みかん小説
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"車いすの恋人に請求された三万三千円の「迷惑料」" 第1話

公園で会った男

「いすのお客様には、別途万千円の迷惑料をいただいております」

誕の昼、いテーブルクロスの向こうで若い員がそう告げたとき、俺は瞬、言葉のを理解できなかった。隣にいる菜は膝のでを組み、料理が来るたびにさく謝っていた。その菜が、初めてまっすぐ顔をげた。声を荒らげることのない彼女が、あのだけは決して譲らなかった理由を、俺はになってることになる。

話は半にさかのぼる。俺、湯崎聡は、都内の印刷会社で営業をしている歳の会社員だ。恋の佐伯菜とは交際してになり、翌には緒に暮らす部を探そうと話していた。彼女はの菓子で働くパティシエで、仕事帰りには作の焼き菓子を持ってきて、俺のを真剣な顔で聞くようなだった。

その常が壊れたのは、のる曜だった。信号待ちをしていた菜のに、居眠り運転の型トラックが突っ込んだ。命は助かったが、脊髄にい損傷を負い、医師からは今もいすで活する能性がいと告げられた。事故の説を受けた病院の廊で、俺はただ壁のさばかりを見つめていた。

菜の病へ入ると、彼女はいつも先に俺を気遣った。「仕事、遅れてない?」「お母さんにはちゃんと連絡した?」

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。痛みやを抱えているのは菜のほうなのに、俺は返事をするだけで精いっぱいだった。励まそうとして「きっと元に戻る」と言いかけ、そんな保証はどこにもないと気づいてを閉じたこともある。

ある、彼女は退院に必な宅改修の資料を広げながら、「聡は無理しなくていいからね」と言った。俺が伝うと答えると、「伝ってくれるのはうれしい。でも、私のまで全部背負おうとしないで」と続けた。その言葉を、俺は拒絶だと受け取ってしまった。何をすれば正しいのか分からず、見いを終えるたびに回りして公園のベンチに座るようになった。

そこで声をかけてきたのが、奇妙な男だった。あせたジャンパーを着て、コンビニのコップをつ持った代半くらいの男である。「兄ちゃん、そんな顔で缶コーヒー見つめても答えはないぞ」。らないに事を話すつもりはなかったが、彼のあっけらかんとした声につられ、事故のことも、自分のけなさも話してしまった。

男はレオンと名乗った。俺が「彼女のために何もできない」とこぼすと、レオンはし考えてから言った。「何もできないのが悔しいのは分かる。でも、今いちばん変なのは誰だ?」。俺が黙ると、彼はコップをベンチに置き、「そのが何を望んでいるか、本に聞いたのか」

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と尋ねた。

答えられなかった。俺は菜の気持ちを聞くに、勝に彼女をかわいそうなにして、勝に自分を役たずだと決めつけていたのだ。レオンはちがり、「支えるって、相の代わりにを決めることじゃないだろ」とだけ言った。俺が名を聞き直すもなく、彼は誰かからの話に応じて歩きった。

そので病院へ戻ると、菜は窓辺でいすの操作を練習していた。俺は息をえ、「俺にしてほしいこと、ちゃんと教えてくれないか」と言った。菜は驚いた顔をし、それからしだけ笑った。「じゃあ最初にお願い。私ができることまで先回りして奪わないで」。その返事に頷いたとき、ようやく俺たちは事故のと同じ目線で話し始められた気がした。

ところが、その夜に菜がこっそり破り捨てようとしていた枚のを見て、俺は胸が詰まった。退院にきたい所をいたメモの、番にあった名が黒く塗りつぶされていたのだ。

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