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"孫に「ここに居たければ黙れ」と言われた私が、翌朝家を出た理由" 第1話

このにいたければ

「ここに居たければ黙ってろ!」

歳の孫、蓮斗の指が私の襟元をつかんだのは、の夜を過ぎたころだった。背が廊との境の壁に当たり、にしていたコップからがこぼれた。ソファに座っていたのが斉にこちらを向いたが、誰もすぐにはかなかった。私が驚いたのは、蓮斗の力のさより、その目にしのためらいもなかったことだった。

「ばあさん、聞こえなかったのか。俺の友達ので余計なこと言うなよ」

私は歳になる。、総病院で護師として働き、最のは病棟の護師を務めた。声で威圧するにも、痛みのために暴れるにも接してきたが、まさか自分の孫に壁へ押しつけられるが来るとはわなかった。蓮斗が幼かったころ、私のを見つけては「ばあちゃんはを助けるなんだよね」と誇らしそうに言っていたからだ。

には夫の弘の写真が置かれていた。いつもリビングの棚に飾っている、退職祝いのに撮った写真である。蓮斗たちはテレビをきくするために邪魔だったらしく、額を横倒しにしたまま菓子の袋をその横へ放りしていた。私は騒音より先にその写真を戻してほしいと頼み、夜も遅いから友達には帰ってもらいなさいと伝えただけだった。

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「おい、蓮斗。やめろって。それはさすがにまずいだろ」

友のがちがり、蓮斗の首に触れた。その拍子にようやく指が緩み、私は壁に片をついて体を支えた。襟元には爪の当たった痛みが残り、首をかすと肩の奥がく響いた。に落ちたコップは割れていなかったが、は夫の写真の角まで流れていた。

階段を駆けりてきたのは息子の孝太だった。私と蓮斗を交互に見て、何が起きたか尋ねようとをいたが、ろからりてきた妻の真理恵が先に声をげた。「お母さんがまた蓮斗を刺激したんでしょう。期の子に、友達ので恥をかかせるからですよ」。孝太は何も言わず、濡れたへ線を落とした。

私は襟をえてから、蓮斗の顔を見た。「ここにいたければ、と言ったわね。このは、おじいちゃんと私が建てたよ。今も名義は私のままです」。友たちの表が変わったが、蓮斗はで笑った。「母さんが言ってたぞ。どうせそのうち父さんのになるんだろ。寄りがいつまでも威張んなよ」。その言葉を聞いた瞬、私の胸に別のたさが広がった。

孝太は私の目を見なかった。真理恵は蓮斗の肩にを置き、「族なんですから、細かいことを言わないでください」と繰り返した。私は夫の写真を拾いげ、乾いた布で額を拭いた。

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孫が私を居候だとっている理由を、そので問い詰める気にはなれなかった。今夜、答えを聞いても、このはきっと私の言葉を受け取らない。

私はそので孝太に、昨のように話を先延ばしにしないでほしいと伝えたかった。しかし息子はを拭く布を取りにき、私のを通るときも顔をげなかった。さいころ、をした孝太を晩抱いていたことをいした。あの子を守ってきたと、今の息子の沈黙が、うまく結びつかなかった。

廊の計は、弘がきていたころから同じ音を刻んでいた。私はその音を聞きながら、夫がを建てたときに「ここなら老もだ」と言ったことをいした。して暮らせるはずの所で、族の音を怖がるようになるとはわなかった。

自に戻って戸を閉めると、廊の向こうでまたテレビの音がした。私は襟元の赤い跡を鏡で確かめ、携帯話で枚だけ写真を撮った。それから通帳との登記類をしまっている引きしに目を向けた。蓮斗のからた「そのうち父さんのになる」という言葉は、いったい誰が、何のために教えたのだろう。

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