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"「少しくらい困ればいい」母をSAに置き去りにした夫の本当の狙い" 第16話

母が選んだ部

母が移った齢者向け賃貸は、駅から徒歩分のだった。見守りセンサーはあるが、の制限はない。事も必なだけ頼める。母はつの候補を見学し、賃、病院までの距、友が来やすいかを自分で比較した。

元のの売却代から引越し費用と今分の居費を別座へ移し、残りは定期預と普通預に分けた。通帳と印鑑は別々の貸庫へ預け、私にも暗証番号を教えなかった。緊急の代理続きだけ、公証へ相談して任代理契約を作った。

「娘を信用していないみたいで嫌?」

母に聞かれ、私は正直にし寂しいと答えた。それでも、その仕組みが私自を守ることにも気づいた。将来、母の判断がった、私が何でも決めれば、また族から疑われる。第者の確認があれば、母のも私のも残る。

達郎は引越しのに伝いへ来たが、具の配置を勝に決めようとして母に止められた。「達郎さん、蔵庫はそこだと私が使いにくいです」母がはっきり言うと、彼は満そうにしながらもかした。助ける側にも境界が必だった。

直哉は母の所をらされていない。返済とは弁護士事務所経由で続けた。半目、母は初めてい返事をいた。《おを返すことと、信用が戻ることは別です。

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それでも、約束を守っていることは見ています》直哉はそのを私へ見せず、自分の財布に入れたという。

母が所を伏せたのは、孫を罰するためではない。突然玄関へ来られた、断れずへ入れてしまう自分をっていたからだ。会わないという決定を守るには、志のさだけでなく、相が踏み込めない仕組みが必だった。私はその考えを寂しいとはっても、変更させようとはしなかった。

紗季は以と同じ仕事を続けながら、に度だけ母と昼を取った。事件の話をしないも増えた。母は孫娘に謝を繰り返さず、最読んだ本や所のパンの話をした。助けた者と助けられた者という関係だけに固定しないことも、活を取り戻す部だった。

私は駅の反対側にさな賃貸マンションを借り、スーパーの勤務を週に減らした。夫の事や洗濯がなくなったで、惣菜売の教育を担当するようになった。収入が突然増えたわけではない。それでも自分の与がどこへ消えるかを、自分で決められる。

ある、母の部を訪ねると、雅の謝罪文が未封のまま棚に置かれていた。「読まないの」と聞くと、母は笑った。

「今はまだ、あのの気持ちを受け取るより、自分の暮らしを作る方が忙しいの」

母の部には、元のから持ってきたきな仏壇はなかった。

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位牌と父の写真をさな棚に置き、空いた壁には趣だった刺しゅうを飾った。を放せば父との記憶までれると配していたが、持っていく物を自分で選ぶことで、むしろ必な記憶がくなったという。

私もしい部へ、夫婦用のきな卓を持ち込まなかった。古具で掛けのさなテーブルを買い、母や紗季が来ただけ子をす。誰かが族として戻る能性のために空席を置き続けるのではなく、会いたいが来たに席を作る暮らしへ変えた。

勤務先では婚を詳しく話さなかったが、同僚のが「ご主がいなくて変ね」と言った。私は初めて、「変なこともありますが、楽になったこともあります」と答えた。庭の形を失敗として隠さずに済むだけで、肩の力がし抜けた。

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