みかん小説
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"家ごと消した母の反撃" 第5話

のと、消滅のカウントダウン

シャワーを浴びて着替えた私は、濡れた髪も乾かさぬまま、寝の庫をけた。 取りしたのは、このと建物の権利証(登記識別報通)、夫の実印、そして実印の印鑑証。 実は、夫が倒れる半から、私たちはあるな決断をしていたのだ。

齢になった夫の体力を案じ、次男の聡からも『父さん、母さん、もう農業を畳んで、俺のむのバリアフリーマンションに引っ越さないか?』と提案されていた。 折しも、この域帯はバイパスの通に伴い、デベロッパーによる商業用の買収計画がんでおり、私たちの自宅のにも、産業者から「相の倍の現で即買い取りたい」というな打診が届いていたのだ。 夫と私は、すでに売却の仮契約に実印を押し、あとは「本契約の締結と引き渡しの確定」を残すのみの状態にしていたのである。

私は震えるで、産会社の担当者・藤氏の携帯話を鳴らした。 『はい、産の藤でございます』 「藤さん、松岡です。……先のと建物の売却の件、今すぐ本契約を結びたいのです。条件はつだけ。本に付を決済し、から即座に解体事に入っていただけますか?」

話の向こうで、藤氏が息を呑む音が聞こえた。

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『えっ……から、ですか!? しかし、お荷物の運びしやち退きの続きが……』 「荷物は、私と夫のの回りのもの以、すべて『残置物』としてそちらで処分してください。費用は売却代から相殺して構いません。更引き渡しが条件でしたよね? 建物のにある具もも、すべて砕して捨ててください」 『……かしこまりました! 買主様も即引き渡しをく希望されておりましたので、解体業者を至急配いたします! 付の千万円は、本午にお座へ着させます!』

通話を終えた私は、すぐに次男の聡へ連絡を入れた。 聡は私のただならぬ声の気配を察し、営業のハンドルを握ってで実へ駆けつけてくれた。 玄関をけ、ワインの染みついた絨毯と、私の青ざめた顔を見た聡は、鬼のような形相で拳を握りしめた。

「母さん……これ、兄貴とあの女がやったのか!?」 「聡、何も聞かないで。私と父さんの預通帳、保険証券、そして必最限のアルバムだけをに積んで。……私たちは今、このを捨てるわ」 聡は瞬だけ目を見張ったが、母の凄まじい決の差しを見て、く頷いた。 「分かった。俺のマンションのくに、齢者向けの即入居能なサービス付き賃貸マンションを押さえてある。父さんの病院の先にも連絡して、退院はそっちへ直できるように配するよ」

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でな荷物を積み終えたのは、午過ぎだった。 私は誰もいなくなったリビングを最に見回した。 綾が買ってきた悪趣なピンクの棚。孝志の脱ぎ捨てた汚れた。 そして、に広がる、私がから被せられた赤ワインの乾いた染み。

(掃除しろ、と言ったわね) 私は玄関の鍵を閉め、鍵をすべて郵便ポストのに投げ入れた。 そので携帯話のショップへ向かい、私名義で契約し、男の孝志に「支払いは親がするものだ」と脅し取られていた彼のスマートフォンの回線を、解約違約を払って即解約の続きをった。

そして翌朝。 男夫婦が帰省先で豪遊しているその、巨なとショベルカーが、私たちの自宅の敷を包囲した。 轟音とともに、のいが詰まった造が、根からバリバリと音をてて引き裂かれていく。 解体業者の巨な鉄槌が、綾のピンクの棚を、孝志のゲームを、そして悪に満ちた活空を、容赦なく々に砕していった。

。 そこには、のかけらも、具の残骸も、ワインの染みつすらしない。 ただ、たいが吹き抜ける、見渡す限りの「完全な更」だけが広がっていた――。

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