。

そして耶もまた、自分で全て背負わなければならない所から、しだけこちらへ歩いてきた。

私たちはまだ、何も完成していなかった。

会社も。

も。

の関係も。

だが、それでいい。

壊れた輪は交換できる。

違えたなら曲がり直せる。

度止まっただって、原因を見つけて直せばまたりす。

もきっと同じなのだ。

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