"誤爆LINEの夜" 第12話
「旦にハメられたの」
最初に教えてくれたのは、同期の田辺だった。
昼休み。
社員堂で向かいに座るなり、田辺は言った。
「秦、お、丈夫か?」
「何が?」
「いや……言いづらいんだけど」
俺は箸を止めた。
田辺は周囲を確認して声を落とした。
「奥さん、『旦に罠にはめられた』って言ってるらしいぞ」
予はしていた。
それでも実際に聞くと、胸がざらついた。
「どんな罠?」
「別のふりしてLINEして、わざと写真送らせて、倫してるように見せたって」
わず笑ってしまった。
「倫してるように?」
「俺も詳しくらん」
「に男いたんだけど」
田辺が黙った。
俺はそれ以話さなかった。
友だからといって、証拠を見せて回るつもりはない。
「まあ、庭の話だから」
そう言って終わらせた。
だが子の説はしずつ広がったらしい。
俺が嫉妬い。
束縛が激しかった。
普段からスマホを監していた。
婚したくて証拠を作ろうとした。
事実と違う話が混じっていた。
最初は無するつもりだった。
ところが数、事から俺自も呼ばれた。
理由は会社端末の利用経緯について、改めて確認したいとのことだった。
俺はありのまま説した。
妻から誤爆LINEが来たこと。
相を確認するため「あっくん」を名乗ったこと。
会社端末を私用したのは自分の判断であり、その点は反省していること。
広告
事担当者は淡々と記録した。
「秦さんから奥様や青さんの件を社内へ申告した事実はありませんね」
「ありません」
「写真を同僚へ送ったことは?」
「ありません」
「倫関係を社内へ広めるよう依頼したことは?」
「ありません」
すべて答えた。
面談の最。
担当者が言った。
「会社として確認しているのは、あくまで勤務の問題です。社員の私活について判断するではありません」
それで分だった。
俺は部をた。
翌から、子の「罠にはめられた」という話はしずつ勢いを失った。
俺が反論して回ったからではない。
子自の説に矛盾がすぎたのだ。
罠にはめられたのなら、なぜ青が俺のにいたのか。
なぜで撮った過の写真があるのか。
なぜ別の男まで夜に訪ねてきたのか。
そして何より。
最初の誤爆LINEは、俺が送らせたものではない。
《今旦いないから、いつもみたいにイチャイチャしよ♡》
あれだけは、子が自分の指で入力した文章だ。
数。
子からいメッセージが届いた。
《もう会社で何も言わない》
俺は返信しなかった。
その夜、弁護士から話があった。
婚条件について、子側も代理をてるという。
ようやくの言いいではなく、現実な話が始まる。
俺はしだけ肩の力が抜けた。
ところが、その婚協議の最初の席で。
子側から、俺の予もしなかった求がされた。
「を子さんへ譲ってほしい」
俺はわず聞き返した。
「なぜですか?」
その理由を聞き、俺はようやく理解した。
子はまだ、自分が失ったもののきさをまったく分かっていなかった。
広告
おすすめ作品
-
完結第26話
特上寿司と、消えた妻の半年
3月31日22時、激務を終えて帰宅した私の席にあったのは、冷え切った白米一杯だけだった。目の前で1万8900円の特上寿司を頬張る夫と義母は、「反省したらおかずをあげる」と大笑いする。家計の大半を私が支えているにもかかわらず、9ヶ月間も「罰」として食事を奪われ、夫は横で嘲笑っていた。だが二人は知らない。私が半年かけて集めた出前明細の履歴と、義母が隠し持っていた一枚の申告書の存在を。「じゃあ、外で食べてきます」――二度と振り返らずにドアを閉めた夜、経理の私が仕掛けた冷徹な清算が幕を開ける。嫁姑|夫婦4.0万字5 448 -
完結第34話
妻の葬儀の夜、義母が外した指輪と娘の写真
妻・美保の葬儀が終わった夜、修二の結婚指輪を外したのは、亡き妻の母・麗子だった。「もう美保に隠す必要はないでしょう」と唇を寄せたその瞬間、娘・咲から1枚の写真が届く。そこには半年前の病院で抱き合う修二と麗子、そしてガラス越しに2人を見つめる病衣姿の美保が写っていた。 闘病中の妻を支える献身的な夫を演じながら、修二はいつしか自分の弱さを理解してくれる義母へ逃げ込み、越えてはならない境界を越えていた。しかも麗子は「美保も知っていた」「私がいなくなったら修二さんを1人にしないでと頼まれた」と主張し、その証拠となる録音まであるという。 だが翌朝、咲が告げたのは「お母さんの声を最後まで聞いて」という一言。 亡き妻が本当に残した言葉を前に、2人が都合よく信じてきた“許し”が崩れ始める――。夫婦|修羅場5.1万字5 612 -
完結第16話
四十九日の追放、母の隠し遺言
「十年世話しただけの妹に、実家の取り分はないわ」 母の四十九日、喪服の兄夫婦は親族の前で澄子を指差し、台所の冷えた板の間へ追いやった。信金を辞め10年間、720万円の私財を投じて母を看取った澄子に、兄は「今週中に出て行け」と冷酷に通告する。 母のキャッシュカードは7年前から兄が独占し、消えた年金は1240万円。 家財すべてが二束三文で業者に売り払われようとする中、母が50年愛用した古い足踏みミシンの奥底から、厳重に隠された「ある物」が滑り落ちた。 「その言葉、そっくりそのままお返しします」 あの日からちょうど49日後、審判の幕が上がる――。兄弟姉妹|修羅場2.3万字5 434 -
完結第27話
妻を追い出した翌朝、7枚のブラックカードが止まった
結婚3年目の夜、美桜が帰宅すると、夫・達也は若い愛人と義両親を囲み、離婚届を突きつけてきた。「無能で地味な女」「1円も稼げない寄生虫」と嘲られ、慰謝料もなく豪邸から追い出される。 だが4人は知らなかった。美桜の正体は、世界経済を動かす巨大グループの総帥。倒産寸前だった達也の会社を救い、資金も仕事も与え、彼を“天才社長”に見せていたのは全て美桜だった。 さらに豪邸も別荘も、7枚のブラックカードも、達也自身の資産ではなく美桜の法人名義。 離婚届が受理された瞬間、美桜は静かに全カードを停止し、豪邸の退去手続きと会社への特別監査を開始する。 勝ち誇っていた一家がまだ知らない、本当の“無一文”への転落が始まろうとしていた――。修羅場|熟年離婚4.0万字5 285 -
完結第22話
夜勤の救急外来に運ばれた夫と義姉
深夜2時、救急外来で夜勤中の看護師・佐藤み咲のもとへ、交通事故で重傷を負った男女2人が搬送されてきた。シーツの下にいたのは、夫・拓也と義姉・麗子。しかも2人は、決して「姉弟愛」では説明できない姿で倒れていた。 み咲は5年間、看護師という仕事を見下す夫と、「子供も産めない」と侮辱する麗子、その2人を庇い続ける義母・里子に耐えてきた。 それでも彼女は感情を捨て、看護師として2人の命を救うことを選ぶ。 だが、惨状を目にした義母まで「全部あなたのせい」とみ咲を罵倒した瞬間、最後の迷いは消えた。 何年も残してきた暴言の記録と証拠を武器に、奪われ続けた人生を取り戻す反撃が静かに始まる――。夫婦|修羅場|不倫3.3万字5 2848 -
完結第11話
貧乏老人を嘲笑った行員の末路
「あんな貧乏臭い爺い、適当にあしらっとけばいいのに」ボストンバッグを抱えた老人に、新入行員は嘲笑の声を浴びせ、エリート課長代理は別の窓口へ強制的に追い返した。母親の入院費のため百万を引き出しに来ただけの、よれよれのジャケットを着た年寄り――。だが、彼こそが全日本経済の裏を牛耳るクオンホールディングスの会長・久音次郎その人だった。侮辱に耐えかねた新人の篠崎水希が一人で抗議する中、老人が静かに古びたバッグの金具を閉じた瞬間、端末の画面で一千万円、一億円と出金通知の数字が狂ったように跳ね上がり始めた。絶望の淵に立たされた傲慢な行員たちの運命を決定づける、驚愕の審判の行方は――。職場逆転|修羅場1.6万字5 1861 -
完結第19話
深夜2時、隣家の物置で赤ん坊を抱く4歳児
心臓の不整脈で消防士を辞め、故郷の民宿「緑海荘」へ戻った27歳の相馬蒼太。 ある深夜2時、隣家から突然途切れた赤ん坊の泣き声に異変を感じて駆けつけると、物置のような暗い部屋で、全身に青あざを負った4歳のひなが、痩せた妹メイを必死に抱いていた。 「泣いたらまた叩かれるんですか?」――その一言に、蒼太は2人を必ず守ると決意する。民宿へ連れ帰り、常連客の旅行ライター・りんや両親と共に食事と温かな寝床を与え、児童相談所へ連絡。 しかし保護の朝、ひなは「お兄ちゃんと離れたくない」と蒼太の服を握りしめる。初めて見る海の前で、ようやく声を上げて泣いた少女を前に、蒼太とりんは“助ける”だけでは終われない未来を選び始める――。親子関係|修羅場2.8万字5 251