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"車いすの恋人に請求された三万三千円の「迷惑料」" 第4話

分の待ち

誕の朝、菜は淡い青のブラウスを着て、鏡ので髪を結んでいた。事故のようにってを選ぶことはできなくなったが、彼女は膝に布を広げ、何度もをわせて楽しそうにしていた。「今はしおしゃれしてもいいよね」。俺が「もちろん」と答えると、「聡もネクタイ曲がってる」と笑いながら直してくれた。

俺はコートの内ポケットにさな箱を入れていた。菜に結婚を申し込むため、かからしずつ貯めたで買った指輪だ。事故のから考えていたことだったが、今は言葉の選び方に慎になっていた。『守ってあげる』という約束だけでは、彼女を対等な相として見ていないことになる。だから、今伝えるべきなのは、でこれからの活を選びたいという気持ちだった。

ル・シエルは造りの建物の階にあったが、裏から段差なく入れるエレベーターが設けられていた。案内表示はし分かりにくかったものの、菜は自分で入を見つけた。予約にいすであることを伝えていたので、俺たちは約束の分に到着した。ところが受付の若い員は、予約名を聞いた途端に奥へ引っ込んだ。

「湯崎様ですね。々お待ちください」。それだけ言って戻ってこない。入くの子には空きがあり、奥の客席にも空いたテーブルが見えた。

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分を過ぎた頃、菜が「何か違いかな」と言った。俺は計を確認し、受付に声をかけたが、別の員は「いすのお客様は準備にがかかりますから」と嫌そうに答えた。

「予約の際に必な準備は確認しました。あとどのくらいですか」。俺が尋ねると、員はで笑った。「普通のお客様とは違いますからね。そこはご理解ください」。菜の肩がわずかにがった。俺はもう度、具体な待ちを聞いたが、返事は曖昧だった。ようやく分ほどして、通の端にあるテーブルへ案内された。

席の周りには余裕があるのに、員はいすを何度もかすよう指示した。菜が自分で位置を調しようとすると、彼は断りもなく背のハンドルをつかんだ。「勝にかさないでください」。菜が静かに言うと、員はげさに両をげた。「はいはい、分かりました」。その態度に俺は胸がくなったが、菜が目で制したので、まずは子の位置をえた。

「本は分制でお願いします」。メニューを置いた員が言った。俺は予約メールをいた。そこにはコースの所が約と記されていた。「通常のお客様はですが、いすですと席を広く使われますので」。員は当然のことのように説した。俺が理由を尋ねても、「当の決まりです」

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の点張りだった。

菜は俺の袖を引き、「聡、もうようか」と声で言った。俺は頷きかけたが、彼女は続けた。「でも、料理だけは皿べたい。さい頃から好きだったなの」。その声には、単なる級への憧れではない切実さがあった。俺は彼女の希望を尊し、「途で帰りたくなったらすぐ帰ろう」と伝えた。

テーブルにはさな砂計が置かれた。員は「おの目です」と言ったが、俺たちには客としてのを測られているようにじられた。料理が運ばれてくるまでさらに分。菜は窓のを見つめ、何度も「ごめんね」と繰り返した。俺はそのたびに「謝る必なんてない」と言ったが、言葉だけでは彼女のを消せなかった。

最初の皿が置かれたとき、菜はようやく笑った。「このり、懐かしい」。だが、俺がその理由を聞こうとした瞬、員が再び計を指さした。「残り、あと分です」。料理をわうから、俺たちは帰る刻を突きつけられていた。

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