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"花嫁のいない結婚式" 第9話

赤直の着信獄

約のフライトを経て、航空は現の午過ぎ、シンガポールのチャンギ国際空港へと滑らかに着陸した。 自ドアを抜けて到着ロビーへた瞬、本のとは完全に異なる、むせ返るような帯の気と湿度が私の肌を包み込んだ。 ガラス張りの代なターミナル、び交う英語とマレー語、国語のエネルギッシュなざわめき。 見らぬ異国の空気が、私の肺を満たしていく。

空港の到着ロビーのベンチに座り、私は現用のSIMカードを差し込んだスマートフォンを起した。 回線が通した瞬、ピピピピピッと甲い子音が連続して鳴り響いた。 留守番話サービスに、件のメッセージが録音されていた。 すべて、瞬の母親――黒田美津子からのものだった。

私はイヤホンをに差し込み、番目のメッセージを再した。 刻は、本の午。本来であれば、披宴の入が始まるはずだっただ。 『――由さん! あなた、体何をしてるの!? 親族も、瞬の会社の司の方々も全員揃ってるのよ! 冗談にしては悪質すぎるわ! く式に戻りなさい!』 苛ちと焦燥でヒステリックに震える声。

番目のメッセージは、その分。 『由さん、お願いだから話にて頂戴! 瞬がパニックを起こして控で過呼吸になってるのよ! 黒田の顔にを塗る気なの!? 勢の来賓ので、恥をかかせる気!?』 そこには、婦である私への配など欠片もなかった。

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あるのは、自分たちの「名」としての世体が傷つくことへの、剥きしの恐怖だけだった。

そして、式の始予定刻を完全に過ぎた、正午の番目のメッセージ。 美津子の声は、もはやりで獣のように嗄れていた。 『――川由! よくも私たちの顔にを塗ってくれたわね! うちの息子を勢ので晒し者にして、ただで済むとってるの!? うちの柄と釣りわない貧相なあなたを、親戚を説得して結婚させてあげようとした恩を忘れたの!? 損害賠償を請求してやるわ! キャンセル料の百万、円残らずあなたの実に払わせるから覚悟しなさい!!』

ガチャリと激しく叩き切られた音声を聞きながら、私は笑を漏らした。 (恩、ですって?) 私の実は、方で代続く老舗の酒造会社を営んでおり、柄で言えば元公務員の父親を持つ黒田などより遥かに歴史も格式もあった。だが瞬の母親は、方の私を「都会の洗練をらない田舎娘」と見し、事あるごとに圧な態度を取り続けていたのだ。 私はそのメッセージをすべて音声ファイルとしてクラウドへ保し、美津子の番号を永久着信拒否のブラックリストへと放り込んだ。

続けて、姉の彩子からのLINEをいた。 そこには、数枚の写真と詳細な報告が添えられていた。 『由、お疲れ様。

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あんたのアパートの荷物、通帳から類、類まで全部私のに運んだわよ。管理会社のもち会ってくれて、鍵のシリンダーも特殊なディンプルキーに交換完。これでよ』

写真には、しく付け替えられた真しいドアノブが写っていた。 さらに、次のメッセージが続いていた。 『それとね、さっき午過ぎに、瞬が血相を変えてあんたのアパートに鳴り込んできたわ。私が部のからモニター越しに見てたんだけど、自分の鍵が入らなくて狂ったようにドアを蹴っばしてた。インターホン越しに「警察呼びますよ」って言ったら、目を剥いて逃げていったわ。完全シャットアウト成功よ』

私はく、く息を吐きした。 防線は完璧だった。 彼が私を追うための掛かりは、本国内には何つ残されていないのだ。

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