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"車いすの恋人に請求された三万三千円の「迷惑料」" 第2話

消されたの名

「そこ、に緒にきたいって言ってただよな」。俺が尋ねると、菜は破りかけたメモを慌てて裏返した。事故の、彼女は誕にはし背伸びしたフレンチをべたいと話していた。の名は『ル・シエル』。の報誌で何度も紹介され、予約の取りにくいとしてられていた。

「今の私には、ちょっと難しいかなとって」。菜はるく答えようとしたが、指先はの端を押さえたままだった。俺はすぐに「けるよ」と言いそうになり、病院の廊でレオンに言われたことをいした。「何が難しい? 段差? 移? それとものの対応が配?」と、つずつ聞いてみた。

菜はしばらく迷った末、先、リハビリ病院の訓練で入った喫茶のことを話した。通をふさぐからと席を移るよう言われ、隣の客に聞こえる声で「いすだと変だね」と繰り返されたという。「悪気がないのは分かるんだけど、べているじゅう、私がいることを謝らなきゃいけない気がして」。彼女は窓のを見たまま、そこで言葉を切った。

俺は員に腹をてたが、そのりを菜にぶつけても仕方がない。まずル・シエルの公式サイトを調べ、入に段差がないこと、いす対応のトイレがあること、席の幅を確保できることを確認した。

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さらに予約窓へ話し、いす利用者がいると伝えて、どの席なら落ち着いて事ができるかを具体に尋ねた。

応対した女性は丁寧だった。「ご予約におらせいただければ、テーブルの配置を調いたします。コースのおも通常どおりでございます」。俺は聞いた内容をメモし、予約確定のメールを保した。菜にも見せると、彼女は「そこまで調べてくれたんだ」と目を丸くしたが、すぐに「私も自分で確認したい」と話番号を教えてほしがった。

俺は話を渡した。菜はにかけ直し、入から化粧までの線や、介助が必なの声かけについて、俺がいつかなかったことを質問した。話を終えると、「これならけそう」と、久しぶりに素直な笑顔を見せた。俺はその顔を見て、彼女のを成功させることより、彼女自が選べるようにすることが切なのだと理解した。

退院までの数週、俺たちは休にいをねた。駅のエレベーターが点検で回りしたもあれば、のわずかな傾斜にった以の力が必だったもある。俺が押そうとすると、菜は「ここは自分でける」と言い、疲れたときには「次の坂だけお願い」と頼んだ。失敗を笑えるがしずつ増えていった。

方で、彼女が族について話すときだけ、表がくなることがあった。

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父親はを経営しているらしいが、事故以来、菜はそのの話題を避けていた。「お父さんと何かあったの?」と聞くと、「配してくれるのは分かる。でも、配の仕方がし息苦しいの」と答えた。無理に続きを聞くことはしなかった。

退院の、病院の正面玄関をた菜は、自分でいすを止めて空を見げた。「最初にきたいのは、ケーキさんじゃなくて普通のスーパーかな」。俺が笑うと、彼女も笑った。特別なではなく、常を取り戻したいのだろう。その言葉がうれしくて、俺はそのの夕の材料を彼女と緒に選んだ。

ただ、ル・シエルの予約確認メールを見直したとき、ひとつ気になることがあった。話で説を受けた担当者の名と、届いた確認メールに記された担当者の名が違っていたのだ。さな違だったが、誕の当、その違いがいがけないを持つことになる。

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