みかん小説
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"四万円を断った朝" 第16話

途までではなく

になった。

あのからちょうど。

京には、と同じような細いがっていた。

私は午の修理を終え、の軒でを洗っていた。

源は事務所で昼寝をしている。

若い職たちは部品を取りにていた。

静かな昼だった。

台の黒いが入ってきた。

今度はパンクしていない。

耶がりる。

「今は壊れてませんね」

私は言った。

「壊してくるべきでした?」

「勘弁してください」

彼女は傘を差し、軒へ入った。

にはつの袋。

「何です?」

「昼」

には弁当が入っていた。

級料亭のものではない。

駅のさなの焼き魚弁当。

「最ここが好きなんです」

耶が言う。

「社の舌もくなりましたね」

「あなたの響です」

「責任だ」

事務所の古い机で並んでべた。

の音。

油の匂い。

壁には請求。

会社の会議とは正反対の所。

それでも彼女は落ち着いて見えた。

「今、覚えていますか」

耶が聞いた。

「何を?」

「」

私は箸を止めた。

あの。

面接。

壊れた原付。

パンクした黒い。

万円。

「忘れるわけないでしょう」

「私も」

「社が自分でタイヤ交換できなかった記」

「そこですか?」

「番です」

耶が笑う。

しして、彼女は真面目な顔になった。

「私、あのあなたが万円を受け取っていたら、会社へ連れていかなかったといます」

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「どうして」

「普通のお礼をして、普通に別れたから」

「では断って正解でしたね」

「そうですね」

「でも本当は、ものすごく欲しかったですよ」

「っています」

「何で?」

「お札を見るがかった」

私は苦笑した。

見られていたらしい。

「それでも断ったから、気になったんです」

耶は続けた。

「おが必なのに、おだけではかない。会社に番いなかったタイプでした」

「だから利用した」

「はい」

「そこは否定しないんですね」

「今さら嘘をついても仕方ないでしょう」

私たちはかけて、そこまで言える関係になった。

傷つけたこともある。

疑ったこともある。

相を試したこともある。

それでも最に残ったのは、きれいな言葉ではなかった。

緒にした事実だった。

昼を終える。

耶が窓のを見た。

「しませんか」

「どこへ?」

「の」

私はを閉め、彼女のへ乗った。

今度は助席。

と同じだ。

建設途だった郊は舗装され、無休憩所もしくなっていた。

「この辺でした」

耶がを止める。

はりになっている。

私はへた。

「あそこ」

脇。

、私の原付を止めた所。

私はしばらく眺めた。

「議ですね」

「何が?」

「あのの私は、ここから会社までくことしか考えていなかった」

「面接に遅れていましたから」

「ええ」

私は耶を見る。

「あなたに『途まで乗せてください』と言った」

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「覚えています」

「結局、ずいぶんくまで乗せてもらいました」

耶が笑った。

「まだ途かもしれませんよ」

「何の?」

「」

彼女はの鍵を私へ差しした。

「今は運転してください」

「私が?」

「、私があなたを振り回しましたから」

「だけ?」

「細かいですね」

私は鍵を受け取った。

運転席へ座る。

耶は助席へ。

とは逆だ。

エンジンをかける。

「どこへきます?」

私は聞いた。

耶はし考えた。

「途まで」

「また?」

「いいえ」

彼女は窓のを見ながら笑った。

「今は、途までじゃなくてもいいです」

私は何も言わずアクセルを踏んだ。

はのをゆっくりりした。

背には、私が千万円の借だけを見てきていた過がある。

には何があるか分からない。

また故障するかもしれない。

を違えるかもしれない。

誰かに裏切られることだって、きっとゼロにはならない。

けれど以の私は、失敗しないを探そうとしてけなくなった。

今は違う。

壊れたら直せばいい。

違えたら戻ればいい。

で無理なら、に助けを求めればいい。

それを教えてくれたのは、企業の社でも、千万円の報酬でもなかった。

たいの朝。

困っていた誰かの輪を分かけて交換した。

たったそれだけのことだった。

あの受け取らなかった万円を、私は今でも悔していない。

もし受け取っていたら、私たちはそこで「借りを返して」終わっていたからだ。

私はの代わりに、へ乗せてほしいと頼んだ。

そして彼女は私を乗せた。

最初は会社まで。

そのは、私自がもう度を選び直せる所まで。

助席の耶が言った。

「拓」

「何?」

「今度、がパンクしたら」

「はい」

「万円、受け取ってくれます?」

私は笑った。

「無理ですね」

「なぜ?」

「もう値段が違います」

「いくらですか」

私はしだけ考えた。

の向こうに、のいが見えていた。

「分です」

数秒、内が静かになった。

隣を見ると、耶は顔を窓側へ向けていた。

だけが赤い。

「すぎます」

「ではキャンセルします?」

「しません」

さな声だった。

私は笑ってを向いた。

黒いは濡れたを抜け、しずつるくなる空のへっていった。

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